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 セクシュアリティの社会学


【 書  名 】岩波講座・現代社会学10:セクシュアリティの社会学
【 編 者 】井上俊・上野千鶴子・大澤真幸・見田宗介・吉見俊哉
【出 版 社】岩波書店
【発 行 年】1996年2月9日
【 価 格 】2100円
【  ISBN  】4-00-010700-3
【KeyWords】セクシャリティ、ロマンチック・ラブ、近代

【 内 容 】(目次)

 セクシュアリティの社会学・序説     上野千鶴子
 性的他者とは誰か            水田 宗子

〈セクシュアリティと近代社会史〉
 見られる性、見せる性ができるまで    井上 章一
 セクシュアリティの編成と近代国家    牟田 和恵
 オナニーの歴史社会学          赤川 学
 同性愛の比較社会学
  ――レズビアン/ゲイ・スタディーズの展開と男色概念――
                     古川 誠
 “処女”の近代 ――封印された肉体―― 川村 邦光
 視姦論 ――写真ヌードの近代――    笠原美智子
 「恋愛」の全近代・近代・脱近代     佐伯 順子

〈消費社会のセクシュアリティ〉
 消費社会のセクシュアリティ
  ――女のオーガズムの「発見」――   金塚 貞文
 「郊外化」と「近代の成熟」
  ――性の低年齢化と買春化の背景――  宮台 真司

〈overview〉
 セクシュアリティ研究の現状と課題    斎藤 光

【コメント】
 内容が非常に多岐に渡るので、序説(上野千鶴子)にしぼってコメントします。
 セクシュアリティとは、まずもって近代の概念であると序説では主張されます。
すなわち、わたしたちが現在目の前にしている(かのように思っている)「セク
シュアリティ」とは、歴史的に特殊なものであって、同種のものが過去に存在し
たかのように考えて、「セクシュアリティの歴史」を考えたり、「古代のセクシ
ュアリティ」「中世のセクシュアリティ」「近代のセクシュアリティ」を考える
のは、架空のものを語ることにしかならないのだと。
 しかし、ではそのセクシュアリティが現在においてきちんと定義され、範囲が
定められている対象かというと、実はそうではない。セクシュアリティは往々に
して、「性に関すること」として事典などに記載されるけれど、それではトート
ロジーにすぎない。しかし、本文においてきちんと定義がされているだろうか。
 たしかに、4-5頁において、「セックスは両脚のあいだに、セクシュアリティ
は両耳のあいだにある。」という、全米性情報・性教育評議会の設立者であるカ
ルデローンとカーケンダールの定義が引かれていているけれど、これは結局、セ
クシュアリティが文化的な概念であること以上のことを言っているものではない。
 その点で、本文の記述はいささか「不親切」であるとのそしりはまぬがれ得な
いでしょう。要は、「セクシュアリティとは、性に関連する社会的・文化的現象
のことである」ということなのでしょうが、これとても、p.4で批判されている
天野正子による有斐閣の『新社会学辞典』の記述と変りないことになります。
 あるいは、こうも言えるかもしれません。セクシュアリティ研究は、セクシュ
アリティが「何であるか」という概念確定の作業にも関わる自己言及的な作業な
のだ、と(p.5)。そして、まさに、さまざまなセクシャリティ研究は、「無定
義概念」としてのセクシュアリティという言葉を使いながら、その内容を与えて
いこうという研究として展開されているようです。
 だから、こうも言えるかも知れません。セクシュアリティ研究とは、「性」と
いう言葉に人が結び付けて考えていることがらがいかなるカテゴリー(つまり定
義づけ)とかかわって行われているのかを解明する研究であると(pp.15-16参照)。

 序説以降は、さまざまな分野のトピックが重ねられていますが、どれも(関心
がある人には)興味深い内容であり、十分読みごたえのある仕上がりかと思いま
す。

(1996/03/09)



This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)