Myriel

 ファンタジーの冒険


【 書  名 】ファンタジーの冒険
【 著 者 】小谷真理
【出 版 社】筑摩書房(ちくま新書)
【発 行 年】1998年9月20日
【 価 格 】660円+税
【  ISBN  】4-480-05774-9
【KeyWords】想像力 ユートピア 対抗文化

【 内 容 】

 序 章 ファンタジーへの誘い
 第一章 妖精戦争
 第二章 パルプとインクの物語
 第三章 ファンタジーのニューウェーブ
 第四章 魔女と女神とファンタジー
 第五章 ハイテク革命とファンタジー
 第六章 J・ファンタジーの現在形

 あとがき
 参考文献

【コメント】

 ファンタジーというジャンルのイメージと、その歴史をわかりやすく提示して
くれる概説書。小谷の文章というと難解という印象を持たれる読者も多いだろう
が、内容もあってかこの本ではそれほどでもない。ただ、随所にある筆者の「こ
だわり」のようなものと波長が合わない人は、抵抗感を覚えるかも知れない。
(大したものではないだろうが。)

 さて、ここでは第四章に焦点を合わせてみたい。小谷はここで、現代ファンタ
ジーの流れの中に、主に女性の書き手による「魔女を女神に置き換える」プロセ
スと「魔女/女神の対比を超える」方向性を読みとろうとする。
 前者は、これまで女性性が「魔性」としてとらえられてきた(現代のガール
ズ・ジャパニメーションでも、悪役は女性性を発露させた「大人の女」であるこ
とが多い)、その価値を転倒させていこうとするプロセスである。おそらくこれ
は、初期ラディカル・フェミニズムやカルチュラル・フェミニズムの女性性の称
揚や、神秘主義のリバイバルの中での原‐ヨーロッパ的なもの――ケルト文化の
女神信仰の復興などの動きとシンクロしているところがあるに違いない。
 後者は、単なる神秘主義の復興や懐古主義に留まらない、新しい主体性やアイ
デンティティのありようを模索する方向でもあるだろう。小谷は第四章ではサイ
バーパンクを引き合いに出しているが、第五章のクィア・ファンタジー(もちろ
んクィアの場合には担い手は女性だけではない)、第六章の大原まり子の『吸血
鬼エフェメラ』などに流れを接続することも、もちろんできるはずである。

 ただ、『女性状無意識』と同様に、紙幅の関係もあってか「食い足りない」印
象が読後について回るのは否めない。ぜひ、ジェンダーをテーマとして一冊の長
さでまとめてほしいところである。

(1998/09/25)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)