2000年05月06日

母性愛神話の罠(大日向雅美)

【 書 名 】母性愛神話の罠
【 著 者 】大日向雅美
【出 版 社】日本評論社
【発 行 年】2000年4月10日
【 価 格 】1700円+税
【 ISBN 】4-535-56156-7
【KeyWords】母性 子育て 三歳児神話

【 内 容 】(目次)

 はじめに――なぜ母性愛神話を問い直すのか
 第1章 母性愛神話にとらわれた社会とそのゆがみ
 第2章 母性愛に寄せる人々の慕情
 第3章 母性愛神話の罠にはまる女性たち
 第4章 母の乳房にぶらさがる男たち
 第5章 三歳児神話――母子癒着の元凶
 第6章 人はいかに三歳児神話にとらわれているか
 第7章 母親の就労を憂う世論を憂う
 第8章 母親の就労は本当に子どもに悪影響を与えるか
 第9章 男を父にさせない母性愛神話の罪
 第10章 母性愛神話をかざす男たち
 第11章 母性愛が加害性をもつとき
 第12章 母性愛神話からの解放――女性の自己実現をめざして

 参考文献
 あとがき

【コメント】

 『母性の研究』(川島書店、1988年)にはじまり、『母性は女の勲章ですか?』(扶桑社、1992年)、『子育てと出会うとき』(NHKブックス、1999年)、そして本書と、大日向の母性愛神話批判は、執拗だ。それはおそらく、社会の中に広がっている神話のしぶとさへの対抗意識からなのだろう。
 本書は1998年から2年間にわたって『こころの科学』に連載された「母性愛神話を問い直す」に加筆修正を加えたものである。雑誌連載当時から目を通す機会があったのだが、新たな知見を多く取り入れたというよりは、これまでの研究のエッセンスを取り出して、わかりやすい言葉でまとめたという印象が強い一冊である。そのため、専門性は低いものの、さまざまな調査からの生の親の声のほか、自身の経験(母性愛神話批判をした講演で、男性や母親自身から強い反発を受けた経験談など)も多く取り入れられていて、読みやすくまとめられている。
 興味深かったのは、第6章冒頭に紹介されていた相談例(実際の相談から大日向が作成したもの)。これはネタばらしをここでするよりは、ぜひご自分で、「この相談にどう答えたらよいのか」を試していただきたい。
 もう一つは、これは彼女のデビュー作『母性の研究』にも収録されているものであるが、第7章で紹介されているお茶の水女子大卒業生(当然全員女性)に対する調査データである。古い世代は自己の母親業についての満足度が高いのに対し、最近の世代では満足度が低く、育児についての不安も多く表明されている。これを世代差と取って、「最近の母親は……」という結論を出すのは、大日向に言わせればいささか早急にして誤解。問題は、古い世代(女高師時代)では育児期間中の就労率が62.0%、新しい世代では24.5%というこの違いだと彼女は主張する。(たしかに、育児でキャリアを中断される経験がないほうが、「世の中に遅れてしまうという感じがする」という質問にYesと回答する率は下がるだろう。)
 父親のあり方についても、目配りよくさまざまに言及されている。育時連キャンペーンの「育児をしない男を父とは呼ばない? ならばこころおきなく育児をやらせてくれ」という名コピーも紹介されていて(174ページ)、実際のチラシを目にしている身としてはこのくだりを楽しく読めた。
 値段もそう高くないので、「最初の一冊」としてもおすすめかもしれない。

投稿者 june : 15:25