
家族・ジェンダー・企業社会
【 書 名 】家族・ジェンダー・企業社会 〜ジェンダー・アプローチの模索〜
【 著 者 】木本喜美子
【出 版 社】ミネルヴァ書房
【発 行 年】1995年11月20日
【 価 格 】3500円
【 ISBN 】4-623-02586-1
【KeyWords】家族、労働
【 内 容 】(目次)
はしがき――本書の問題関心について
第I部 「家族の危機」と家族研究
第1章 「家族の危機」と家族社会学
一 「家族の危機」をめぐる問題状況
二 「家族の危機」が提起するもの
第2章 ジェンダー・アプローチによる家族研究
一 〈近代家族〉論の視角
二 ジェンダー・アプローチによる挑戦
第II部 現代家族論の諸相
第3章 マルクス主義フェミニズムの家族論
一 マルクス主義家族論の根本問題
二 マルクス主義フェミニズム家族論の焦点
第4章 「家族賃金」という観念と現代家族
一 「家族賃金」という観念の歴史的役割
二 「家族賃金」観念をめぐる論議の検討
三 国家と「家族賃金」観念
四 現代家族研究の課題
第5章 生活変動の中の現代家族
一 生活問題研究と家族
二 家族の現代的変動の意味するもの
三 〈近代家族〉と生活問題
四 「家族の危機」と生活問題
第6章 〈主婦の誕生〉と家事
一 フェミニズム理論における主婦
二 都市的生活様式の変動と女性
補論1 家事と女と男と「愛」
一 そして奥さまはいなくなった
二 家事と愛情の〈結婚〉
三 家事と愛情の〈離別〉
第III部 家族と〈企業社会〉
第7章 家族と〈企業社会〉という視角
一 戦後日本の家族変動と〈企業社会〉論
二 〈企業社会〉論へのアプローチ
第8章 家族と〈企業社会〉の現在
一 現代の「苦患労働」と相対的高賃金
二 家族の対応と夫の家族認識
三 日本型〈近代家族〉と〈企業社会〉
補論2 家族の物質的生活基盤と企業内統合
一 企業内人生と家族生活
二 家計構造と家族生活
三 三大生涯的生活課題の達成
あとがき
【コメント】
「労働研究」という分野で、家族をどう位置づけるかという問題は、特に女性
の労働をめぐっては古くからのテーマであっただろう。ただし、その場合の「家
族」概念は、これまでのところ「家族の神話」を払拭していない面が多々あるよ
うでもあった。
結局のところ、労働研究は、(1)家族をブラックボックスに入れて省みないか、
(2)そうでない場合にも、「家族愛」などの、近年神話として批判されつつある
諸概念を所与のものとしていたのである。したがって、日本の〈企業社会〉批判
の中でも、「企業社会が家族を崩壊させる」という、わかりやすい反面、しっか
りした実証的足場を欠いた決まり文句が繰り返されるに留まっていた。
本書は、1970年代以来欧米を中心に社会史とフェミニスト・スタディが交錯す
る場で積み重ねられてきた〈近代家族〉の歴史的特殊性を浮き彫りにする研究を
とりいれ、「家族の神話」からの脱却を図りつつ(第I部、第II部)、日本の
〈企業社会〉を分析するための視角を作りだしていこうとする(第III部)もの
である。
本書全体のポイントは、男性労働者中心に概念が組立てられてきていた労働研
究に対して、「ジェンダー」概念を導入することによって、これまで決してトー
タルなかたちで把握されてこなかった労働と家族の関係に関する視点を刷新する
ことにある。〈近代家族〉イメージが支配的通念として強固に残る現代日本にお
いて、現状を的確に把握するためには、まず分析視角を批判することから始めな
ければいけないという筆者の強いモチベーションが伝わってくる好著である。
そのことを確認した上で一つ注文をつけさせてもらうとすれば、現代日本の労
働者(女性も、男性も)のより詳細な事例分析をもっと豊富に取り入れてほしい
ということだろう。これについては、筆者の今後の研究発表に期待することにし
たい。
(1996/04/26)
This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)