Myriel

OLたちの〈レジスタンス〉


【 書  名 】OLたちの〈レジスタンス〉
      ――サラリーマンとOLのパワーゲーム
【 著 者 】小笠原祐子
【出 版 社】中央公論社(中公新書1401)
【発 行 年】1998年1月25日
【 価 格 】660円+税
【  ISBN  】4-12-101401-4
【KeyWords】労働 組織 権力 性別文化

【 内 容 】(目次)

 はじめに

 序章  OLという存在
  「BG」から「OL」へ 会社員が男と女に性別化されるということ
  「女の子」としてのOL 「会社妻」としてのOL

 第一章 「女の敵は女」のウソ
  企業と女の友情 年功 学歴 勤続 年齢/魅力 結婚 転職 家族
  男にとって可分、女にとって不可分な仕事と家庭の関係

 第二章 ゴシップ
  女が男をうわさするとき OLが職場の男性を嫌う理由 「怖いのは
  その伝播力です」 性と視線 「おじさん改造講座」 「家庭からあ
  ぶれた男が群れている」
 
 第三章 バレンタインデー
  日米バレンタインデー比較 日本型バレンタインデーの起源 職場の
  チョコレートは人気のバロメーター 鬱憤晴らし 匿名性と多義性
  チョコレートの示差性と記号性

 第四章 OLの抵抗の行為
  受け身の仕事態勢 頼み事の拒否 優先順位決定権の掌握 ボイコッ
  ト 人事部への通告 総スカン 抵抗行為の限界

 第五章 男のストラテジー
  ムチよりアメ ホワイトデー 妻の役割 

 終章  ジェンダーの落とし穴(gender trap)
  構造的劣位の優位性 協調的抵抗と抵抗的協調 性のステレオタイプ

【コメント】
 「OL」ってなんなんだろう? 昇進もなく、昇給も大したことない、差別的
な扱いを受けている労働者なのだろうか。それとも、五時になれば速攻で退社
し、休みになればホイホイ海外旅行に出かけて、買ってきたブランド品を身にま
とい、お気楽にグルメだスキーだと騒ぎまくり、そのくせ男性との食事の時には
ちゃっかり支払いをまかせているズルい連中なんだろうか。
 たしかにOLは、会社の中で不利な扱いを受けている存在ではある。しかし同
時に彼女たちは、独自の〈抵抗〉の戦術を用いて、さまざまな権力を行使する主
体でもあるのだ、とこの本の中で筆者は述べている。
 それは、ゴシップを通じてとか、お茶の中にぞうきんをしぼった水を入れちゃ
うとか、イヤなやつの仕事は後回しとかシカトするとかいったことを通じてだっ
たりする。こう書くと〈抵抗〉なんていっても、些細で子どもっぽいたぐいのこ
とがらのように思われるかもしれない。しかし、企業社会の中でのインフォーマ
ル・グループの強さというのは、これは莫迦にできないものがあるのだ。不利な
ゴシップが行き渡れば昇進がだめになるかもしれないし、後回しされたんじゃ仕
事もはかどらない、シカトされたら必要な書類や伝票がオフィスのどこにあるか
もさだかでない――オフィスという空間を実質的に管理しているのは、ほかでも
ないOLたちなのだから。
 しかし、そうした「弱者の〈抵抗〉」について記述しながらも、筆者はもう一
方で冷静にその結末を見通す目を持っている。つまり、OLは構造的に劣位な地
位に置かれてはいるが、企業の主流からおりているということによって、逆に主
流文化の住民たち――総合職の男たちや上司や、ときには総合職の女性たち――
を冷静に観察して、分析し、批判し、嘲笑することもできる(清水ちなみらによ
る『おじさん改造講座』がその好例だと筆者は述べている)。だが、彼女たちが
そういった〈抵抗〉を繰り広げれば繰り広げるほど、その結果として再生産され
る男性と女性の役割関係は、非常に保守的なものになってしまう。これが、筆者
がいうところの、「ジェンダーの落とし穴(gender trap)」だ。
 個々の女性の意図や彼女たちが得る報酬(プレゼントや満足感、その他)を離
れて、〈抵抗〉の成功は彼女たちに対するステレオタイプをさらに強化し、伝統
的なジェンダー構造を再生産する。では、必要なのは一体なんなのだろう?

(1998/01/31)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)