2005年02月02日

岩波女性学事典(井上ほか編)

【 書 名 】岩波女性学事典
【 編 者 】井上輝子・上野千鶴子・江原由美子・大沢真理・加納実紀代
【出 版 社】岩波書店
【発 行 年】2003年6月
【 価 格 】4830円(税込)
【 ISBN 】4000802038
【KeyWords】事典

【 内 容 】
【コメント】
 日本オリジナルでは初の、女性学・フェミニズムについての本格的な事典・辞典。語学辞書でいう「中辞典」クラスのものだと思って欲しい。要するに大学での学習用として必携ということ。日本の女性学・フェミニズム業界の中心メンバーの編集で、協同作業の成果らしく、バランスはいい。また、「事典」と銘打ってはいるが、作りを含めて一番「辞書」っぽい。さすが岩波、という感じの一冊。(値段も。)ぜひ手元に置いておきたい。

投稿者 june : 01:22

2005年02月01日

フェミニズム理論辞典(マギー・ハム)

【 書 名 】フェミニズム理論辞典
【 著 者 】マギー・ハム著、木本喜美子・高橋準監訳
【出 版 社】明石書店
【発 行 年】1999年7月30日
【 価 格 】6000円+税
【 ISBN 】4-7503-1172-3
【KeyWords】フェミニズム理論

【 内 容 】
【コメント】

 Maggie Humm, The Dictionary of Feminist Theory (2nd edition), Harvest Wheatsheaf, 1995. の翻訳。
 フェミニズム・女性学・ジェンダー研究の分野の辞典/事典では、以前から明石書店からリサ・タトルの『フェミニズム事典』の翻訳があるし、岩波の女性学事典も出た。キーワード集も各社(ドメス出版、新曜社など)からいくつか出版されている。日本でもそれだけ、フェミニズムやジェンダー研究が蓄積され、受け入れられたということだろう。以下、本書を翻訳・監訳した立場からひとこと述べさせていただきたい。

 本書は、人名、書名、概念、キーワードなど、全部で600余の項目を含んでいる。配列は原語のアルファベット順だが、見出し語についての五十音順の目次が巻頭にあるほか、末尾には索引も完備されている。本文中に出てくる見出し語はゴシック表記もするようにしている。このあたりは、編集者と監訳者とで、できるだけ使いやすいものをと考え、配慮したつもり。(編集者の労力はたいへんなものであった。特記しておきたい。)
 見出し語には、日本ではなじみがない言葉も、かなり多く収録されている。英語圏・フランス語圏のフェミニズム理論を学ぼうとする学生・院生には便利な本だろう。ただ、あまり初心者向きではない。「わかりやすく書いた」と著者は述べているのだが、訳していてもかなり難解な文章に出くわした。できるだけ努力はしたつもりだが、それでもまだ平易でない記述はたくさんあると思う。(なお、原著にある誤りもいくつか引き継いでしまった。機会があれば訂正したい。)
 岩波の女性学事典が出て、本書も使命を終えたのではないかと思うことがある。それでもなお売れてくれるのなら、長い時間翻訳・編集作業に取り組んだ価値があったというものだが。

投稿者 june : 16:30

2005年01月18日

女性のデータブック・第4版(井上、江原ほか)

【 書 名 】女性のデータブック・第4版
【 著 者 】井上輝子・江原由美子ほか
【出 版 社】有斐閣
【発 行 年】2005年1月20日
【 価 格 】3200円+税
【 ISBN 】4-641-07678-2
【KeyWords】資料集、統計

【 内 容 】
 Part 1 データ・ファイル
  1 結婚・家族はどう変わったか
  2 性・こころ・からだ
  3 女性と暴力
  4 女性と労働
  5 教育とジェンダー
  6 マスメディアとジェンダー
  7 男女共同参画はどこまで進んだか
  8 女性の政治参加とジェンダー政策

 Part 2 戦後女性史年表(1945−2004)

 Part 3 女性関連主要法令

【コメント】

 女性学・ジェンダー研究関係の定番資料集の最新版。 これ一冊手元にあると、基本的なことはほぼカバーしてくれる。教える側としても、授業の際の配付資料を作成する手がかりになるので、便利な本である。以下、どのあたりが一つ前の第3版と変わったのか、簡単に比べてみたい。
  Part 1、データ・ファイル編では、まず「1 結婚・家族」のところでは、「近代結婚制度の揺らぎ」という項が新しく立てられたのが目につく。第3版では「制度としての結婚」という項があって、そのサブタイトルで「揺らぐ結婚パターン」となっていた。
  「2 性・こころ・からだ」では、生殖技術・性感染症・病気とジェンダーの項目が立てられ、「アルコール依存症」はより広い範囲を含む「アディクション」に変わっている。また、以前この章に含まれていたDV・強姦は、新しく章が立てられた。
 その新しい章が「3 女性と暴力」。DV、児童虐待とジェンダー、セクシュアル・ハラスメント、ポルノグラフィと暴力などからなる。
 「4 女性と労働」の章はかなり項目が整理された。セクシュアル・ハラスメントが3に移ったことも関係している。
 「5 教育とジェンダー」ではキャンパス・セクハラ、アカハラの項目が立てられ、もう一件、「共学・別学」という項目ができた。ただ「共学・別学」については、内容は充実しているとは言いがたい。別学高校の割合、お茶女・奈良女両女子大の受験理由、両大学の将来像、この3つだけである。問題をうまくとらえ切れていない。
 「6 マスメディアとジェンダー」は以前は「マスメディアと女性」だったもの。男性中心主義の表現に変動の兆しがあるか?とか、とんでもなく古いデータ(1980年ころのもの)だった、テレビニュースでのアナウンサーの原稿読み上げ時間性別比較で、データのアップデートがされているのがありがたい。
 第3版で章が独立して立てられていた性役割に関しては、「7 男女共同参画はどこまで進んだか」の中の一項目におさめられることになった。また第3版で労働のところにあった家事、同じく第3版で「社会的活動の場で」の章にふくまれていたようなことがらもここにおさめられている。
 また、政治・政策に関わる「8 女性の政治参加とジェンダー政策」という章が新しく作られている。国際的な状況から、国内のいくつかの政策(育児支援等)についての現状がまとめられている。
 Part 2の年表は、2004年まで延長された。Part 3の女性関連主要法令は新しく追加されたものである。条約から国内法規まで、主なものをカバーしている。

投稿者 june : 11:25

2004年03月11日

ジェンダーで学ぶ社会学(伊藤公雄・牟田和恵編)

【 書 名 】ジェンダーで学ぶ社会学
【 編 者 】伊藤公雄・牟田和恵
【出 版 社】世界思想社
【発 行 年】1998年3月20日
【 価 格 】本体1800円+税
【 ISBN 】4-7907-0674-5
【KeyWords】ジェンダー、教育、労働、家族、メディア、福祉

【 内 容 】(目次)

 0 ジェンダーの視点から現代社会を読む
 1 生まれる――つくられる「男」と「女」
 2 学ぶ――学校にひそむセクシズム
 3 愛する――恋愛というトリック
 4 行為する――行為とジェンダー
 5 働く――ジェンダーと労働
 6 家族する――マニュアル家族をこえて
 7 演技する――役柄としての〈男〉と〈女〉
 8 悩む――個人の悩みと社会問題
 9 伝える――オルターナティブなメディアへ
 10 遊ぶ――スポーツがつくる「らしさ」
 11 闘う――フェミニズムの思想と運動
 12 越境する――国際社会とジェンダー
 13 老いる――高齢者問題と女性問題
 14 死ぬ――人生のターミナル

【コメント】
 人が生まれてから死ぬまでを14の動詞でまとめた、ジェンダーの社会学の入門書。
 この動詞によるまとめが本書の特徴のはずなのだが、それにも増して目立っているのが、蔦森樹、ヨコタ村上孝之、ヨコタ村上ジュリーらによる「BOX」と題された7つのコラムである。
 たとえば、フーゴ・デ・ガリスの「マスキュリズム(男性解放論)宣言」は、女性は家庭にいるべきだと考える古いタイプの男性を「恐竜」、男性に経済的に依存している女性を「フラッフィ」("fluffie"、軽い、真剣さを欠く、というような意味)と呼ぶなど、軽妙なネーミングを駆使して、わかりやすくメンズ・リブの主張を表現している。また、伊田広行の「カップル単位からシングル単位へ」などは、同時期にやはり世界思想社から刊行された彼の単著(『シングル単位の社会論』)のエッセンスを伝えており、手軽に伊田の発想に「入門」するにはうってつけのものである。
 これらコラムを立ち読みするだけでも手に取る価値がある一冊であるが、さすがにそれだけで本書を断ずると営業妨害になるので、もう少し本体部分についてもコメントしておこう。
 各章はそれぞれ担当者が分かれており、凝縮した記述による充実ぶりと文体や密度の不統一が相半ばしている。わかりやすくすっきりとまとまっている部分もあるが、入門書にしては難解な内容も含まれている箇所もあり、必ずしも初学者だけに向けられたものでもないような印象を受ける。
 筆者は本書を数年間、ある授業のテキストとして使ったことがあるが、使いやすい章と使いにくい章があった。第2章などは内容も身近で理解しやすいようなのだが、第4章などはどうしても難解さがつきまとい、学生たちは論理をたどるのにかなり苦しんでいた。(「脳みそを裏返しにされたようで、すごく面白かった」と答案に書いてきた学生もいたが。)
 逆に言えば、それだけ読み応えがあるということでもあるかもしれない。多くは短大や教養課程の社会学の講義、専門学校(看護師養成学校など)で使われているようだ。内容は充実しているので、使い勝手の点でもう一工夫あれば、便利な入門書になるだろう。

投稿者 june : 20:55

2004年03月03日

ジェンダーの社会学(江原由美子ほか)

【 書 名 】ジェンダーの社会学――女たち/男たちの世界
【 著 者 】江原由美子ほか
【出 版 社】新曜社
【発 行 年】1989年5月20日
【 価 格 】本体2330円+税
【 ISBN 】4788503395
【KeyWords】ジェンダー、入門書、エスノメソドロジー、家族、労働、社会運動

【 内 容 】(目次)

第1章 日常生活とジェンダー
 1 私の目覚める場所はどこ? /2 鏡のなかの私/3 おいしい朝食/
 4 電車の中で/5 大学や職場で/6 ふたりでお茶を/7 はるかなる生涯/
 8 こたつでテレビ/9 夢の世界で/10 日常生活から社会へ

第2章 政治社会とジェンダー
 1 学校教育のなかの性別管理/2 制度としての性差別/3 性差別における
 近代の両義性/4 性差別の日本的特性/5 民主主義と婦人参政権/6 「新
 しい社会運動」としてのフェミニズム運動

第3章 家族とジェンダー
 1 家族の定義をめぐって/2 家事の世界・仕事の世界/3 家事の不平等性/
 4 母性本能の神話/5 近代家族の誕生/6 恋愛の社会学/7 変化する現
 代家族/8 生殖技術と家族の変化/9 老人問題とジェンダー

第4章 労働とジェンダー
 1 女性は「働か」なかったか?/2 中産階級の女性たち/3 労働者階級の
 女たち/4 女性労働の現在/5 女性労働の位置/6 仕事と家事の二重役割

第5章 世界社会とジェンダー
 1 世界はどんな社会/2 前線の男たち・銃後の女たち/3 子どもを産むの
 はお国のため?/4 女性の経済活動への参加/5 イスラムと女たち/6 世
 界秩序と社会運動

第6章 感性リアリティとジェンダー
 1 女であること/男であること/2 性差の演出/3 広告のジェンダー/
 4 女性性/男性性/5 ジェンダーとボディ/6 セクシュアリティのシナリ
 オ/7 ジェンダーの情感と社会関係

【コメント】
 今となってはもう「古典」の部類にはいるかも知れない。「ジェンダー」をキーワードにした入門書はいろいろあるけれど、見事にその後のジェンダー・イシューの展開を先取りした内容になっていることが上の目次からもわかるとおり、もっとも初期に出版された本書ではあるが、類書の追随を許していない。
 出版当時もたいへん話題になった本である。筆者の周囲の人間はみんな買っていた。……というと大げさだが、少なくとも全員一度は手にとって中を見ていたはず。
 おそらく、欠けている点があるとするなら、セクシュアル・ハラスメントについて言及がないことぐらいだろう。あるいは、その後の労働社会学におけるジェンダー研究の進展を考えると、いささか労働の章の記述が物足りなく思えてくることぐらいだろうか。しかし、ここまでくるともうあら探しの部類に入る。
 特徴としては、まずはポップで平易な表現の多様(第1章の江原の文章が典型)。これが柴門ふみのオリジナル・イラストと相まって、本書の独特なイメージを創り上げている。それと2〜4ページに各項目をまとめた断章形式。さまざまな資料やコラムとともに、ポップであるがゆえに散漫になりがちな記述を、密度の高い充実したものへ引き上げるのに一役買っている。
 テキストとして使う側から言うと、一見使いにくいのだが、意外に便利というのが感想。第1章は多少話の持って行きようが難しいが、それ以降は、補足資料などを使いながら、1回の授業(90分)で2〜3つの項目を進むことができる。専門学校などで45〜50分の授業であれば1回に1〜2つ。
 いろいろな意味で、後発のテキストの目標になった一冊であろう。筆者も社会学の教科書を執筆する際に、編者の一人がこの本をモデルとして提示したのを覚えている。

投稿者 june : 21:00

女性学・男性学(伊藤公雄・樹村みのり・國信潤子)

【 書 名 】女性学・男性学――ジェンダー論入門
【 著 者 】伊藤公雄・樹村みのり・國信潤子
【出 版 社】有斐閣(有斐閣アルマ)
【発 行 年】2002年1月30日
【 価 格 】本体1900円+税
【 ISBN 】4-641-12141-9
【KeyWords】ジェンダー、男性学、教育、労働、家族、開発、社会政策

【 内 容 】(目次)

第1章 女であることの損・得、男であることの損・得
第2章 作られる〈男らしさ〉〈女らしさ〉

 特講1 女性学って何?――女性学とフェミニズムの不可分な関係
 マンガ1 あなたとわたし

第3章 ジェンダー・フリーな教育のために
第4章 恋愛の女性学・男性学

 特講 男性学って何?――ごく短い男性学と男性運動のスケッチ

第5章 ジェンダーと労働

 マンガ2 花子さんの見た未来?

第6章 多様な家族に向かって
第7章 育児はだれのもの

 マンガ3 今日の一日の幸

第8章 国際化のなかの女性問題・男性問題

 特講3 平和の思想と〈男らしさ〉

第9章 ジェンダー・フリー社会の見取り図

【コメント】
 幅広い領域にわたってまとめられたジェンダー論の入門書。いろいろと工夫が凝らしてあって興味深い。
 開発と環境、平和問題など、あまり類書で触れられることのない問題を押さえているのが第一の特徴。コラムという形式ではあるが、ジェンダーと自然科学の問題、スポーツとジェンダーなどにも言及されている。
 二番目の特徴は、樹村の描く3本のショートコミックが取り入れられていること。いささか学習マンガちっくだったり、「夢オチ」だったりと、コミックとして楽しんで読むのには無理があるが、試みとしては評価されてよい。
 三番目には、章末に「エクササイズ」が付してあること。教科書を読んで、授業を聞いているだけでは、なかなか自分のものにならない知識も、ここにあるような作業や討論を経ることによって、定着度を高めることができるだろう。特に社会教育の分野で本書を用いる際には役立つのではないだろうか。ただ、100人をこえるような受講者がいる授業では難しいと思われるものも多いのだが。
 そのほか、各章の扉にかかげてある「名言・迷言」も、それだけでおもしろい。(もっとも、第1章の2番目のものなどは、とても笑えない文脈で発せられている。)

投稿者 june : 20:57

1998年04月08日

女性学教育/学習ハンドブック(国立婦人教育会館)

【 書 名 】女性学教育/学習ハンドブック
【 編 者 】国立婦人教育会館
【出 版 社】有斐閣
【発 行 年】1997年11月30日
【 価 格 】2000円+税
【 ISBN 】4-641-07600-6
【KeyWords】女性学 社会教育 生涯学習 エンパワーメント

【 内 容 】

 Part 1 社会教育における女性学教育/学習の内容

  1 女性学教育・学習のコアとなる内容
  2 ジェンダーに敏感な現実認識を通してエンパワーメントを
  3 学習者に応じた多様なカリキュラムを

 I 性別役割分業の見直し
  1 社会的・文化的性別としてのジェンダー
  2 性別役割分業の歴史
  3 性別役割分業の現状と課題
  4 メディアの性役割表現
  5 労働市場におけるジェンダー・バイアス
  6 性別役割分業を支える税・社会保障の見直し
  7 家事労働の経済評価
  8 地域活動の脱・性別役割分業化
  9 参画のためのエンパワーメント
  10 性別役割分業と南北問題――開発におけるジェンダーの視点

 II 多様な家族・ライフスタイルへ
  1 近代家族の特質
  2 戦後家族と家規範の残存
  3 多様な家族の可能性
  4 幼児期におけるジェンダー形成
  5 学校文化とジェンダー
  6 恋愛・結婚・離婚の政治学
  7 母性から産・育へ
  8 共働き・片働きの生活
  9 育児と労働の谷間
  10 老後問題とジェンダー

 III セクシュアリティ
  1 セクシュアリティの近代神話
  2 生殖の政治学
  3 美の政治学
  4 日常性の中のジェンダーとセクシュアリティ
  5 性と暴力
  6 売買春問題
  7 ポルノグラフィ
  8 多様なセクシュアリティ

 Part 2 社会教育における女性学教育/学習の方法

 I 社会教育における女性学教育/学習の方法についての考え方
  1 エンパワーメントにつながる女性学教育/学習の方法の視点
  2 学習の流れとそれに対応する方法例
  3 女性学教育/学習の方法についての参考事例
  4 女性学教育/学習を企画するときの留意点

 II 対象者別学習課題とプログラム例
  1 学習ニーズの把握と学習課題
  2 対象者別学習課程
  3 プログラム例

【コメント】
 本書は2部からなる。Part 1では女性学を学ぶ/教える際の核となるべき内容について触れられている。最初に、「性別役割分業の見直し」「男女像と家庭像の見直し→多様な家族・ライフスタイルへ」「セクシュアリティ神話の打破」という3点がキーポイントとして上げられていて、続けてそれらのおのおのについて考える際に必要な知識とリファレンスが羅列されている。
 Part 2では、社会教育や自己学習の場面において、学習/教育のカリキュラムを作成する際のキーポイントが述べられている。
 女性学を学ぼうとするもの、および公民館などで女性学講座を開くことを考えている社会教育担当者、地域女性団体で学習/運動プログラムを考えなければならないキーパーソンなどにとっては、大いにヒントとなる内容が含まれている。初学者向けと言うよりは、ある程度女性学・フェミニズムの内容を学習してきた者が、今度は他人に知識や経験を伝達する側に回る際に役に立つだろう。
 もっとも、Part 1の内容・記述は平均的かつ平凡であり、刺激には欠ける。また、固有名詞の誤りなど基本的なミスが目立つ。後者だけはどうにかしてほしい。

投稿者 june : 17:42

1996年09月07日

男性学入門(伊藤公雄)

【 書 名 】男性学入門 Introduction to Men's Studies
【 著 者 】伊藤公雄
【出 版 社】作品社
【発 行 年】1996年8月30日
【 価 格 】1500円
【 ISBN 】4-87893-258-9
【KeyWords】男性学、ジェンダー研究、男らしさ

【 内 容 】(目次)

 第1章 悩める“男の一生”     ――現代男性論
 第2章 〈男らしさ〉って何だろう? ――「男のメンツ」の中身
 第3章 男の目で見直す男性社会   ――〈男性学〉の現在
 第4章 文化と歴史の中の男と女   ――ジェンダー論入門
 第5章 男性のための(そして女性のための)女性学入門
 第6章 「働く主夫」の生活と意見  ――体験的主夫論
 第7章 ニッポンのお父さんたちへ  ――現代父親論
 第8章 もっと群れよう、男たち!  ――“メンズ・ムーブメント”のすすめ
 おわりに ぼくが〈男性学〉をはじめた理由(わけ)

【コメント】
 めずらしく男性学の本なんか紹介してしまいますが、これはすごくわかりやすくておすすめです。女性学の講座はぼちぼち大学などで行われているようですが、男性学はまだ少なく、そのため伊藤さんはあっちこっちからひっぱりだこで、いろんなところで講義・講演などをしています。その豊富な経験を踏まえているということもあるからでしょうか。
 よく、「女性問題は男性問題でもある」という言い方がされることがあります。男性学もある面女性学と呼応するところがあります。たとえば、「歴史の中でどのように女性は支配されてきたのか」という問いは、「どのように男性は支配してきたのか」という問いと裏腹であるように。
 というわけで、この本、男性だけでなく女性にもおすすめの1冊になりうると思います。
 最後の章(「おわりに」)での、伊藤さんの男性学へのモチーフも必読。率直に学生時代の経験が語られており、彼が男性学の問題にどう取り組んできたのかがわかります。
 もっとも、こういう経路を通らないと男性学へ入っていけないということではないでしょう。彼の経路は多分に時代的なものでもあります。その後の世代の男性は、また別な経路で男性学へたどりついています。でもおそらく、「“男性が苦”である状態から“男性楽”である状態へ」をめざす方向性は、変わらないのだと思いますが。

投稿者 june : 07:32

1996年05月04日

フェミニズム入門(大越愛子)

【 書 名 】フェミニズム入門
【 著 者 】大越愛子
【出 版 社】筑摩書房(ちくま新書)
【発 行 年】1996年3月20日
【 価 格 】680円
【 ISBN 】4-480-05662-9
【KeyWords】入門書、理論

【 内 容 】(目次)

 第一章 フェミニズムの快楽
  1 フェミニズムとは
  2 フェミニズムの快楽
  3 フェミニズムと男性

 第二章 フェミニズムの潮流
  1 リベラル・フェミニズム
  2 マルクス主義フェミニズム
  3 ラディカル・フェミニズム
  4 精神分析派フェミニズム
  5 ソーシャリスト(社会主義)・フェミニズム
  6 アナキスト・フェミニズム(アナーカ・フェミニズム)
  7 エコロジカル・フェミニズム
  8 現象学フェミニズム
  9 ポストモダン・フェミニズム
  10 階級、人種、民族、セクシュアリティなどと交差するフェミニズム思想

 第三章 日本のフェミニズムの展開
  1 啓蒙的婦人論
  2 社会主義婦人論
  3 『青鞜』フェミニズム
  4 アナキズム女性論
  5 母性主義フェミニズム
  6 戦後民主主義フェミニズム
  7 ウーマン・リブ
  8 エコ・フェミ論争
  9 八〇年代フェミニズム
  10 九〇年代フェミニズム

 第四章 フェミニズムの理論的挑戦
  1 フェミニズムの基本理念
   a.家父長制
   b.ジェンダー
   c.セクシュアリティ
   d.リプロダクション
   e.ファロセントリズム
  2 現代フェミニズムのキイワード
   a.性暴力の政治学
   b.ポルノ論争
   c.国家と性
   d.資本主義と女性搾取
   e.フェミニスト・エシックス
   f.フェミニズム批評

 むすびにかえて
 主な参考文献
 事項索引

【コメント】

 新書ではありますが、一点を除いてしっかりした造りの入門書です。
 本体の第二章から第四章では、フェミニズムの各ジャンル、日本のフェミニズムの流れを、要点をおさえつつ、単なる概観に留まらずに筆者独自の視点を全面に出して説明しています。特に、第三章は非常にしっかりした論旨で、分量はともかく、読みごたえがあります。諸概念の解説も、わかりやすく、つぼをおさえていると言えるでしょう。
 しかし、それだけに参考文献が弱いのが残念。入門書の一つの使命に、「次に読む本を示唆できること」ということがあると思いますが、この一点が欠けています。
 ところで、フェミニズムにやや抵抗があるという人は、第一章をとばして第二章から読んだ方がよいでしょう。第一章は、マニフェスト的なところもあって、やや刺激が強いようです。それだけに、抵抗力がない人は流されてしまうし、抗体反応を示しやすい人は気をつけて、ということ。

投稿者 june : 07:07

1996年03月14日

事典・家族(比較家族史学会編)

【 書 名 】事典・家族
【 著 者 】比較家族史学会
【出 版 社】弘文堂
【発 行 年】1996年2月28日
【 価 格 】発売記念価格20600円(〜96/06/30)、定価22660円
【 ISBN 】4-335-55066-9
【KeyWords】家族、歴史、民俗

【 内 容 】【コメント】

 家族論・家族史・民俗学などについての最新の成果を網羅した事典です。しかし、個人で買うにはちょっと高いかもしれません。
 編成上の特徴として、特・大・中・小と項目のレベルを分けているということがあげられます。「イエ」「家父長制」などの重要な用語については、「ひく」事典というよりは「読む」事典として仕上げてあるわけです。
 民俗関係の項目(「かまど」、「門守り」など)も充実しています。少し見た限りでは、沖縄の習俗に関する項目も数多く盛り込まれているようでした。また、比較法的な項目(「ナポレオン民法典」など)もあり、幅広い地域・時代をカバーしています。
 各項目の内容までは検討していませんが、現在もっとも充実した事典であり、スタンダードに参照されることになるのは間違いないでしょう。
 フェミニズム関係の事典というのは数が少なく、家族という限られた領域ではありますが、しっかりした量・内容のものが日本語オリジナルのものとして出たというのは大きいと思います。比較家族史学会(1982年発足)の方々の努力には頭が下がる思いです。

投稿者 june : 01:15

1995年10月22日

北海道・活動する女性人名事典(鷲田小彌太編・監修)

【 書 名 】北海道・活動する女性人名事典
【 著 者 】鷲田小彌太編・監修
      中村久子・太田美恵子・山下邦子・久米八重子・斎藤代志美著
【出 版 社】三一書房
【発 行 年】1995年10月15日
【 価 格 】1700円
【 ISBN 】4-380-95279-7
【KeyWords】事典、活動、人物、地域

【 内 容 】
 ビジネス、マスコミ、大学教育、司法(弁護士)、政治、市民運動(団体役員)、文化、スポーツの各分野で活躍する、北海道在住の女性636人の人名事典。(数は数え違いをしているかも知れません。)
 おのおのについて、業績・活動内容、趣味・モットー、出身・生年月日、学歴・職歴、勤務先・住所・電話番号、などが記載されています(空欄もあり)。
 鷲田さん(札幌大学)が教えている小論文教室の出身者、つまり調査・著述などに関しては非専門家である女性たちが、調査し、執筆したものです。調査は主に面談を中心に行なったそうです。

【コメント】
 この本は読むためというか、使うために買うということもありますが、「作る」ためにも買ってほしい本です。北海道という限定された地域の女性人名事典ですが、これが各都道府県ごとにできたらどうでしょうか?
 新聞・雑誌・TVなどでとりあげられる女性たちの活動は、ごく限られています。でも、地域で、草の根でこつこつと活動をしている人、そういう人たちの力こそが、社会を動かす(変える、とはあえて言いません)力であるでしょう。
 そういう人たちが「いる」ということがわかること、それがまず必要なのではないでしょうか。

投稿者 june : 00:06

1995年04月20日

学んでみたい女性学(中田照子ほか)

【 書 名 】学んでみたい女性学
【 著 者 】中田照子、杉本貴代栄、J.L.サンボンマツ、N.S.オズボーン
【出 版 社】ミネルヴァ書房
【発 行 年】1995年
【 価 格 】2000円
【 ISBN 】4-623-02483-0
【KeyWords】女性学、生活

【 内 容 】(目次から抜粋)

 第I部 生活編
  第1章 家族問題  晩婚化/夫婦別姓/離婚 etc.
  第2章 働き続ける 働きながら学ぶ/セクハラ/農業で自立 etc.
  第3章 子育て   保育問題の焦点/育児休業法 etc.
  第4章 現代の病巣 「現代の駆け込み寺」/夫の暴力/虐待をする母親 etc.
  第5章 老後問題  老後の生活/福祉労働/老いの文化 etc.
  第6章 「自立」を求めて 障害を越えて/主婦から短大生へ etc.

 第II部 理論編
  第1章 女性学について
   女性学とは何か?/アメリカにおける女性学/日本における女性学
  第2章 日本女性の地位を概観する
   「いえ」制度から別姓まで/女工さんの誕生から雇用機会均等法まで/女
   性の高等教育/性をひさぐ貧しさと廃娼運動
  第3章 日本におけるフェミニズムの諸理論
  第4章 欧米における女性解放の女性史――アメリカを中心として
  第5章 アメリカにおけるフェミニズムの諸理論と趨勢
  第6章 女性学のクラスでの経験(座談会)

 コラム
  『ミス・サイゴン』とアメリカ女性学
  スポーツ・ファッションのキメ方
  『美味しんぼ』の読み方
  『マディソン郡の橋』と女性解放運動
  ミス・コンテストとフェミニズム
  中島みゆきの聴き方

 読書案内

【コメント】
 女性学の入門テキスト。わかりやすく書かれてはいるものの、決して手抜きはされていない。「生活編」は中日新聞に掲載された「女が生きる」シリーズに加筆・追加を加えたもので、具体的な女性の生き方が取上げられており、興味深い。
 また、ところどころに入るコラムや用語解説なども面白い。最後のコラムなんて、きっとみなさん立ち読みに行くんじゃないだろうか。(笑)

投稿者 june : 01:41

1994年06月01日

わかりたいあなたのための フェミニズム・入門(別冊宝島編集部編)

【 書 名 】わかりたいあなたのための フェミニズム・入門
【 編 者 】別冊宝島編集部
【出 版 社】JICC出版
【発 行 年】1990年
【 価 格 】1400円
【KeyWords】入門書、概論

【 内 容 】
【コメント】
 前半は、フェミニズム理論の現状についてのサーベイ、後半は、日本ほか諸外国の女性・フェミニズムの歴史・現状のレポート、最後にいくつかトピックを特定した論考と、これ一冊でフェミニズムについての網羅的な状況がわかってしまう、という「別冊宝島」ならではの便利な本。もともと雑誌形式(ムック)であったものだが、売れ行き好評ということで書籍形式に改められた。
 前半の理論の整理も便利だが、各国の状況に即して語られるさまざまな論者の議論の紹介も興味深いものがある。ただし、今となってはやや内容が古いのが残念。

投稿者 june : 16:24