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 子どもが減って何が悪いか!


【 書  名 】子どもが減って何が悪いか!
【 著 者 】赤川学
【出 版 社】筑摩書房(ちくま新書)
【発 行 年】2004年12月10日
【 価 格 】700円+税
【  ISBN  】4-480-06211-4
【KeyWords】少子化、政策、ライフスタイル

【 内 容 】

 序章  世に溢れるトンデモ少子化言説
 第1章 男女共同参画は少子化を防げるか
 第2章 子どもを増減させる社会的要因は何か
 第3章 夫の家事分担は子どもを増やせるか
 第4章 男女共同参画は少子化対策ではない
 第5章 少子化の何が問題なのか
 第6章 少子化はなぜ止まらないのか
 第7章 子育て支援はいかにして正当化されるか
 第8章 子どもが減って何が悪いか!
 あとがき

【コメント】

 東京などの大都市を離れて地方で生活しているとわかることだが、けっこう新聞
の地方欄などを見ていても、毎年の出生率は高いし、平均初婚年齢も低い、という
ようなデータが載る。たしかに人口そのものが減っているので、子どもの絶対数は
減っているのかも知れないが、結婚している人にはたいてい子どもがいて、場合に
よると4人とか5人とかいう家族もお目にかかれないわけではない。
 しかし、時と共に出生率はじりじりと下がり、逆に平均初婚年数は上がっていく。
2003年の福島県の合計特殊出生率は1.54。全国では2位。1位はダントツで沖縄県
(1.72)。1999年が1.63、2002年が1.57だったから、下がっていることには変わり
ない。少子化は着実に進行している。
 そして福島はまた、社会意識のレベルでの「男尊女卑」が残っているという点で
も衆目が一致するところだろう。「昔に比べれば……」と以前を知る人は言うだろ
うが、今でもそうだ。いや、改善されていることは間違いないが。
 だから、「男女共同参画(ジェンダー平等)が進めば、少子化に歯止めがかかる」
というような、中央での言説を耳にすると「あれ?」と思うこともある。むしろ、
逆ではないだろうかと。少なくとも、単純な数値の上ではそうなのでは、と思って
しまう。(新聞などを見ている範囲では、都道府県レベルの数字について、赤川が
ここでやっているような多変量解析などの結果が登場することはほぼない。)
 赤川のこの本は、こうした地方在住者の違和感に確証を与えてくれるところがあ
る。第1章の国内比較では、農村地域の比率が高い都道府県で出生率が高いという
ことになる。こうした地域では全般的に三世代同居も多い。それは女性が子どもを
産んでも外で働ける(祖父母が子どもの面倒をみてくれる)ことも意味する。平均
所得も低いことが多い。それはいきおい、既婚女性が働くことを促す要因にもなる。
 だからといって、そういう地域で「男女共同参画」が進んでいるわけではない。
女性が働いている、とはいえ、それは男性より不利な状況の下での話である。先ほ
ど福島を例にとって述べたとおり、地域全体での習俗や社会意識での「旧弊さ」が
しばしば指摘されることも多い。
 赤川はさまざまなデータ分析を行ないながら、「男女共同参画の進度」と「出生
率」との「相関関係」が、実は疑似相関なのではないか、という疑問を提出してい
る。男性の家事・育児共有度の高さや女性(母親)の所得の高さなどが、子どもの
数を増やす要因にならない、場合によっては減らす側面がある、というところまで
を指摘しているのである。(註:赤川のデータ操作には一部異論も出ているようだ
が、彼の結論の大勢に影響を及ぼすようなものではないのではないかと感じる。た
だし、評者の統計的手法に関する知識と経験は不備を指摘する人々にまったく及ば
ないので、厳密な妥当性については判断を保留したい。)
 しかしそうだとするなら、現在「男女共同参画」の枠の中で行なわれている「少
子化対策」とはいったいなんなのだろう。この点について彼が主張するのは、結局
のところこういうことだ。「少子化対策を理由にした男女共同参画の政策はやめる
べきである。」「それでも男女共同参画社会の形成という理念が大事なら、それは
それとして追求すればいい。」(第4章、要旨)
 正論である。続く各章では、少子化への対応は、出生率を増やそうという方向で
はなく、少子化社会に対応する社会制度を作る方向で進めるべきだという提案がな
され、子どもの生存権という観点からのみ子育て支援はなされるべきこと、などが
主張される。ここに一貫して流れている論理は、「ライフスタイルに中立的な制度
設計をするべきだ」という中立性原則(子どもを産んでも産まなくても、結婚して
もしなくても、というような意味)だということを、確認しておきたい。
 政府の「少子化対策」や、「男女共同参画」との結合に「うさんくささ」を感じ
ている向きには、おすすめの1冊である。しかし、「少子化」でも口実にしないと
「ジェンダー平等」の政策が進められない国というのも、なんだかお寒い気にはな
る。



This page written by TAKAHASHI, June (june.takahashi@nifty.ne.jp)