Myriel


1995年世界女性会議(北京)
NGOフォーラムワークショップ報告書・要旨

1995年世界女性会議に伴うNGOフォーラム分科会報告要旨
女・妻それとも母:女性の家庭内での位置づけについての問題提起
 ―日本の地方、福島県における女性の雇用問題からみて―


世界女性会議NGOフォーラム参加
Fukushima Prefecture Women's Association Conference
(事務局 栗原るみ・後藤史子・辻みどり・林由美子)

〒960-1296 福島市松川町浅川字直道2番地
福島大学行政社会学部 栗原るみ研究室
TEL 024-548-5151 / FAX 024-548-5174

[English / Japanese]


〈目次〉

はじめに―本報告の位置付けと概要

第一部 福島市の女性に関する意識調査結果を材料に
  ―日本の地方都市における女性の雇用の問題点とその解決の方向性―

1 意識は変わってきているが、家事分担は女性にかたよっている

2 女性の就業構造はM字型ではないのに、女性のM字型就業構造への高い支持

3 男女差別

4 地方都市での生活の孕む可能性

5 今後の課題―市民を捉えている家父長制といそがしさ

第二部 福島県の男女不平等の実状
  ―The NGO ForumでのWork shop開設にむけた緊急アンケート結果報告―

 回答者の構成

 結婚と仕事との関係について

 出産・子育てと仕事との関係について

 男女平等について
(日本社会は男女平等だと思うか、不平等の実例―職場と地域)

※NGOフォーラムのワークショップなどで同種の報告をなさった団体は、ぜひ事務局までご連絡下さい。
※報告書本体の入手を希望される方は、事務局までお問合せ下さい。



はじめに―本報告の位置付けと概要

 日本にいまも強く存在する女性差別をどうクリアしていくかは、困難な課題である。
 日本は、戦後の高度成長を経て、驚異的といわれる経済発展を遂げてきた。更にオイルショック以後も、バブルに至るまでは、他の先進国とくらべ良好な経済発展をつづけてきた。その理由としては、官僚組織の優秀な中央集権的役割(日本株式会社論)や、日本的経営の生産性の高さなどが指摘されてきたが、その背後に日本企業の男社会という特質が潜んでいることが見逃せない。とりわけ、1970年代、世界の公民権運動などマイノリティーの権利主張の高まりのなかで、他の先進諸国が対応に苦しむなか、日本では、そのような動きも殆ど生起せず、従ってそれに対応することなく、効率のよい経営を持続できたことが、オイルショック以後の日本企業のパフォーマンスの良好さの大きな要因であろう。それでも、国際婦人年の影響で、1985年になってようやく日本でも雇用上での男女の雇用均等を規定する法律が制定されるなど、差別撤廃条約批准にともなう制度改革がはじめられている。
 雇用均等法は、日本女性の選択肢を大きく拡大するものではあったが、日本社会の男型構造を変革するものには、なかなかなり得ていない。それでも、都会の女性については、「総合職」「キャリアウーマン」「ディンクス」「女性の自立」などのキーワードを掲げて、さっそうと働く姿が点的にであれ報道されたが、地方都市では、どのように変化があったのだろうか。
 福島県は、東京から新幹線で1〜1.5時間という東北の入口に位置する県である。オイルショック以後、新幹線や高速道路の充実で工場の誘致も増加し、働き先はまあまあ増えたが、1995年度の新国民生活指標によれば、大学進学率や図書館数のすくなさなどを総合した学習環境は全国最悪、医療福祉の充実度も全国最悪、他方家庭婦人の家事労働時間が全国一長いという主婦がよく働く県であり、交際費は全国一多い。ただ、働く環境は総合で7位で、労働市場は東北で最も開けているといえる。学校へいって身を立てるということへの志向は強くなく、主婦が家事に多くの時間を費やし、たくさん子どもを生み、交際費は多く、しかも医療福祉の指標が低いというこの県の日本のなかでの特徴は、ある意味で日本的な男女差別の根強い残存を思わせるものがある。1989年、バブルの真っ只中に福島県に移り住んだ私(栗原)の印象でも、福島には「キャリアウーマン」は見えないような感じがしたものであった。
 1994年、私は福島県の県庁所在地である福島市の「福島市の女性に関する意識調査」の分析を担当した。その結果が、第一部である。この調査では、福島市の男女の意識から、以下の4点が明らかになっている。

 1 男女役割分担についての意識は変わってきているが、実際の家事分
  担は女性にかたよっている。

 2 女性の就業構造はM字型ではない(外で働く女性は多い)のに、女
  性は子育て期にはそれに専業するというM字型就業構造への高い支持。

 3 男女差別については、一応男性の80.5%、女性の89.1%が男性優遇
  傾向であると認識してはいる。

 4 地方都市では通勤時間も少ないはずなのに、働き盛りはほとんど地
  域活動にも参加できないほど忙しい。

 すなわち、福島市民は、現在、男女差別が現存していることを認識している。解決方法についても、職場・会社での働き方が変わり、男も家事・育児を担えるようにすることが重要であると認識されていた。そうすれば、男女とも地域社会活動への参加もできるようになるとする方向性も認識されている。目指すべき方向は明瞭なのに、それが実際にできるかどうかに関しては、どうにも展望がでないというのが実状であった。

 今回のワークショップは、このような福島県の実状を出発点として、これからどうしたらいいか、NGOへの参加をつうじて考えてみようということであった。
 解決方法の一つは、たてわり行政を改め、性別役割分担を維持させようとする「家族だのみ」の福祉政策を改め、女性を独り立ちの働き手と位置づける施策を推進することである。これは国の政策を男女平等を本当に目指すものに変更すれば、不可能ではないであろう。このことが男の会社人間としての生活を不可能にするということは言うまでもない。
 だが、現実は不況である。外国からの圧力で、日本の構造には抜本的な手術が必要だという認識ができつつあるとはいえ、それが男女平等型への変換をふくんでいるという認識は、必ずしも一般のものにはなっていない。いま続いている長期不況の真因が、日本社会の男型の会社の効率主義にあるという証明は、規制緩和論や市場解放論の影に隠れてしまって、十分にはできていない。また、その方策が男女差別構造の克服であるという認識は、国民共通のものにはなっていない。したがって、不況下の厳しい環境のもとで毎日の経営を成り立たせていかなければならない会社が、一時の利益を留保しつつ、内在的に当面の効率よりも、長期的にみて世界や地球と調和できるような日本への構造変革のためのコストを負担する可能性は少ない。
 そこで課題は二つということになる。第一は、現在の日本の構造不況の真因が、日本社会の男型の会社の効率主義(出世のために市民感覚の欠如した会社人間による、自己の再生産のための営みを他者=妻に委ねねば会社員たりえない過激な分業システム)にあるということをしっかりと証明することであろう。第二は、構造不況克服の方策が男女差別構造の廃止にこそあるのだという認識を国民共通のものにしていくことであろう。だがここでの困難は、多くの女性が、男女差別構造と明示的に対決しようなどとは思っていないことである。
 なぜなのだろうか。福島市の調査結果では、男女役割分担に関する意識の変化にもかかわらず、女が外で働く比率がかなり多いのにもかかわらず、男女の固定的役割分担実態ははなかなか変わらないということであったので、そこが何故なのかを福島県内の男女平等を求める女性たちの力で考えあい、また世界の女性たちの知恵をお借りして、次のステップへ進んでいきたい。そこで、男女の固定的役割分担を支えている意識と実態に接近するために、働くということ(雇用・仕事)と男女不平等をどう考えているか及び人間の再生産にかかわることがら(家事・出産・育児)についての女性の本音に肉薄するため、緊急に福島県内の女性にアンケート調査を実施した。第二部がその結果である。
 NGO参加者が手分けして集めたため、短期間でありなおかつ大部分が記述式であるにもかかわらず、188通におよぶ回答を得ることができた。40代が全体の32%を占めている点、専業主婦が28%に達している点、フルタイム就業が33%に達している点、など福島県の女性との代表性は問題にできないところはある。しかし、ずっと共働きを続けた人が40%をしめ、また途中退職者が51%もいたこと、及び各々意見をたくさん書いてくれていることなどから、福島県女性の雇用・働くこと・仕事と自己の再生産(家事・結婚・子育て)に関わる生の本音の考え方やそれぞれが肌で感じている不平等の事例を得ることができた。

第一部 福島市の女性に関する意識調査結果を材料に
  ―日本の地方都市における女性の雇用の問題点とその解決の方向性―


1 意識は変わってきているが、家事分担は女性にかたよっている

(1) 福島市では「女は家庭」という意識は全国的にみて少なかった

(2) 男性が家事をやることを肯定する考え方もかなり多い
 男性が家事や育児をすることについては、男性の場合で「男性も積極的にする方がよい」が16.5%、「男性もできるだけした方がよい」は65.4%に達し、あわせて男の家事参加肯定派は81.9%におよんでいる。女性の場合ではそれぞれ30.3%、60.5%で男の家事参加肯定派は90.8%を占めている。

(3) しかし実態はやっぱり家事は女性
 日常の家事・育児・介護は、共働きでも女性がほぼ担当しているのである。

(4) 男は家事をやらない
 意識面では男性の家事参加肯定派が、女では9割、男でも8割以上の圧倒的多数を占めているにもかかわらず、家事負担の男女差は顕著なものがあると言うことができる。

2 女性の就業構造はM字型ではないのに、女性のM字型就業構造への高い支持

(1) どの程度働いているか
 年齢のきざみが、10才だったことがあるのかもしれないが、なにしろ集計結果は下のグラフにみられるとおり、女性の就業率は20代・30代・40代とわずかながら上昇している。落ち込みは検出されない。しかし、就業者にしめるパートの比率は30代・40代と顕著に増加している。女性の場合就業構造は明らかにM字型ではないのだが、30代・40代におけるパート労働への変更など、職場や労働条件や働き方の転換があったことは窺える。

(2) 女性も職業は一生持ち続ける方がよいという意見はかなり多いのだが
  福島市民の場合も、全国の傾向と同様「子どもができたらやめ、大きくなったら再就職する方がよい」とするM字型就業を支持した意見が最も多かったが、注目すべきは「職業は一生持ち続ける方がよい」への支持が全国より群を抜く高さであった。ここでも福島市民の意識面での先進性を指摘できよう。

(3) 女性が仕事を続けていくうえでの障害 家事・育児
 女性が仕事を続けていくうえで障害となることは、何だと認識されているのだろうか。 「家事育児等について女性の負担が大きいこと」が最も多く、女性の85.0%、男の80.7%がこれをあげていた。

(4) 働いているわけ
 「姑と一日一緒にいるのはいや(これが一番です)」「家に年寄りが2人居て、顔を一日中合わせるのがイヤだから」「働かないと家の人や近所のお客さんに何を言われるかわからないから」といった嫁姑関係を要因とする指摘、逆に「家で留守番(義母)をしてくれる人がいるため」「夫の両親と同居、姑が元気である程度の家事はできるので常勤の仕事をしている」と姑をプラス要因としてあげている指摘がみられ、三世代家族の影が目だった。

(5) パート
 福島市でも、パート・アルバイト全体の64.0%、パート・アルバイト女性の83.0%が、有配偶者の女性であった。
 家事・育児との両立、家族の同意、配偶者としての利益など、家庭要因を指摘した人が全体の45%、好きな時間に働けるということを、家事などに支障がないような働き方と解釈して加えれば、実に72.3%が、家庭要因で、労働条件の悪いパートを選択していることがわかる。

3 男女差別

(1) 男女差別の現状
 「全般的にみて、男女の地位は平等か」と尋ねたところ、このような設問はあいまいだといった指摘もあったが、やっぱり、男性の80.5%、女性の89.1%が男性優遇傾向であると認識していた。

(2) 教育における男女差別
 女性の場合、女の子の教育については、短大以下とする人が6割を超えているのにたいし、男の子の教育については大学以上とする人が8割を超えていた。男の場合でも男の子と女の子の学校指定の内容にはやはり女の場合と同様の顕著な差がみられた。女の子について大学以上を考えている比率は37.3%にすぎないのに対比して、男の子については70.9%が大学以上を考えているのであった。本人の意思に任せるという多数派の存在が救いとはいえ、親の子どもに期待する教育の程度における男女差別は現存している。

(3)男女差別をなくすために(略)

4 地方都市での生活の孕む可能性

(1) 地域活動への参加の実状(略)

(2) なぜ、参加がすくないか
 なぜ、社会参加や地域活動への参加が少ないのか。それは、仕事の時間が多いからである。

(3) 地域社会での活動(略)

(4) 地域社会活動に参加しない理由
 男性の場合、「仕事が忙しい」が最大で、女性の場合も、男性より少ないとはいえこれも「仕事が忙しい」が最大である

(5) 女性の社会参加を進めるために何が必要か
 男女とも「男性も女性も対象に仕事と子育ての両立を支援する体制を整備する」が最も多く、男では54.1%、女では52.9%の出現率を示している。これは男女とも年齢の20、30代で多くみられ、以後減少傾向がみられた。特に女性の20代は69.7%の多数がこれを指摘していた。
 「家庭責任を男性(夫)にも担ってもらう」は女39.8%、男34.3%でそれぞれ第2位であった。
 その他の意見では、女性の場合「本人のやる気と姑さんと理解が必要だと思う」「男性の理解が必要」など、男と姑の理解への期待がみられた。

(6) 男性の社会参加を進めるためには、なにが必要だと思うか
 男性においては、男の地域活動や家庭生活への参加を進めるためには、「労働時間を短くして余暇を増やす」ことが必要だという意見がトップをしめていた。その他の意見でも、「労働時間をみじかくするには、残業をしなくてもよいよう基本月収をUPさせなければならない」「残業しないと稼げない、日本の労務体制をかえる」「企業が地域活動をしていることを評価し推奨する」など企業での働かせ方に言及するものが多くみられた。仕事がもう少し忙しくなくなれば、地域活動や家庭生活にかかわりたいとする若い働きざかりのメッセージと捉えることができよう。

(7) いそがしさ
 睡眠・食事など自己の再生産にかかわるリフレッシュ・タイムは、男に比べると女はかなり少な目である。
 40〜50時間とは、一日あたりの睡眠や食事・テレビを見るなどの時間がほぼ6〜7時間ということになるが、このような過酷な時間配分で生活している人の比率が10%を超えているのは、男では年代別でみると40代の10.5%のみであるのに対し、女では60代をのぞくすべての年代層が該当している。20代11.7%、30代15.9%、40代15.6%、50代17.8%であった。女性のほうが男性よりきつい生活をくらしている比率が高いとこが、確認できよう。

5 今後の課題―市民を捉えている家父長制といそがしさ

 福島市民の男女平等意識は、全国的にみてもレベルの高いものであることがこの調査結果でわかったが、問題は、現実の女性が家事労働を担いつつかなり外で働いており、その結果いそがしさのしわよせを受けているという実状が判明したことである。女性の外で働く比率の高さに比較し、また意識では男も家事育児に参加した方がよいと考える人の比率の大きさに比較し、実態面では女性ばかりが家事・育児を担当するという現実には、なかなか揺るぎが見えない。年配者の家父長制的価値観の影響力が、有形・無形に嫁や息子の意識をも捉えている結果かもしれない。この際、おもんばかることを一歩脱却して、年輩者に本音で「あるべき男女共同」のありかたについて話し合いをしかけてみたらどうだろうか。姑も女性であれば、かつて家父長制の重圧によって、いろいろいやな体験を重ねてきており、自己の体験を全面肯定ではないであろう。そのような女性ゆえの苦痛を被った体験をなくせるように、今後の社会の在り方を変えていこうとしているということに、理解を得ることが必要なのではあるまいか。
 1976年から1985年の「国連婦人の10年」で明確になったのは、「男女の平等を性別役割分業を廃止する方向で実現すること」であった。すなわち、どの職種・職階でも、男の比率を4割から6割の範囲になることを目指し、男女が入り交じって働くことが目標だと確認されたのであった。日本でも、1985年以降、国内行動計画の策定、「女子差別撤廃条約」の批准、男女雇用機会均等法の制定、家庭科教育の見直しなど男女平等をすすめる制度や法の制定・改正がすすめられた。しかし、そのような国連で確認された目標とは、当時の日本の実状からいえば到底夢のようであった。そこで、固定的な性別役割分業意識の根強さや、女性にとって働きやすい職場環境の未整備などが広く存在しているのが現状をふまえ、このような日本に固有の男女平等をめぐる意識を変革するための施策を行っていくこととなったのが、この意識調査もその一環に位置づく女性政策のながれである。
 だが、そのようなとりくみにもかかわらず、それと共存しながら、他方「家族だのみ」=「男性本位」の再編強化政策もすすめられている。配偶者の民法上の法定相続分のひきあげ(1980)、84年以来の数次の税制改正をつうじたパート所得の特別減税および同居老親の特別の扶養控除、「基礎年金」における「主婦の年金権」(1985)、贈与税・所得税の配偶者特別控除の導入・拡充 (1985.87)などがそれである。結局は、基本的に家庭にあって妻・母として、時にパート就労もこなしながら、家族員に「生活保証」を提供する女性の役割を、おもに夫の所得への財政福祉をつうじて「評価」し、性別役割分担を維持させようとしたものだったといえるだろう。(大沢真理『企業中心社会を超えて』時事通信社1993)
 福島市民は、現在、男女差別が現存していることを認識している。解決方法についても、職場・会社での働き方が変わり、男も家事・育児を担えるようにすることが重要であると認識されていた。そうすれば、男女とも地域社会活動への参加もできるようになるとする方向性も認識されている。目指すべき方向は明瞭なのに、それが実際にできるか展望がないのが実状であった。
 この際、たてわり行政を改め、性別役割分担を維持させようとする「家族だのみ」の福祉政策を改め、女性を独り立ちの働き手と位置づける施策を推進することが望まれよう。

第二部 福島県の男女不平等の実状
 ―The NGO ForumでのWork shop開設にむけた緊急アンケート結果報告―

 回答者188人の年齢構成は次の図のとおりである。40代が32%に達し、50代も21%と40代50代が過半数を占めている。20代.30代ともそれぞれ16%とやや少ないが、NGOへ参加するわれわれの年齢構成を反映したものとなっている。

 現在の就業状況=仕事についてみると、フルタイム就業が33%と最も多く、ついで専業主婦が28%を占めている。パート・フルタイム・自営・農業を合わせると働いている比率は59%、1993年の15歳以上女性の労働力比率は全国で50.3%よりやや高い働く比率といえよう。
 主婦とパートを兼ねている人は14%で、専業主婦より少ないものしか集められなかった。雇用問題が重要といいながら、今回の福島県NGOの母体の女性団体に主婦を母体としている団体が多かったことや、企業に調査を依頼できなかったことが、このような回答になったと思われる。
 全国の労働力率を年代別にみると15〜19歳で17.4%、20〜24で74.5%、24〜29で64.3%、30〜34歳で52.7%、35〜39歳で61.7%、40〜44歳で70.3%、45〜49歳で71.9%。50〜54歳で66.9%、55〜59歳で56.4%、60〜64歳で40.1%、65歳以上で16.0%であった (『婦人白書』1994年275p)。1970年代以降の労働力率の伸びは激しく、なかでも40代の伸びは著しい。
 今回の調査の福島県女性の年齢構成別の就業形態をみたのが下のグラフである。専業主婦は20代7%、30代21%、40代21%、50代65%、60代25%と年齢とともに比率を大きくしており、フルタイイム就業は20代57%、30代30%、40代38%、50代35%、60代0%と20代及び40代にやや多くみられた。また30代で主婦とパートの比率は、20代3%、30代21%、40代16%、50代13%、60代10%で、30代に最も多く見られた。(グラフは省略。以下同じ。)
 結婚についてみると、未婚が14%、結婚している人が80%、いまはひとりの人が4%という構成である。1990年国勢調査によれば、全国では未婚23.4%、結婚している人60.4%、いまはひとりの人15.5%という構成である。今回の調査結果は結婚している人の比率がかなり高いものといえよう。
 年齢別には、全国でが20代35.5%、30代85%、40代86.8%、50代82.1%、60代67%であるのにたいし、今回の福島県民の場合20代は30%、30代91%、40代97%、50代100%、60代95%であった。30代以降は大部分が既婚者の意見である。
 なお、既婚者の結婚年齢の平均は24.2歳で1993年の全国の平均初婚年齢27.1歳よりかなり低め、子どもを産んだひとの初めの出産年齢の平均は25.9歳、子どもの平均人数は2.19人でこれはほぼ高度成長期の合計特殊出生率に匹敵する数値といえよう。

○結婚と仕事との関係について

 全体の仕事との関係をみると回答のあった178人のうち、下図にみられるように、途中退職者が93人で51%、ずっと共働きが71人で40%、就職しなかった人が16人で9%であった。

 就職しなかった人は全体で9%であったが、20代は学生等が含まれているため多いが、30代から60代まで3%、5%、13%、18%、多くなっていた。途中退職者が93人で51で最も多かったわけだが、20代29%、30代58%、40代57%であり、50代は53%と若干減少、60代では35%でかなり少なかった。ずっと共働きをした人は全体で71人で40%を占めていたが、20代では53%、30代では40%、40代で38%、50代で35%もみられた。
 ずっと共働きを続けた女性がどのくらいいたのかは、他の統計数字では確かめられなかったが、60代が同世代の47%などということは考えにくく、アンケートが福島県のなかでも意識の進んだ人たちにされたことの現れとも思われる。
 途中退職の理由は大部分が結婚にからまるものであった。
 第一は、結婚退職を当然とするような会社や社会の在り方にかかわる指摘である。「当時は社内恋愛・結婚=退職という会社だった」(30代)「職場がそのようになっていた」(40代)などである。なお、自分の意向としている人の指摘にも、 「結婚をして退めていく人が多かったので、当然と思い家庭に入った」(50代)「結婚後も勤務する様な職場でなかったから」(40代)「夫の会社には共働きがいなかった」(30代)といった指摘がみられたが、これらは会社という組織の事情の力による自分の決定ということであろう。
 「夫との休み日が合わなかったため」(40代)「職場が女性にしては大変な仕事で、結婚して続けていく自信がなかった」(30代)「ゆっくりしたかったし、義母の体が弱いのでやめた」(30代)などもある意味で勤務先の仕事の問題と密接に絡んでいる問題かもしれない。
 また「夫が転勤族のため、当然のこととして受け止めたが、やはり自分の存在がうすく感じた」(40代)というように具体的に転勤によって退職ケースもかなり見られる。
 第二は、「主婦業に専念したかった」(40代)「プロの主婦になるため」(50代)など専業主婦になりたかったという指摘で、40代50代から出されている。なお、「頼りにしていた母が亡くなったので、仕事をやめ家事一切をすることにした」(20代)という指摘もみられた。
 第三は、嫁ぎ先の理由をあげたものである。「嫁ぎ先が遠かったので続けることは不可能だった」(40代)というケーズもかなりみられた。「嫁ぎ先が商売していたからその仕事をした」(50代)というものもあった。
 第四は「子育て」「介護」に関わる理由である。「子育てを自分の手でしたかった」(40代)、「子育て中の諸問題と、夫の親戚の圧力」(62歳)など、子育てにかかわる指摘、「親の身体の具合が悪くなったので退職しました」(不明)「母が脳溢血であおれたのでその看病のため」(52歳)など介護に関わる指摘もかなりみられた。
 その他、結婚と関係ない理由は、「社内で問題があり、改善策を求めたが、良い策をだしてもらえなかったため退職し転職」(30代)がみられただけであった。

○出産・子育てと仕事との関係について

 出産で仕事をやめた人は先にみたように退職経験者の26%、結婚退職の45%についで多い。結婚を退職しなくいでクリアできたとしても、出産という女性が働き続けることへの難関が次に控えていたのだ。出産による退職の理由についてここでは考えてみたい。
 回答34人の内訳は「自分の意向」が最も多く22人64%、「職場の意向」「夫の意向」をあげたのは、それぞれ3人、2人だけであった。
 出産で退職した理由としては、「子育てに専心したかったので」(30代)「子育てを自分の手でしたかった」(40代)「やっと出来た子どもだったので、自分で育てたかった」(不明)など、積極的に自分で子育てに専心したいという意見が最も多く見られた。
 「仕事と育児の両立では、どちらも手抜きとなり自信がなかった」(50代)「子育てと仕事は両立できないので、子育てに専念し、自分の子どもをしっかり育てたいと思った」(50代)「仕事と家事・育児を両立する自信がなかった。ゆったりとした気持ちで子どもと接していきたかった」(30代)や、「つわりの期間が長く、体力的に無理と判断」(40代)など、両立への自信のなさをあげている人もかなりみられた。
 「パートに切り替られたので、子どもを育てていくうえで、職場に気をつかう」(30代)「大企業でないため、出産する時、別の人をすぐに採用され、戻れる状態でなかった」(50代)「時間的な問題(帰宅が午後7時すぎ)」(50代)は、職場や働かせられかたに問題があったためやめなければならなかったというケースであろう。
 「子どもを見る人がいなかったため」(40代)「姑の体が弱かったので」(30代)「第一子が弱かったので、第二子の時に退職」(40代)なども、社会のサポートシステムが整っていれば働きつづけられたかもしれない。
 ただ、「自分を生かせるチャンスは子育てを終えてからでもおそくないと思った」(30代)「仕事はやめても社会とのつながりをもちたい」(60代)などの指摘もみられ、やはり全体として仕事をやめたことにはあきらめと割きりが随伴したことが漂ってくる。「女=家事・育児を担当」ということは当然の前提で、それでも働きつづけるということは、自分は「育児も仕事も頑張れる」という自信と条件が必要なのだという呪縛に女性自身が縛られているといえよう。

 出産や子育てを自己の再生産として把握するとき、それは、女性だけの課題ではないことは明らかである。
 しかし現実には、女だけが、仕事と出産・子育ての両立に悩み、多くは仕事を一時リタイアし、子育てに専心した。共働きを続けた場合も、考えるヒマもないほど忙しく頑張って仕事と育児を両立し、それを多くは母親が支えてきた。どうすれば、これらのいままで女系列に委ねられてきた出産・子育てに夫・男性を自分の課題として取り組ませることができるのだろうか。こうした点について真剣に議論すべきときがきているように思うのだが、いかがなものであろうか。

○男女平等について

1 日本は男女不平等と思うか
 第4回世界女性会議に向けての政府のナショナル・レポート(日本国政府の報告書)は、「わが国の女性の現状を見ると、政策方針決定への参画、職場における能力発揮、家庭や地域における男女の共同参画など様々な面で、根強い固定的な男女の役割分担意識等を背景に、実質的な男女平等の達成が遅れている。」と指摘しています。福島県の女性たちとのワークショップ準備過程で、「自分はいままで男女不平等を感じたことがない」といった意見にも接したので、この日本の男女不平等を指摘しているナショナル・レポートの評価についてどう思うかをまず確認してみようと考えた。
 全体で74%という多数が、「そう思う」と共感をあきらかにしているが、19%は「そうは思わない」と答えている。「そう思う」人は20代で81%、30代で82%と30代以下では8割を超えていたが、40代72%、50代70%、60代65%と年齢に相関して少なくなっていることがわかる。

2 男女不平等の実状
 全体の四分の三が男女不平等を認識しているのだが、それは具体的にどのような形であらわれているのだろうか。日頃福島県の女性たちが、どのような不平等を感じているのか。各分野ごとに、具体的に洗い出してもらった。そのなかから、職場と地域についてだされたものの概要を紹介しておこう。

・職場で感じている不平等はどのようなものか。
 第一は、お茶くみ・掃除などは女の仕事であるとされている職場への批判で11人が指摘している。
 「職場の上司が『女性はお茶の煎れ方で、俺は判断する。』と言ったとき、なぜ女性はお茶を上手に煎れないとダメか、男性は仕事だけしていればいいの?」(20代・フルタイム)「『お茶汲み、掃除は女のすること』と大多数の人が思っている。(特に中年以上の男性。しかし、単身赴任の経験のある男性、20代後半ー30歳ぐらいの人は手伝おうとする態度が見られる。実際手伝ってくれる人もいる。」(20代・フルタイム)
 第二に、お茶くみ・掃除に象徴的にあらわれている問題を職域の問題として指摘しているものも9人という多数にのぼる。例えば 「社会全体で男の仕事、女の仕事に分業されている傾向があり、現在その逆をゆく女は大変苦労をしいられる。早急に、女があらゆる仕事に就ける社会教育システムを作る必要がある」(40代・フルタイム)「出張させてもらえなかった。顔を見る度結婚の話ばかりする。」(20代・不明)など。
 第三に、待遇についての指摘が4人みられた。「昇格、昇給に差がついていたので、給与、退職金、年金等全て同学歴、同年代の男性の7割程度である」(50代・フルタイム)「農協の出労に出て同じ仕事なのに賃金が少ない。」(40代・農業)などの指摘がみられた。
 第四に、昇進の不平等についての指摘が17人から指摘されている。「昇格、仕事の内容、扶養認定」(30代・フルタイム)「男性は能力がなくとも昇進が速い(公務員でも)」(40代・フルタイム)「出世コースになる主任には男性を多くさせる。実力のある女子がいても選ばれない。」(40代・フルタイム)など。
 第五は結婚退職についての指摘で、4件あった。「結婚するときに女性が退職するのが当然という感じで、上司から何時辞めるかと聞かれた」(20代・主婦) 第六は就職差別についての指摘で4人があげていた。例えば「女性の就職難! 採用は男子のみという企業が沢山あるという現実」(不明)など。

・地域で感じている不平等
 第一に「女のくせに」とする女を軽視する傾向について12人から指摘がみられた。例えば、「意見をはっきり言ったりすると「女のくせに」という眼差しを感じる。(思い込みだろうか?)」(40代・自営業)「女性が出すぎると視線を感じる。(夫に代っての出席、酒を飲む、意見を言う)」(40代・その他)など。
 第二に、役員は男ばかりがなっているという問題が、12人から指摘されている。「組長、区長、長のつくものはすべて男。家の代表権は男にあり世帯主が女だと、まるで格が落ちるような雰囲気を感じる事があるが。」(40代・フルタイム)「町会役員は男性だけです」(60代・主婦とパート)など。
 第三は、高齢の男性に特に問題ありとする意見で、「公的な会合に出席すると、年配の男性から異質の目で見られる」 (30代・主婦とパート)など4人が指摘している。
 第四に、世帯単位であることにともなう男中心主義の問題点で、「世帯主は男」(30代・フルタイム)「地域集会等の男性のみ発言する。または夫の名前で出席する等」(30代・その他)、4人があげていた。


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