Myriel

 OLの創造


【 書  名 】OLの創造――意味世界としてのジェンダー
【 著 者 】金野美奈子
【出 版 社】勁草書房
【発 行 年】2000年2月22日
【 価 格 】本体2400円+税
【  ISBN  】4-326-65229-2
【KeyWords】労働 事務職 ジェンダー

【 内 容 】(目次)

 序章  意味世界としてのジェンダー――労働研究への位置づけ
 第一章 女性事務職の「発見」
 第二章 「女事務員」の世界
 第三章 戦時下の事務職
 第四章 差異の構築
 終章  労働におけるジェンダーの歴史化に向けて

【コメント】

 お茶くみ・コピー取りといった独特の職務から、短期勤続、低いコ
ミットメントといった「働きぶり」のステレオタイプにいたるまで、
「OL」(女性事務職)のものとされるさまざまな要素には枚挙に暇
がない。しかしそれは、はじめから「OL」のものだったのだろうか?
 本書では、明治後期からの「女性事務職」の歴史をたどることで、
これらが歴史的に構築されてきたものであることを明らかにしようと
する。「お茶くみ」は戦前のオフィスでは、一般に給仕などの下級事
務職(そこには女性も含まれているが)の仕事であり、「お茶くみ=
女の仕事」ではなかったという。まさに女性労働の戦後体制の中で、
お茶くみは女性に割り当てられるようになってきたのだ。
 短期勤続にしても同じである。戦前期、男性に兵役があった頃には、
実業学校卒の男性事務員のキャリアはそれによって3年ほど中断され
た。妊娠によるキャリアの中断はそれに比べたらそれほど大したこと
ではない。――
 このようにさまざまな歴史的検討を加えながら、金野は、現在ある
ような「OL」あるいは女性の事務労働についてのわたしたちの観念
は、きわめて戦後的であること、おそらくは高度成長の初期から中期
にかけてようやく成立したものであることを論証していく。
 職場内部に「差異」として認められるものにはさまざまなものがあ
る。しかし重要なのは、それらの「差異」にどのような「意味」が与
えられるかである。職場における処遇の違いには必ずしも性差に由来
しないものもたくさんある。だがそれらにあるとき「男女差」という
意味が与えられ、性差に沿ってそれらが解釈されるようになるとき、
職場の中に一つの線が引かれる。そうすると今度はその区分線、すな
わち職場のジェンダーに沿って、さまざまな解釈がなされるようにな
っていくのである。(もちろん、その解釈とは研究者によってされる
ものというわけではなく、おのおのの職場で具体的に存在する個々人
がなによりもまずなすものである。)
 金野の今回の作業はいささか大まかで業種にもかなりの偏りがある
ようだ。また、あくまでも事務職に限られた分析ではある。しかし、
その視点・試み自体はきわめて示唆的であり、こうした分析がより精
緻にさまざまな業種・職種で積み重ねられていくことで、もっと有効
な結論が導けることにおそらくなるだろう。これまでのマクロな統計
データによる女性労働研究から一歩を踏み出す視角が示されたことを、
とりあえずは歓迎することにしたい。

(00/05/06)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)