Myriel

 男たちの知らない女

  ――フェミニストのためのサイエンス・フィクション


【 書  名 】男たちの知らない女
      ――フェミニストのためのサイエンス・フィクション
【 著 者 】マーリーン・S・バー
      小谷真理・鈴木淑美・栩木玲子訳
【出 版 社】勁草書房
【発 行 年】1999年2月25日
【 価 格 】本体4200円+税
【  ISBN  】4-326-65213-6
【KeyWords】サイエンス・フィクション ユートピア 想像力 少女
      フェミニスト・ファビュレーション

【 内 容 】(目次)

 まえがき(マージ・ピアシー)

 序章 父権的ホーカス・ポーカス

 T フェミニズムとSF
 第1章 逃避行――『テルマ&ルイーズ』論
 第2章 女性アーティストの肖像――アン・マキャフリィ『竜の歌』を読む
 第3章 疑似家族――フェミニスト・ユートピア論
 第4章 女が女を愛する――ジェシカ・アマンダ・サーモンスン「放蕩娘」
     を読む
 第5章 透明人間――ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『男たちの
     知らない女』を中心に
 第6章 女の中に男が一人――マージ・ピアシー『時を飛翔する女』を読む
 第7章 生殖テクノロジー――妊娠と国家権力

 II フェミニズムとポストモダニズム
 第8章 エイリアンと人権――フェミニスト・ファビュレーションとは何か
 第9章 アメリカを変える――メルヴィル再読
 第10章 ポスト・コロニアニズム――ラシュディの書く女性的物語
 第11章 女たちの秘境探検――ヒューマニズムを問う
 第12章 文化的コスプレ――村上春樹「TVピープル」の場合
 第13章 少女救出作戦――埋葬された思春期

 訳者解説(小谷真理)

 SF作品総解説

【コメント】

 ヴァージニア州立工科大学準教授の著者によるSF評論集。
 文芸批評の正典(canon)からはまったく疎外されたサイエンス・フィク
ションは、フェミニスト批評からも疎外されてきた存在だという。「まえが
き」でマージ・ピアシーが、彼女の作品『彼と彼女とゴーレムと』が“SF”
というジャンルに入れられたことで、フェミニスト的切り口の書評が一番少な
くなった、と書いているとおりなのだろう。
 マーリーン・バーは、「フェミニスト・ファビュレーション」という概念を
提起することで、フェミニスト・サイエンス・フィクションの復権を目指す。
「フェミニスト・ファビュレーション」とは、現実の家父長制社会から絶対的
に断絶している社会を描くことで、現実を逆照射する力を持つようなフィクシ
ョンすべてのことを指す。(したがってここには、フェミニストの書き手以外
の書き手による作品も含まれる。)
 バーがとりあげるのは、映画『テルマ&ルイーズ』、マキャフリィの『竜の
歌』、エリザベス・A・リンの『北の娘』といった、フェミニズム色の濃い作
品から、村上春樹やサルマン・ラシュディといった男性の作品、スピルバーグ
の映画などにまで至る。彼女は、それらの作品の中に、沈黙させられてきた/
沈黙させられているさまざまな「声」を読みとろうとする。それらを抑圧して
いるのは、ここではもちろん、さまざまな要素(階級や民族などと)結びつい
ている家父長制(訳書一部では「父権制」)だ。
 彼女の読みの特徴は、これまで陽の目を見てこなかったフェミニスト・サイ
エンス・フィクションに着目することだけではない。もう一つ、マージ・ピア
シーが「羊飼いタイプ」と呼ぶような、文化のフェミニスト的想像力・創造力
を、女性作家の作品だけでなく男性の作り手が関わった作品にも発見し、それ
に言葉を与え、読者に「可能性」を示すところにある。
 「女性は抑圧されてきた/されている」。これまで何度もそう繰り返されて
きた。では、未来は?
 その「可能性」の一端を示せることも、フェミニスト・サイエンス・フィク
ションが「フェミニスト・ファビュレーション」と呼びうる所以であるのでは
ないだろうか。わたしたちとわたしたちの社会の「未来」を描く文学としての。
 「これらの社会が直接私たちの問題を解決してくれるわけではないが、少な
くともより良いシナリオは見せてくれる。読者はそれに促されて、現実とは別
の、もう一つの社会を想像する。こうして想像されたもう一つの社会から、現
実的な解決策が生まれるのである。」(本書p.85)

(1999/03/28)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)