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 「性を考える」 わたしたちの講義


【 書  名 】「性を考える」 わたしたちの講義
【 著 者 】上野輝将・倉地克直・沢山美果子・田中貴子・西山良平・妻鹿淳子
【出 版 社】世界思想社
【発 行 年】1997年5月20日
【 価 格 】本体2400円+税
【  ISBN  】4-7907-0647-8
【KeyWords】歴史 セクシュアリティ 両性具有 ライフサイクル

【 内 容 】

 開講にあたって                      ‥‥倉地克直

 第一講 平安京の女性・性・生命              ‥‥西山良平
 第二講 中世における「児」――児のジェンダー/セックスをめぐって
                              ‥‥田中貴子
 第三講 「男女和合」の世界                ‥‥倉地克直
 第四講 村の若者と娘たち                 ‥‥妻鹿淳子
 第五講 「産」の心性                  ‥‥沢山美果子
 第六講 日本軍従軍慰安婦問題を考える           ‥‥上野輝将
 講義を終えて――学生アンケートから           ‥‥沢山美果子

 座談会 (参加者)伊奈正人/上野輝将/倉地克直/沢山美果子/田中貴子/
          西山良平/妻鹿淳子・編集部

【コメント】
 1994年度および1995年度の岡山大学教養部総合科目「性を考える」の講義を編
集し直したもの。実際に行なわれた講義の一部は他で発表され、本書には収録さ
れていない。(このあたりの経緯は、倉地・沢山の「あとがき」を参照。)した
がって「開講にあたって」のあたりは「フィクション」になっているが、全体と
してまとまりを書いているというようなことは決してない。「です・ます」調の
話し言葉で書かれた、読みやすくかつわかりやすい一冊である。
 各大学で行なわれている「女性学」または「ジェンダー論」「性差論」の講義
録も、出版が目につくようになってきている。『性というつくりごと』(勁草書
房)は同じ岡山大学の講義録であるし、『ジェンダーから世界を読む』(明石書
店)は一橋大学の一・二年生対象の総合科目の講義録、今年出版された『性差の
科学』(ドメス出版)は愛知大学のものである。
 やはり、「ジェンダー」といったテーマは総合科目という形式になじむのだろ
うか。たしかに、ジェンダー論の幅を全てカバーしようとすると、一人の担当者
ではかなり負担が大きいことは経験からわかる。(もっとも、総合科目形式にし
たところで、コーディネータの苦労が減るわけではないのだが。)
 しかし、現在手に入る講義録の各書で、それぞれ構成が異なっているのがおも
しろい。『性というつくりごと』や『性差の科学』が自然科学に大きなウェイト
をおいているのに対して、『ジェンダーから世界を読む』や本書は人文・社会科
学のみで編成されている。しかも、『ジェンダーから世界を読む』が同時代の空
間的な「ジェンダー」の差異の広がりに目を向けようとしているのに対して、本
書は時間的な軸を中心に据えているものである。日本社会を、中世から近代まで。
 内容については実際に触れていただくことにして、最後にひとこと。『性差の
科学』にもあるのだが、「学生の感想」と「座談会」も構成上のアイテムとなっ
てきているようだ。総合科目形式はまだまだ教養科目としてしか開講されていな
いところが多いようだが、「複数担当」や「受講者とのインタラクション」を導
入しやすい総合科目は、従来の大学の講義形式とは異なるものとして広く一年生
から四年生までのカリキュラムに渡って位置づけられてもよいのではないだろう
か。

(1997/07/30)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)