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はじめの一歩、もう一歩――入門書・ハンドブック・辞書等


 ジェンダー・スタディーズの入門書といえば、最も初期に出た江原由美子らの『ジェンダーの社会学』(新曜社)が、今でももっとも優れている一冊だろう。ポップな文体とスマートなイラスト(柴門ふみの手による)が読みやすさを増しているし、短くセクションに区切られた本文は「ここまで読んだ」という達成感を与えてもくれる。今ではデータなどが古くなってしまったのが残念。

 後発の各書もそれぞれ工夫が凝らしてあって、どれも個性的だ。伊藤・牟田編の『ジェンダーで学ぶ社会学』(社会思想社)、伊藤・樹村・国信の『女性学・男性学』(有斐閣)などは、いろんな「しかけ」がしてあって、使い方にもよるが便利な本である。JICCから出ている『わかりたいあなたのためのフェミニズム・入門』(もともとは別冊宝島として1988年に刊行されたものなので、正確には「後発」ではない)も、江原などによる整理された学説の解説とあわせて、各国の事情が伝わってくる真ん中の部分、そして最後の個別論点の整理と、充実した内容だ。

 入門書をひもとく上で、もう2つ手元に置いておきたいものがある。データ集と辞典・事典類である。
 ここではまず、井上・江原らのまとめた『女性のデータブック』(有斐閣)をあげておこう。なかには古いデータなどもあるのだが、さまざまな分野にわたって各種統計データを網羅した、便利な本である。できればこういう本がいくつか出てきてほしいものである。特にジェンダー統計は、まだまだ公的データがそろっていない分野であるということもある。

 辞典・事典類では、井上・上野・江原らによる『女性学事典』(岩波書店)をまずおすすめする。これ以前にも用語解説程度のものはあったが、日本語オリジナルの本格的な「事典」はこれが初めてである。ただ「事典」とはいうものの、いろんな意味で「辞典」的な一冊と言える。そのほか、家族史・家族社会学などに興味のある向きには『事典・家族』(弘文堂)(日本家族史学会編)がおすすめ。大部で値段も張るが、それだけのことはある。
 外国語から訳された辞典・事典類も多い。初発のものとしてはリサ・タトルの『フェミニズム事典』(明石書店)がある。ややマニアックな項目もあるが定評がある一冊。マギー・ハムの『フェミニズム理論辞典』(明石書店)は、欧米、特に英語圏とフランス語の理論書を読みたい人にとっては便利なはず。いろいろ工夫もしてあるが、一連の辞典・事典類の中ではやや高い。
 そのほか、エリザベス・ライト編の『フェミニズムと精神分析事典』(多賀出版)、ジャネット・K・ボールズの『フェミニズム歴史事典』(明石書店)、ソニア・アンダマール『現代フェミニズム思想辞典』(明石書店)などがある。
 もう一冊、『ワードマップ フェミニズム』(新曜社)を紹介しておこう。「ワードマップ」シリーズの中の1冊ではあるが、めずらしく各章が独立した論文という形式を取っている。フェミニズム理論や論争へのとっかかりとして、専門的に勉強してみたい人には便利だ。

【そのほか】
・ジェンダーと法(岩波講座・現代の法11、辻村みよ子ほか)
・ジェンダーの社会学(岩波講座・現代社会学11、上野千鶴子ほか)
・女性学教育/学習ハンドブック(国立婦人教育会館編)
・女性学ブックガイド(ランカスター大女性学研究センター編)
・セクシュアリティの社会学(岩波講座・現代社会学10、上野千鶴子ほか)
・男性学入門(伊藤公雄)
・フェミニズム入門(大越愛子)
・北海道・活動する女性人名事典
・学んでみたい女性学(中田・杉本ほか)



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