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 ジェンダーは科学を変える!?


【 書  名 】ジェンダーは科学を変える!?
【 著 者 】ロンダ・シービンガー  訳:小川眞里子・東川佐枝美・外山浩明
【出 版 社】工作舎
【発 行 年】2002年1月20日
【 価 格 】2600円+税
【  ISBN  】4-87502-362-5
【KeyWords】科学 教育 知識批判

【 内 容 】(目次)

 謝辞
 はじめに

 第一部 科学における女性
  第一章 ヒュパティアの伝統
   女性科学者の系譜
  第二章 平等の計算
   異文化間の比較/女性の土着の知識/論文生産数/被引用度/実地調査
  第三章 パイプライン
   教育の機会はジェンダー・フリーか

 第二部 科学文化におけるジェンダー
  第四章 文化の衝突
   科学のジェンダー化/イメージの意味/専門職の文化における女性/競
   争、科学、そしてスポーツ
  第五章 科学と私生活
   家事と育児は誰がするのか

 第三部 科学内容のジェンダー
  第六章 医学
   歴史/生物医学モデルの訂正/共同体モデル/何が成功をもたらしたの
   か
  第七章 霊長類学、考古学と人類の起源
   霊長類学/人類の進化/考古学
  第八章 生物学
   言語論的解読/構築原理としてのジェンダー/学問分野
  第九章 物理学と数学
   物理学はハードか?/物理学と軍部/数学と女性の脳

 むすび
  学問世界/ジェンダー分析の道具/政府の動き/社会と文化

 付表1 自然科学の各分野における女性博士号取得者分布
 付表2 民族別女性博士号取得者分布

 原注/参考文献/人名索引/訳者あとがき/著訳者紹介

【コメント】
 ロンダ・シービンガーはアメリカ、ペンシルヴァニア州立大学の歴史学教授
で、科学史の研究を行なっている。日本では『科学史から消された女性たち』
『女性を弄ぶ博物学』が、やはり小川眞里子らによって訳出されている(いず
れも工作舎から)。
 上にやや詳しく内容を示しておいたので、本書の内容の概略はつかめると思
う。「科学(ここでは主に自然科学)とジェンダー」という、一見何の関わり
があるのかと思われてしまいがちな問題について、大きく3つのアプローチで
論じられている。第一部は近代科学の担い手におけるジェンダーバイアスの問
題について、第二部は「科学者」という専門職のありかたとジェンダーとのか
かわりについて書かれている。ここでは第三部「科学内容のジェンダー」につ
いて少し補足しておくことにしたい。
 「ジェンダーはさまざまなレベルで科学を構築する」とシービンガーは述べ
ている。たとえばそれは、学術用語や分類法のレベルで。19世紀の男性と女性
の(ヘテロセクシュアルな)ステレオタイプは、「活発な〈男性〉としての精
子/受動的な〈女性〉としての卵子」というイメージを作り出した。19世紀終
わりには卵子に微細な絨毛があることがわかっていて、そこに着目すれば卵子
それ自体が活発に活動することがわかったかもしれないのだが。
 あるいは、学問体系そのもののあり方にも関わるかも知れない。医学は主に
男性の身体を中心にしており、女性の身体は生殖関連(産科・婦人科の領域)
で主に参照されるに過ぎない。もちろん、たとえば女性を薬品試験の被験者に
するのにはいろいろな制限がかかっている。しかし、実際ある種の薬品は男性
の身体と女性の身体とで、効き目や排出のされ方が異なるのだ(これに加えて
人種でも異なることがよくある)。だとしたら、男性の身体でテストした薬品
をそのまま安易に女性の身体に投与するのは、彼女にとって生命の危険を導く
ものであるかも知れない。
 あげていけばきりがない。(数学の理論でさえ、ジェンダー・バイアスの影
響を受けることがある!)もっともっと広範囲な、かつ慎重な検討がなされる
べきだろう。科学の成果の全てが拒否されるものでもない。しかし、一見なん
でもない、中立的に見えるような事柄にも、さまざまな形でジェンダーの影が
落ちているかも知れない。科学のありようはさまざまであり、時代と共に変化
するものでもあるし、フェミニズムの理論と実践そのものもまた変化しうる。
常に、さまざまな場所で、わたしたちは科学の実践を検証し直す必要があるの
だろう。そしてそれは、自然科学だけが対象であるわけでもないはずである。

(02/09/08)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)