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 女性労働とマネジメント


【 書 名 】女性労働とマネジメント
【 著 者 】木本喜美子
【出 版 社】勁草書房
【シリーズ 名】双書 ジェンダー分析
【発 行 年】2003年6月20日
【 価 格 】本体3500円+税
【 ISBN 】4-326-64857-0
【KeyWords】労働 組織 パート キャリア

【 内 容 】(目次)

 はじめに

 I

 第1章 労働研究とジェンダー視角
     ――女性労働研究のクリティカルな総括――
 第2章 方法と対象

 II

 第3章 ジェンダー間の職務分離メカニズム
     ――職務の過度のジェンダー化――
 第4章 労働組織内の応答−交渉関係
     ――〈私たち〉という分離線――
 第5章 「女性店長づくり」という挑戦
     ――マネジメント・スタイルとジェンダー――

 終章  労働組織のリアリティに迫る

【コメント】

 本書は『家族・ジェンダー・企業社会』(ミネルヴァ書房、1995年)以降の筆
者の論文に加筆・修正を加えたものに、新たに書き下ろした部分を加えてまとめ
られている。労働のジェンダー分析における研究の最前線である。
 本書執筆のモチーフの基本は、労働研究における男性中心主義に対する批判で
ある。そこには女性労働者の実態を単純に無視してかかるあり方から、女性労働
にかかわる現象の記述にとどまるような研究、あるいは「女性労働の特殊性」の
みを強調するようなさまざまな議論(身体的問題や家事・育児役割との関わりで
女性労働を規定するような観点)までが含まれる。
 そこに欠けているのは、労働の具体的な現場(職場組織)における男性労働者
と女性労働者双方のあり方をトータルなものとしてとらえようという視点である
(さらに言うならば、久場嬉子が指摘するように、アンペイド/ペイドワークを
トータルに考えていく視点も重要になるだろう)。男性労働者のみを「労働者」
として「一般」化し、女性労働者をそこからの偏差によって「特殊」化してとら
えるような、既存の女性労働研究のあり方に対するある種の「いらだち」のよう
なものが、木本の筆致からは感じ取れる(本書第I部第1章)。
 近年、職業構造の性別・年齢別の分離についてのマクロデータの分析から、国
際比較を含めてさまざまな発見がなされてきている。(大沢真知子、大沢真理、
深澤和子などの研究による。)それらの研究の中では、同時に、マクロな構造を
生み出す日本企業の性別慣行が重要であることも指摘されている。
 木本が切り込もうとするのは、この企業組織におけるさまざまな性別慣行やミ
クロな作動原理と、それらが生み出す諸結果についてである。具体的には職場組
織における性別による職務分離の構造化や、女性労働者内での対立を生み出させ
るメカニズム、そしてそれらに対するいくつかの挑戦的事例の検討である(本書
第II部)。
 ここにまとめられているのは、百貨店とスーパーマーケット会社が各々一社と
いうごくごくわずかな事例でしかない。他の百貨店やスーパーはどうなのかとか、
女性が重要な位置を占めている例としては、ほかにも事務職、医療職、保育職や
低年齢対象の教育職、などがある。それら一つ一つを検討していくことは、とう
てい一人の研究者だけの努力ではすまないものである。この研究を起点として、
多様な職種についてもっと多様な視点を加えた調査報告がなされていくことが、
今後期待される。

(03/07/18)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)