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 女性化する福祉社会


【 書  名 】女性化する福祉社会
【 著 者 】杉本貴代栄
【出 版 社】勁草書房
【発 行 年】1997年9月20日
【 価 格 】本体3000円+税
【  ISBN  】4-326-65202-0
【KeyWords】福祉、フェミニスト実践、貧困、高齢化社会

【 内 容 】(目次)

 はしがき

 I 現在を展望する

 第一章 社会福祉研究の軌跡 ――その現状と課題
 第二章 人権と社会福祉 ――ジェンダーの視点から見る「女性の人権」
 第三章 社会変動と女子労働
 第四章 高齢社会と女性 ――日米の比較から老いを考える

 II 方法を探る

 第五章 貧困研究とジェンダー
 第六章 アメリカの女性世帯と「貧困の女性化」
 第七章 フェミニスト・リサーチの冒険
     ――いかにすれば女性の抱える社会的問題を明らかにできるのか?
 第八章 社会福祉のフェミニスト実践 ――良きソーシャルワークを越えて

 III 福祉国家を考える

 第九章 福祉国家論の諸潮流
 第十章 アメリカの社会福祉改革とシングルマザー
 第十一章 高齢社会における「日本型福祉国家」の変遷
      ――「女性化する福祉社会」を問う

 あとがきにかえて ――結婚したいけど結婚したくない当世女子大生

【コメント】

 社会福祉の領域でフェミニズム・ジェンダーの視点で書かれた著書(単著)
は、日本では数えるほどしかない。杉本貴代栄はその数少ない著書の数少ない著
者の一人である。前著『社会福祉とフェミニズム』(勁草書房、1993年)は、主
にアメリカの社会福祉をフェミニズムの立場から分析した論文集であったが、本
書は日本における女性世帯や貧困、高齢化社会の問題を取り入れ、「比較分析」
の色を濃くしたものになっている。
 杉本は、従来の社会福祉研究および社会福祉実践におけるジェンダーの問題の
欠落を、第一章、第二章を中心とする第I部で検討し、続いて第II部で貧困と女
性世帯の問題に焦点を当てて、日米の問題をとりあげながらフェミニスト・リ
サーチの方法論の問題を扱っていく。さらには、社会福祉における、研究と対に
なるもう一つの「車輪」としての実践の問題――フェミニスト社会福祉実践の問
題を第八章でとりあげる。
 第III部では、福祉国家の問題が取り上げられる。福祉国家批判・福祉国家研
究には長い伝統があるが、杉本は、諸外国でのフェミニスト・パースペクティブ
からの福祉国家批判の論点を紹介しながら、これまでの福祉国家研究がジェン
ダー・ブラインドであったことを強調する。ただし、「福祉国家は女性をコント
ロールする手段である」という指摘は認めながらも、むしろその両義性(福祉国
家の「女性化」が、多くの女性に雇用の道を開いてもいること)にも目を向ける
ことを忘れない。
 フェミニスト実践の具体例の紹介はほとんどない、また非常に各論考の内容に
重複が多いなど、物足りない部分は多いものの、社会福祉分野での単著として本
書には十分な価値があるだろう。

(1999/01/19)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)