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生きていくために必要な仕事――家事と労働


 家事と労働はいつ頃から分けて考えられるようになったのだろう。どちらも生きていくためには必要な仕事であることは変わりない。(もう一種類、「育児」という仕事がある。ここでは便宜上別に取り上げているが、もちろん明確に区別できるものではない。)

 現代社会で家事や労働がいかなる社会編成の下に組み込まれているかについて、精力的な読解の作業をしているのが、マルクス主義フェミニズムの著作家たちである。上野千鶴子の『家父長制と資本制』(岩波書店)は、1980年代半ば頃までのこの領域の見取り図を得るには便利な一冊と言える。古田睦美の「女性と資本主義」(新水社、『女性学』、2号に所収)は上野とはまたちがった整理を通して、より明解な理解を与えてくれる。

 現代の労働や家事はどんなふうに行なわれているのかについてにも、いろいろなアプローチがされている。小笠原祐子の『OLたちの〈レジスタンス〉』(中公新書)は、主にオフィス労働に従事する女性たちが職場でどのような経験をしているかについて、ミクロな権力と抵抗の戦略の展開に焦点をあてて読み解こうとする。阿古真理の『ルポ「まる子世代」―変化する社会と女性の生き方―』(集英社新書)は、1964〜69年生まれの女性たちに視点をおいて、「均等法第一世代」の彼女たちが職場や家庭などでどのような経験をしてきたかを報告してくれる。
 労働研究としての嚆矢は、木本喜美子の『女性労働とマネジメント』(勁草書房)。ジェンダー間の職務分離のようすや、一部で進みつつある女性登用の実態などについての調査研究をもとにした論考である。こうした地道な実証が積み重ねられることは非常に重要なことだ。
 『よその家(うち)の夫たち』(グループREN、ユック舎)はちょっと変わったスタンスでまとめられている。女性の生活に焦点を当てる際に、彼女たちのパートナーが何をしているかに着目しようというのだ。「男性研究」としてはかなり初期のものだろう。

 そのほか、歴史的に見ると女性の仕事はどんなものだっただろう、という観点からは、織物に着目した『女の仕事』(エリザベス・バーバー、青土社)や、近代的主婦の発端をとらえようとした『良妻賢母の誕生』(清水孝、ちくま新書)などがある。また金野美奈子の『OLの創造』(勁草書房)は、現在「女の仕事」とされているオフィスワークの中の特定業務が、いかに歴史的に女性たちのものとして構築されてきたかを簡明に示してくれる。

【そのほか】
・世界システムと女性(マリア・ミースほか)
・ねらった会社は逃がさない(衿野未矢)
・家族・ジェンダー・企業社会(木本喜美子)


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