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もうひとつの絵画論 ――フェミニズムと芸術――


【 書  名 】もうひとつの絵画論 ――フェミニズムと芸術――
【 著 者 】若桑みどり・萩原弘子
【出 版 社】ウィメンズブックストア松香堂  制作・フェミネット企画
【発 行 年】1991年11月25日
【 価 格 】本体2000円+税
【  ISBN  】4-87974-916-8
【KeyWords】美術史 ブラックアート

【 内 容 】(目次)

 I 女性画家は何を描いてきたか …… 若桑みどり
  私にとってのフェミニズム/芸術の社会的要因/女には創造力はないのか
  /女性芸術家発掘の意味/描かれた女性イメージの見直し/イメージの社
  会的影響力/女性芸術家の歴史/女性画家を検証する

 II 抑圧の文化、解放の文化   …… 萩原弘子
  制度的社会的制約のなかの女性アーティスト/白人文化のなかのブラック
  /西洋美術にみるブラックのイメージ/マス・メディアのなかのブラック
  ・ステロタイプ/「一流」を問う/英国ブラック・アーティストの作品/
  ブラックの女性アーティスト/序列のピラミッドから、新しい文化へ

 III 「美のくさり――フェミニズムから見た美の検証パネル展」
                 …… 北原 恵

 IV 解体、解放へ向かって    …… トーク・トーク
  美の基準と相対化/芸術とはいったい何か/芸術というとき/アート概念
  の変革/障害者への視点/表現の主体となる女性

【コメント】
 1990年7月8日に京都市の社会教育総合センターで行われたシンポジウム
「フェミニズムと『芸術』」の記録に加筆したもの。90年代になって相次いで
出版されるフェミニスト美術史の研究書の呼び水となったイベントの記録とも
言えるだろうか。
 若桑のまとめによれば、フェミニスト美術史の試みは三つ。一つは、これま
での歴史の中に埋もれてきた女性の芸術家の活動・人生・作品を掘り起こし、
再評価すること。二つ目は、描かれてきた女性のイメージの再検討。そのイ
メージがいったいどのような社会的基盤を持っているのか。そして、視覚的文
化のそのほかの領域、つまり、狭い「芸術」の範囲を超えて、風刺画や商品の
ラベル、現代ではCMやポスターなどの女性イメージとそれらがどのようなつ
ながりを持っているのかを見極めること。三番目は、イメージの社会的影響力
に関する研究。二番目の課題が、社会的権力関係(階級の、人種の、ジェン
ダーの、etc.)がどのようにして絵画のイメージを生み出したかという問題と
パラレルであるとするならば、こちらは、できあがったイメージが逆にそれを
鑑賞する受け手の意識をどのように再生産していくのかにかかわる課題である
といえる。
 今も述べたとおり、絵画の中の女性イメージは決してジェンダーという単一
の権力関係の中にあるものではない。それは階級や人種や植民地主義の権力関
係と分かちがたく結びついている。第II部でそれを萩原がわかりやすく説明し
てくれる。彼女は、「ブラック」(アフリカ系だけでなくアジア系の肌の黒い
人々をも含む概念)のアーティストたち――女性も男性も――に言及しなが
ら、そのからみあった権力関係を解きほぐして分析していく。
 「なぜ女性の偉大な芸術家がいなかったのか」(リンダ・ノックリンの論文
の題名)という問いに対し、「こんなにたくさんの優れた女性芸術家がいた」
と答えることから、「偉大な」「芸術」とはいったい何なのかを問いかける価
値のヒエラルキーの再検討への転換が、フェミニスト美術史のセカンド・ス
テージを画期づける。それは「美術」という概念の再解釈を迫るものでもある
だろう。
 何が<アート>なのか――その問いかけは、わたしたちの日々の暮らしの中で
のさまざまな活動の価値のヒエラルキーの再評価にもつながるものであるかも
しれない。

(1999/04/29)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)