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 ジェンダーの社会学――女たち/男たちの世界


【 書  名 】ジェンダーの社会学――女たち/男たちの世界
【 著 者 】江原由美子ほか
【出 版 社】新曜社
【発 行 年】1989年5月20日
【 価 格 】本体2330円+税
【  ISBN  】4788503395
【KeyWords】ジェンダー、入門書、エスノメソドロジー、家族、労働、社会運動

【 内 容 】(目次)

第1章 日常生活とジェンダー
 1 私の目覚める場所はどこ? /2 鏡のなかの私/3 おいしい朝食/
 4 電車の中で/5 大学や職場で/6 ふたりでお茶を/7 はるかなる生涯/
 8 こたつでテレビ/9 夢の世界で/10 日常生活から社会へ

第2章 政治社会とジェンダー
 1 学校教育のなかの性別管理/2 制度としての性差別/3 性差別における
 近代の両義性/4 性差別の日本的特性/5 民主主義と婦人参政権/6 「新
 しい社会運動」としてのフェミニズム運動

第3章 家族とジェンダー
 1 家族の定義をめぐって/2 家事の世界・仕事の世界/3 家事の不平等性/
 4 母性本能の神話/5 近代家族の誕生/6 恋愛の社会学/7 変化する現
 代家族/8 生殖技術と家族の変化/9 老人問題とジェンダー

第4章 労働とジェンダー
 1 女性は「働か」なかったか?/2 中産階級の女性たち/3 労働者階級の
 女たち/4 女性労働の現在/5 女性労働の位置/6 仕事と家事の二重役割

第5章 世界社会とジェンダー
 1 世界はどんな社会/2 前線の男たち・銃後の女たち/3 子どもを産むの
 はお国のため?/4 女性の経済活動への参加/5 イスラムと女たち/6 世
 界秩序と社会運動

第6章 感性リアリティとジェンダー
 1 女であること/男であること/2 性差の演出/3 広告のジェンダー/
 4 女性性/男性性/5 ジェンダーとボディ/6 セクシュアリティのシナリ
 オ/7 ジェンダーの情感と社会関係

【コメント】
 今となってはもう「古典」の部類にはいるかも知れない。「ジェンダー」をキー
ワードにした入門書はいろいろあるけれど、見事にその後のジェンダー・イシュー
の展開を先取りした内容になっていることが上の目次からもわかるとおり、もっと
も初期に出版された本書ではあるが、類書の追随を許していない。
 出版当時もたいへん話題になった本である。筆者の周囲の人間はみんな買ってい
た。……というと大げさだが、少なくとも全員一度は手にとって中を見ていたはず。
 おそらく、欠けている点があるとするなら、セクシュアル・ハラスメントについ
て言及がないことぐらいだろう。あるいは、その後の労働社会学におけるジェンダ
ー研究の進展を考えると、いささか労働の章の記述が物足りなく思えてくることぐ
らいだろうか。しかし、ここまでくるともうあら探しの部類に入る。
 特徴としては、まずはポップで平易な表現の多様(第1章の江原の文章が典型)。
これが柴門ふみのオリジナル・イラストと相まって、本書の独特なイメージを創り
上げている。それと2〜4ページに各項目をまとめた断章形式。さまざまな資料や
コラムとともに、ポップであるがゆえに散漫になりがちな記述を、密度の高い充実
したものへ引き上げるのに一役買っている。
 テキストとして使う側から言うと、一見使いにくいのだが、意外に便利というの
が感想。第1章は多少話の持って行きようが難しいが、それ以降は、補足資料など
を使いながら、1回の授業(90分)で2〜3つの項目進むことができる。専門学校
などで45〜50分の授業であれば1回に1〜2つ。
 いろいろな意味で、後発のテキストの目標になった一冊であろう。筆者も社会学
の教科書を執筆する際に、編者の一人がこの本をモデルとして提示したのを覚えて
いる。

(2004/03/03)


This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)