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 ジェンダーの社会学(岩波講座・現代社会学11)


【 書  名 】岩波講座・現代社会学11:ジェンダーの社会学
【 著 者 】上野千鶴子ほか
【出 版 社】岩波書店
【発 行 年】1995年11月2日
【 価 格 】2100円
【  ISBN  】4-00-010701-1
【KeyWords】ジェンダー、社会学理論、労働、アイデンティティ

【 内 容 】(目次)

 差異の政治学                 上野千鶴子

〈ジェンダーと知の再生産〉
 ジェンダーと社会理論             江原由美子
 ジェンダーとテクスト生成            関  礼子
 労働のジェンダー化              大沢 真理
 「ジェンダーと政治」の未来図         天野 正子

〈ジェンダーとアイデンティティ・ポリティクス〉
 ジェンダー化された身体を超えて        蔦森 樹
 「きれいな体」の快楽             加藤まどか

〈ジェンダー研究の射程〉
 フェミニスト・エスノグラフの方法       春日キスヨ
 ジェンダーの困難               加藤 秀一
 ジェンダー・階級・民族の相互関係       伊藤 るり
 Overview:ジェンダー研究の現状と課題     瀬地山 角

【コメント】

 「講座」と名のつくシリーズは、その時点でのアカデミックな研究の到達点を
示すという任務を常に背負っていますが、このシリーズもまたその責を逃れるこ
とができないものです。そして、その任務を十分に果たしているということが言
えるでしょう。
 上野論文・江原論文は、「ジェンダー」という概念が社会学理論および社会科
学理論に及ぼしたインパクトと、その後の概念の展開を、ジェンダー概念に対す
る批判をも交えながら概観するもので、たいへんわかりやすい論文であると共に、
議論の最先端を紹介しているという点で、これから社会学(特にジェンダー論)
を学ぼうとしている人にとっては、見逃すことのできない文章でしょう。
 関論文・大沢論文・天野論文は、それぞれ、文学テクスト・労働・政治の分野
でのジェンダー化の過去と現状(そして未来?)を描き出すもので、関論文は、
「さんせう太夫」のケーススタディに多くの紙面を割いているという制限はあり
ますが、それぞれの分野に関心がある人にとっては面白く読めるものでしょう。
 第2部「ジェンダーとアイデンティティ・ポリティクス」におさめたれた2編
は、共に「身体」をとりあつかったものです。「身体」が社会学の対象になると
いうことは、少し前なら考えもつかなかった新しい分野なのですが、蔦森さんと
いう、いわゆるアカデミズムの外にいる人と、加藤まどかさんという最若手(30
歳)を起用することで応えています。なお、加藤まどか論文は95年の日本社会学
会で報告されています。その時は、若干地味な報告だったので、ほかの報告にお
されていましたが、内容としては充実したものです。女性雑誌・男性雑誌の中で
どのように女性の「きれいな身体」が描かれているかの分析です。
 春日論文・伊藤論文は、ジェンダーの記述の方法と他の分析視角(エスニシテ
ィ・階級)とのクロスをいかに考えるかというもので、実際のケーススタディや
幅広い考察にはかかすことのできない問題を取り扱っています。その間に挟まれ
ている加藤秀一論文は、ここに置かれているのが多少不自然ではありますが、一
種「テクストによる運動」とも言うべき論調と、彼独特の語り口で、「読ませて」
しまうのはさすがです。
 瀬地山論文は、ジェンダーをめぐる議論のサーベイで、彼が文章末尾で書いて
いる結論めいたことよりも、日本でジェンダーをめぐる議論の状況がどのような
ものだったのかということについて注意を払って読むべきでしょう。

(1995/11/21)



This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)