2007年03月09日

軍需産業と女性労働(佐藤千登勢)

【 書 名 】軍需産業と女性労働
      ――第二次世界大戦下の日米比較軍需産業と女性労働
【 著 者 】佐藤千登勢
【出 版 社】彩流社
【発 行 年】2003年
【 価 格 】5250円(税込み)
【 ISBN 】4882028018
【KeyWords】労働、性別職務分離、大量生産方式、製造業

【 内 容 】(目次)

序章
 本書の視点
 比較史の手法
 本書の構成

第一部 第二次世界大戦期の女性労働

第一章 総動員体制の形成と女性労働
 第一節 労務動員政策の形成と女性労働
 第二節 女性の国民登録
 第三節 女性の労働徴用をめぐる議論
 第四節 女性の労務動員のゆくえ
 結論

第二部 第二次世界大戦期の航空機産業と女性労働

第二章 航空機産業の発展と女性の雇用
 第一節 航空機産業の発展と労働力
 第二節 航空機産業への女性の就労
 結論

第三章 航空機産業における「女性の仕事」の創出
      ──言説の形成と生産方式の転換
 第一節 身体的な差異への着目──戦時期の労働科学とジェンダー
 第二節 言説の形成──「女性に適した」航空機の仕事
 第三節 航空機工場における生産方式の転換と女性労働
 第四節 労働過程の細分化と「女性の仕事」の創出
 結論

第三部 第二次世界大戦期の航空機産業における労務管理政策と女性労働者

第四章 航空機産業における女性の賃金と職業訓練
 第一節 賃金
 第二節 職業訓練
 結論

第五章 航空機産業における「母性保護」と労務管理
 第一節 労働保護法の緩和──「母性保護」の形骸化
 第二節 女性労働者の管理──カウンセリング・プログラムと生活指導
 第三節 女性労働者と育児──託児所の設立
 結論

第四部 戦後への継続性

第六章 戦後への視角──「女性の仕事」の継続性
 第一節 平時への転換と女性労働者
 第二節 航空機産業のゆくえと「女性の仕事」の継続性
 第三節 戦後の労働政策と労務管理における継続性
 結論

終章 類似点と相異点

【コメント】

 この本を研究会で読んだ後、参加者の一人がつぶやいた。「一国だけでも大変なのに。」日米の比較史というアプローチには、それだけの労力が必要とされたわけだ。
 日本とアメリカ。共に、ある種の「特殊性」が主張されることが多い。アメリカはヨーロッパと比較した際の「特殊」であろうし、日本の場合には、欧米をひっくるめて対比して「特殊」なのだろう。
 だが筆者の比較史のアプローチは、この両国における共通性を、しかも、かたや戦勝国、かたや敗戦国という立場の違いを超えた同質性を、明らかにする。主にそれは、「女性の仕事」の特質についての言説に関するものであった。「女性は体力がない」「手先が器用で忍耐強い」。そういった、現在でも流用される言説だ。おそらくこれ以前にもあったことは間違いない。
 そうした言説は、大戦以前は男性の職場であった航空機産業の労働現場へ女性を配置していくプロセスでも用いられた。熟練工だった男性労働者が徴兵でいなくなった空隙を、女性が埋めなくてはならなかったからだ。そのためには、まず女性が働くことができるように労働過程を再編しなければならなかったが、それと共に女性たちにそこで働くよう説得し、さらに彼女たちの周囲にも働きかけなければならなかった。本書の記述は、こうした具体的な場面においてさまざまな言説が形成され、用いられた事例を、豊富に取り上げ、整理して提示してくれる。
 もちろん、両国で航空機産業はまったく正反対の結果を出した。日本はついにアメリカの生産性も生産量も上回ることができなかったのである。それがなぜか、という点についても、本書は言及しており、さらに女性労働がどのように労働過程に包摂されていったのか、さらには彼女たちをどう企業が処遇しようとしていたかまでを検討している。
 大戦中に航空機産業で作られた「女性の仕事」、およびそのイメージ――力は必要としないが、器用さ・繊細さや注意深さ、忍耐力を求められる反復作業、こうした仕事に女性は向いているというイメージ――が、戦後の製造業における女性労働の原型をなしたことも著者は指摘している。つまり、戦後の女性労働のレジームの基礎が、大戦期の航空機産業でつくられたということだ。
 検討は1950年代までで終わっており、必ずしも戦後の女性労働を通しての話ではないが、本書はわたしたちが第二次世界大戦後の各国の女性労働のあり方の本質を理解する上での基礎を提供してくれているといえるだろう。記述もよく整理されており、文章も平易で読みやすく、記述の量のわりには理解するのに困難を伴わない。これもまた評価されるべきであろう。

投稿者 june : 13:24

2005年04月21日

風俗嬢意識調査(要友紀子・水島希)

【 書 名 】風俗嬢意識調査――126人の職業意識
【 著 者 】要友紀子・水島希
【出 版 社】ポット出版
【発 行 年】2005年4月5日
【 価 格 】2300円+税
【 ISBN 】4-939015-76-9
【KeyWords】セックスワーク 売買春 社会調査

【 内 容 】(目次)

 はじめに
 お読みになる前に

 第1章 風俗嬢意識調査報告
 第2章 風俗嬢座談会+再現インタビュー
 第3章 『風俗嬢意識調査』を読む
  橋爪大三郎/瀬地山角/南智子/小倉千加子/宮台真司

 資料
  アンケート用紙/全回答/風俗の分類と内容/風俗用語辞典

 あとがき・謝辞

【コメント】

 セックスワークの非犯罪化について、長年地道に取り組んでいる要友紀子らの調査報告書。いわゆる「非本番系」風俗の女性たち126人の調査をまとめたもの。
 セックスワークの是非をめぐっては議論の余地があることには間違いないが、第3章で瀬地山角が指摘しているように、そうした議論とは別の次元で現にセックスワークは行われ続けており、さまざまな現実が存在することも事実である。この調査はまずその現実へ切り込むことで、既存の議論の土台をゆるがそうというものである。
 本書の冒頭部分から、一節を引いておく。(pp.8-9)

 売買春について交わされる議論の多くについて、私は、「一体、どういう経験や見聞から、風俗のことをどう理解してそのような考え方に至ったのか」というところが疑わしくてしょうがありませんでした。
(中略)
 もし、従来のような売買春論議が、セックスワーカーの現実や思いと全く無関係に、「自分の理想(幻想)のユートピア」を目指して語られているのだとしたら、これほど愚かなことはないと思います。
(中略)
 この風俗嬢意識調査結果が世に出たとたん、従来のような売買春論議の性質が一変するというような事態を想定しているわけではありません。ただ、「風俗嬢っていうのは概して……」とか、「風俗の仕事というのはこういうものだから……」といった、今まで信じられていた風俗にまつわる物語は、もう自信を持っては語られなくなるでしょう。

 東京および横浜での調査ということで、その他の大都市圏、あるいは地方都市だとまた違った結果が出るかも知れないが、これはもう調査を積み重ねていくしかない。
 分析では、大学生のアルバイト観との比較が興味深い。特に53〜55ページあたりの、他の労働に従事している人たちが、「売春よりはマシ」というかたちで労働のタイプを階層化していくことで、自分たちが従事している労働の条件の悪さなどを、「まだ下がある」というふうに資本に好都合に解釈してしまう可能性が生じる、という指摘などは重要であろう。
 ただ、学生にとってはあくまでもアルバイトは「アルバイト」であることが多いだろうから、風俗で生計を立てているような人たちを含むデータとの丸ごとの比較はどうだっただろうか。この点はもう少し慎重に評価したい。

 いずれにしても、やっと日の目を見たデータである(調査期間は1999年〜2000年)。広い反響があることを期待している。
 ところで、気になったことが一つ。この本にはしおりひもが2本ついている。紫とピンク。なぜ??

■関連URL

-http://homepage2.nifty.com/swash/index.html

 SWASH(Sex Work And Sexual Health)のWebページ。

-http://www.pot.co.jp/yukkochan/index.html

 要の調査日誌。メインのページは、最近更新されてない?

投稿者 june : 12:54

2005年01月08日

家父長制と資本制(上野千鶴子)

【 書 名 】家父長制と資本制
【 著 者 】上野千鶴子
【出 版 社】岩波書店
【発 行 年】1990年
【 価 格 】2500円
【KeyWords】マルクス主義フェミニズム、労働、家族

【 内 容 】(目次)

 PART I : 理論篇

 第1章 マルクス主義フェミニズムの問題構制
 第2章 フェミニストのマルクス主義批判
 第3章 家事労働論争
 第4章 家父長制の物質的基礎
 第5章 再生産様式の理論
 第6章 再生産の政治
 第7章 家父長制と資本制の二元論

 PART II : 分析篇

 第8章 家父長制と資本制 第一期
 第9章 家父長制と資本制 第二期
 第10章 家父長制と資本制 第三期
 第11章 家族の再編 I
 第12章 家族の再編 II
 第13章 結び フェミニスト・オルターナティヴを求めて

 付論 脱工業化とジェンダーの再編成

【コメント】
 日本におけるマルクス主義フェミニズムの受容の基盤を築いた本。ほとんど日本で欧米の理論状況が紹介されていない時点で『思想の科学』に分載された上野のサーベイは貴重だっただろう。しかし、二元論(dual-systems theory)までしか紹介されていないなど、欠陥もある。さらにその後、上野の紹介した議論に基づいて、新しい理論展開や実証研究が日本独自で進むというような結果をもたらしたかというと、それほど大きい影響力があったということもない。(これは上野の責任ではない。)1990年代後半以降、労働社会学の領域での実証が徐々に蓄積されるようになって、ようやくマルクス主義フェミニズムも「生きた」ものになってきたといえるかもしれない。

投稿者 june : 16:04

2004年04月09日

ルポ「まる子世代」――変化する社会と女性の生き方(阿古真理)

【 書 名 】ルポ「まる子世代」――変化する社会と女性の生き方
【 著 者 】阿古真理
【出 版 社】集英社新書
【発 行 年】2004年2月22日
【 価 格 】本体680円+税
【 ISBN 】4-08-720229-1
【KeyWords】労働、家族、世代、均等法

【 内 容 】(目次)
 
 はじめに まる子世代とその背景

 第1章 企業社会の現実
  1 不況下の企業
  2 組織の論理
  3 根強く残る男社会の壁

 第2章 主婦役割を担うまる子世代
  1 夫の会社中心の暮らし
  2 妻たちの孤独

 第3章 親の時代とまる子世代の現実
  1 母親たちの人生
  2 親の生き方が与えた影響
  3 まる子世代が育った家庭

 第4章 現代社会を生きる
  1 社会背景を探る
  2 まる子世代の自分探し

 あとがきに代えて それぞれの選択

【コメント】
 「まる子世代」とは、1964〜69年生まれの女性のこと。Hanako世代と団塊ジュニア世代にはさまれたこの世代は、目立った特徴を持たない地味な世代だと筆者は言う。いわば、さくらももこの『ちびまる子ちゃん』の主人公・まる子のように「ふつう」。だから「まる子世代」、なのだ。
 だが、一見「ふつう」のこの世代は、実は大きな社会変化の中でおとなになってきた。高度成長期後半に生まれたこの世代にとっては、親の世代とは異なり、生活の便利さ、豊かさは当たり前。1964年生まれは、言わずと知れた均等法第一世代。かつフリーター第一世代でもある。女性が企業で働くことも当然になった時代に就職した。さらには育児不安や晩婚化・シングル化の中心でもある。
 大学卒の場合は、ちょうど80年代末の雇用拡大期。その後バブルがはじけて女性の新卒採用は減り、上を見ても下を見ても社内に「味方」が少ないという事態を経験せざるを得なかった。「女性が元気になった」と言われつつも、就業継続は厳しいものであり、かつ企業に根強く残る男性中心主義にぶつかることもしばしば。男性とは立場が違うだけに、そうした社内の問題点にも敏感になってしまう。総合職ではありながら、なんとなく「半端もの」という感じを自分に対して抱くことも多い、という。
 かといって、家庭での生活が充実しているかというと、それもあやしい。確かに若い層での男性の家事分担率は上がってきたかもしれないが、それも微々たるもの。相変わらず男性は会社に縛りつけられているし、昔と違って収入もそれほど伸びるわけでもない。我慢しようにも見返りは少ないのだ。特に、以前は仕事をしていて主婦になった「まる子」たちにとっては、どうしても仕事を続けていた時にそれなりには感じていた充実感と今の生活とを引き比べてしまう。「社会に取り残される」という不安も大きい。女性の就業が「腰かけ」程度だった時代だったら感じなかったようなことかもしれないのだが。
 この世代のいろいろな女性の生き方を見ていく中で感じるのは、転換期を生きてきた彼女たちにとって、ストレスが非常に大きかったのだということ。そんな中での希望は、それでもやはり女性の生き方の多様化は進んできていて、自分が納得のいく道を模索することが可能になってきたということ。いいことばかりではないが、悪いことばかりでもない。それはいつの時代も言えることだろうが、取り上げられているのが自分と同じ世代の人たちだけに、友人たちの生き方とも合わせて、興味深く読んだ一冊である。

○著者自身によるサイト
 http://www011.upp.so-net.ne.jp/akomedia/maruko.html

投稿者 june : 20:52

2003年07月18日

女性労働とマネジメント(木本喜美子)

【 書 名 】女性労働とマネジメント
【 著 者 】木本喜美子
【出 版 社】勁草書房
【シリーズ 名】双書 ジェンダー分析
【発 行 年】2003年6月20日
【 価 格 】本体3500円+税
【 ISBN 】4-326-64857-0
【KeyWords】労働 組織 パート キャリア

【 内 容 】(目次)

 はじめに

 I

 第1章 労働研究とジェンダー視角
     ――女性労働研究のクリティカルな総括――
 第2章 方法と対象

 II

 第3章 ジェンダー間の職務分離メカニズム
     ――職務の過度のジェンダー化――
 第4章 労働組織内の応答−交渉関係
     ――〈私たち〉という分離線――
 第5章 「女性店長づくり」という挑戦
     ――マネジメント・スタイルとジェンダー――

 終章  労働組織のリアリティに迫る

【コメント】

 本書は『家族・ジェンダー・企業社会』(ミネルヴァ書房、1995年)以降の筆者の論文に加筆・修正を加えたものに、新たに書き下ろした部分を加えてまとめられている。労働のジェンダー分析における研究の最前線である。
 本書執筆のモチーフの基本は、労働研究における男性中心主義に対する批判である。そこには女性労働者の実態を単純に無視してかかるあり方から、女性労働にかかわる現象の記述にとどまるような研究、あるいは「女性労働の特殊性」のみを強調するようなさまざまな議論(身体的問題や家事・育児役割との関わりで女性労働を規定するような観点)までが含まれる。
 そこに欠けているのは、労働の具体的な現場(職場組織)における男性労働者と女性労働者双方のあり方をトータルなものとしてとらえようという視点である(さらに言うならば、久場嬉子が指摘するように、アンペイド/ペイドワークをトータルに考えていく視点も重要になるだろう)。男性労働者のみを「労働者」として「一般」化し、女性労働者をそこからの偏差によって「特殊」化してとらえるような、既存の女性労働研究のあり方に対するある種の「いらだち」のようなものが、木本の筆致からは感じ取れる(本書第I部第1章)。
 近年、職業構造の性別・年齢別の分離についてのマクロデータの分析から、国際比較を含めてさまざまな発見がなされてきている。(大沢真知子、大沢真理、深澤和子などの研究による。)それらの研究の中では、同時に、マクロな構造を生み出す日本企業の性別慣行が重要であることも指摘されている。
 木本が切り込もうとするのは、この企業組織におけるさまざまな性別慣行やミクロな作動原理と、それらが生み出す諸結果についてである。具体的には職場組織における性別による職務分離の構造化や、女性労働者内での対立を生み出させるメカニズム、そしてそれらに対するいくつかの挑戦的事例の検討である(本書第II部)。
 ここにまとめられているのは、百貨店とスーパーマーケット会社が各々一社というごくごくわずかな事例でしかない。他の百貨店やスーパーはどうなのかとか、女性が重要な位置を占めている例としては、ほかにも事務職、医療職、保育職や低年齢対象の教育職、などがある。それら一つ一つを検討していくことは、とうてい一人の研究者だけの努力ではすまないものである。この研究を起点として、多様な職種についてもっと多様な視点を加えた調査報告がなされていくことが、今後期待される。

(03/07/18)

投稿者 june : 21:02

2001年01月26日

モダンガール論(斎藤美奈子)

【 書 名 】モダンガール論 ―女の子には出世の道が二つある
【 著 者 】斎藤美奈子
【出 版 社】マガジンハウス
【発 行 年】2000年12月21日
【 価 格 】1600円+税
【 ISBN 】4-8387-1286-3
【KeyWords】労働、教育、結婚、階層とジェンダー、主婦

【 内 容 】

 はじめに モダンガールの野望について

 第1章 将来の夢、みつけた
  :女学校に行かせて!
  :お嬢さんは職業婦人
  :主婦ほど素敵な商売はない

 第2章 貧乏なんて大嫌い
  :労働婦人ってなんだ
  :ネオンの街で生きぬく法
  :みんな「働く主婦」だった

 第3章 夢と現実のはざまで
  :女性誌が教えてくれたこと
  :キレた彼女が立ち上がるとき
  :ああ、すばらしき軍国婦人

 第4章 高度成長の逆襲
  :めざせOL、女子大生
  :あなたも私も専業主婦
  :翔んでる女がぶつかった壁

 終章 バブルが消えて、日が暮れて

 もっと知りたい人のための文献案内
 あとがき

【コメント】

 斎藤美奈子が女性史の本を書くとこうなる――という一冊。明治から現代にかけての、女性の生き方の変遷を、「欲望史観」という視点から描いてくれる。
 「欲望史観」とは彼女によればこういうものだ。女性はずうぅぅっと抑圧されてきました、大変でしたーっていうんでもなく(それだとずももももぉぉんと落ち込んでしまう)、「婦人解放運動の力で女はこんなに進歩した!」というのでもなく(それだとみんなそんなに立派だったん?と疑問に思えてしまう)、「リッチな暮らしがしたい、きれいなお洋服が着たい、人生の成功者と呼ばれたい」というキモチの蓄積として、今があるという考え方。「出世」したいという気持ちは男の子だけの専売特許じゃない、女の子は女の子なりに「出世」を狙って生きてきたし生きているのだ、ということ。

 この本のいちばんの特徴をあげるとすると、階級・階層間の差異に目を向けている、ということ。得てしてこの手の本は、女を一枚岩の存在として扱いがちだ。しかし、斎藤美奈子は、比較的富裕な階層と、都市の労働者と、貧困層と、そして何よりもきちんと農村にも目を向けている。これはなかなか他に類例を見ない。
 そのほか、一次史料にもたくさんあたっているということもあげられる。もちろん、斎藤美奈子流のテンポのよい、楽しい語り口も相変わらず快調だ。読んで損はない一冊――そうおすすめしたい。

投稿者 june : 14:54

2000年05月06日

OLの創造(金野美奈子)

【 書 名 】OLの創造――意味世界としてのジェンダー
【 著 者 】金野美奈子
【出 版 社】勁草書房
【発 行 年】2000年2月22日
【 価 格 】本体2400円+税
【 ISBN 】4-326-65229-2
【KeyWords】労働 事務職 ジェンダー

【 内 容 】(目次)

 序章  意味世界としてのジェンダー――労働研究への位置づけ
 第一章 女性事務職の「発見」
 第二章 「女事務員」の世界
 第三章 戦時下の事務職
 第四章 差異の構築
 終章  労働におけるジェンダーの歴史化に向けて

【コメント】

 お茶くみ・コピー取りといった独特の職務から、短期勤続、低いコミットメントといった「働きぶり」のステレオタイプにいたるまで、「OL」(女性事務職)のものとされるさまざまな要素には枚挙に暇がない。しかしそれは、はじめから「OL」のものだったのだろうか?
 本書では、明治後期からの「女性事務職」の歴史をたどることで、これらが歴史的に構築されてきたものであることを明らかにしようとする。「お茶くみ」は戦前のオフィスでは、一般に給仕などの下級事務職(そこには女性も含まれているが)の仕事であり、「お茶くみ=女の仕事」ではなかったという。まさに女性労働の戦後体制の中で、
お茶くみは女性に割り当てられるようになってきたのだ。
 短期勤続にしても同じである。戦前期、男性に兵役があった頃には、実業学校卒の男性事務員のキャリアはそれによって3年ほど中断された。妊娠によるキャリアの中断はそれに比べたらそれほど大したことではない。……
 このようにさまざまな歴史的検討を加えながら、金野は、現在あるような「OL」あるいは女性の事務労働についてのわたしたちの観念は、きわめて戦後的であること、おそらくは高度成長の初期から中期にかけてようやく成立したものであることを論証していく。
 職場内部に「差異」として認められるものにはさまざまなものがある。しかし重要なのは、それらの「差異」にどのような「意味」が与えられるかである。職場における処遇の違いには必ずしも性差に由来しないものもたくさんある。だがそれらにあるとき「男女差」という意味が与えられ、性差に沿ってそれらが解釈されるようになるとき、
職場の中に一つの線が引かれる。そうすると今度はその区分線、すなわち職場のジェンダーに沿って、さまざまな解釈がなされるようになっていくのである。(もちろん、その解釈とは研究者によってされるものというわけではなく、おのおのの職場で具体的に存在する個々人がなによりもまずなすものである。)
 金野の今回の作業はいささか大まかで業種にもかなりの偏りがあるようだ。また、あくまでも事務職に限られた分析ではある。しかし、その視点・試み自体はきわめて示唆的であり、こうした分析がより精緻にさまざまな業種・職種で積み重ねられていくことで、もっと有効な結論が導けることにおそらくなるだろう。これまでのマクロな統計
データによる女性労働研究から一歩を踏み出す視角が示されたことを、とりあえずは歓迎することにしたい。

投稿者 june : 15:30

1998年01月31日

OLたちの〈レジスタンス〉(小笠原祐子)

【書 名 】OLたちの〈レジスタンス〉――サラリーマンとOLのパワーゲーム
【 著 者 】小笠原祐子
【出 版 社】中央公論社(中公新書1401)
【発 行 年】1998年1月25日
【 価 格 】660円+税
【 ISBN 】4-12-101401-4
【KeyWords】労働 組織 権力 性別文化

【 内 容 】(目次)

 はじめに

 序章  OLという存在
  「BG」から「OL」へ 会社員が男と女に性別化されるということ
  「女の子」としてのOL 「会社妻」としてのOL

 第一章 「女の敵は女」のウソ
  企業と女の友情 年功 学歴 勤続 年齢/魅力 結婚 転職 家族
  男にとって可分、女にとって不可分な仕事と家庭の関係

 第二章 ゴシップ
  女が男をうわさするとき OLが職場の男性を嫌う理由 「怖いのは
  その伝播力です」 性と視線 「おじさん改造講座」 「家庭からあ
  ぶれた男が群れている」
 
 第三章 バレンタインデー
  日米バレンタインデー比較 日本型バレンタインデーの起源 職場の
  チョコレートは人気のバロメーター 鬱憤晴らし 匿名性と多義性
  チョコレートの示差性と記号性

 第四章 OLの抵抗の行為
  受け身の仕事態勢 頼み事の拒否 優先順位決定権の掌握 ボイコッ
  ト 人事部への通告 総スカン 抵抗行為の限界

 第五章 男のストラテジー
  ムチよりアメ ホワイトデー 妻の役割 

 終章  ジェンダーの落とし穴(gender trap)
  構造的劣位の優位性 協調的抵抗と抵抗的協調 性のステレオタイプ

【コメント】
 「OL」ってなんなんだろう? 昇進もなく、昇給も大したことない、差別的な扱いを受けている労働者なのだろうか。それとも、五時になれば速攻で退社し、休みになればホイホイ海外旅行に出かけて、買ってきたブランド品を身にまとい、お気楽にグルメだスキーだと騒ぎまくり、そのくせ男性との食事の時にはちゃっかり支払いをまかせているズルい連中なんだろうか。
 たしかにOLは、会社の中で不利な扱いを受けている存在ではある。しかし同時に彼女たちは、独自の〈抵抗〉の戦術を用いて、さまざまな権力を行使する主体でもあるのだ、とこの本の中で筆者は述べている。
 それは、ゴシップを通じてとか、お茶の中にぞうきんをしぼった水を入れちゃうとか、イヤなやつの仕事は後回しとかシカトするとかいったことを通じてだったりする。こう書くと〈抵抗〉なんていっても、些細で子どもっぽいたぐいのことがらのように思われるかもしれない。しかし、企業社会の中でのインフォーマル・グループの強さというのは、これは莫迦にできないものがあるのだ。不利なゴシップが行き渡れば昇進がだめになるかもしれないし、後回しされたんじゃ仕事もはかどらない、シカトされたら必要な書類や伝票がオフィスのどこにあるかもさだかでない――オフィスという空間を実質的に管理しているのは、ほかでもないOLたちなのだから。
 しかし、そうした「弱者の〈抵抗〉」について記述しながらも、筆者はもう一方で冷静にその結末を見通す目を持っている。つまり、OLは構造的に劣位な地位に置かれてはいるが、企業の主流からおりているということによって、逆に主流文化の住民たち――総合職の男たちや上司や、ときには総合職の女性たち――を冷静に観察して、分析し、批判し、嘲笑することもできる(清水ちなみらによる『おじさん改造講座』がその好例だと筆者は述べている)。だが、彼女たちがそういった〈抵抗〉を繰り広げれば繰り広げるほど、その結果として再生産される男性と女性の役割関係は、非常に保守的なものになってしまう。これが、筆者がいうところの、「ジェンダーの落とし穴(gender trap)」だ。
 個々の女性の意図や彼女たちが得る報酬(プレゼントや満足感、その他)を離れて、〈抵抗〉の成功は彼女たちに対するステレオタイプをさらに強化し、伝統的なジェンダー構造を再生産する。では、必要なのは一体なんなのだろう?

投稿者 june : 17:45

1997年03月04日

女たちがつくるアジア(松井やより)

【 書 名 】女たちがつくるアジア
【 著 者 】松井やより
【出 版 社】岩波書店(岩波新書)
【発 行 年】1996年9月20日
【 価 格 】631円+税
【 ISBN 】4-00-430462-8
【KeyWords】アジア 開発 売買春 環境 労働 グローバリゼーション

【 内 容 】(目次)

 序章 アジアの女たちは、いま

 I 経済発展と女性への暴力
  1 人身売買される女性たち
  2 女性を襲うエイズ
  3 国際移住労働の女性化
  4 日比混血児と日本社会
  5 沈黙を破る女たち

 II 「開発」侵略と闘う女たち
  1 フィリピン開発計画――生活の場を追われる住民
  2 タイのユーカリ植林とエビ養殖――農漁村の女たちの抵抗
  3 サラワクの木材伐採とダム建設――森の先住民族の闘い
  4 台湾とタイの観光開発――海外旅行ブームの陰で

 III 抵抗からオルタナティブ実践へ
  1 もうひとつのネグロス――フィリピン
  2 女たちのつながり――香港・中国
  3 村の未来を織る――タイ
  4 山村に変革の風――ネパール
  5 痛みを力に――韓国

 終章 女たちがめざすアジアの世紀

 あとがき
 参考図書
 各テーマに取り組んでいるNGO一覧

【コメント】
 ふくしま女性フォーラム(WFF)では、5月の総会開催に合わせて松井やよりさんの講演会を福島市で行いますが、この本は、「受動的に講演を聴くだけじゃだめだよね」という会員の声が集まって行われている、アジアの女性たちの状況を知るための読書会のテキストです。
 10年以上前に読んだ松井さんの『女たちのアジア』(岩波新書)が書かれた当時よりも、アジアの女性たちの状況というのは悪くなっていることも多いのではないだろうか――読み終わっての第一印象がこれです。物質的には、東南アジアの農村にも電化製品が入り込み、モノは普及しているのだけれど、貨幣経済の浸透からくる相対的な貧困化によって女性、特に少女の身売り(もちろん多くは性産業へ)が増加しているという事実があります。そして、都市部で日本や韓国などからの(男性の)観光客の増加にともなって繁栄する性産業で働く過程で、健康を害したり、HIVに感染したりする女性たち。
 また、貧困化の中でもっとも大きくしわよせがいくのも女性です。女の子には十分な食べ物が与えられなかったり、産まれたのが女の子であった場合の嬰児殺しは、過去のことではなく、こうして現在にも続いているのが現実。
 救いと思えることは、こうした状況の中でも、彼女たちを助け、また農村からの身売りを防止するためのネットワークなどが徐々に機能し始めているということでしょうか。

投稿者 june : 18:15

1996年08月31日

女の仕事(エリザベス・バーバー)

【 書 名 】女の仕事 〜織物から見た古代の生活文化
【 著 者 】エリザベス・W・バーバー  中島健訳
【出 版 社】青土社
【発 行 年】1996年7月15日
【 価 格 】3400円
【 ISBN 】4-7917-5467-0
【KeyWords】考古学、労働、神話学

【 内 容 】
【コメント】
 先史時代から古典古代にいたるまでのヨーロッパ・中近東を中心とした地域の紡績・織布は、いったい誰が、何を素材として、どのようにしておこなっていたのか? 糸や布は何千年とはもたない。何もないところからどのようにして解答を得られるのだろう?
 この、一種のパズルにも似た作業に取り組むのがこの本。著者のバーバーは考古学者ですが、言語学、神話学、自然科学を援用し、さらに実験まで取り入れて問題に取り組んでいます。
 その作業の中から明らかになってくるのは、先史・古代世界において、糸紡ぎ・織物は基本的に「女の仕事」であったということ。そして、生活が非常に苦しく、作業に手間もかかった時代に、逆に驚くほどの労力をかけて手の込んだ作品を彼女たちが作り上げていたということです(これは「生命と文化の逆転現象」と呼ばれるものです)。衣服は、生活のためには欠かせないものですが、それにもまして象徴的意味と装飾的意味、そして「芸術作品」としての意味を持っていたのかもしれません。
 バーバーの作業は、さらにさまざまな神話や文学、その他の芸術作品に登場する女性の姿が、いかに「紡ぎ」、「織る」という作業と密接に結びついたものであるかを読み解くという方向へと向かいます。ミロのヴィーナス像、失われた両腕はいったいなにをしているのだろう? あれは、ずれ落ちて上半身から下半身までもむきだしになってしまいそうになっている衣服をとめようとしている恥じらいのこもったポーズ? それはいかにも当時の「女の仕事」のあり方を理解しない解釈かもしれない。愛と生殖をつかさどるアフロディーテ(ヴィーナス)のあのポーズは、左手に高く紡錘をかかげ、右手で垂れ下がる糸を引っ張るという糸紡ぎの作業のポーズなのだということを、腕の残っている部分の筋肉の動きからバーバーは明らかにしていきます。新しい生命を引き出す作業は、もやもやした繊維の集まりから糸を引き出す作業と同じことだというメタファー。
 近代の紡績工場や力織機を使った織物工場でも、やはり主な労働力は女性でしたが、彼女たちの仕事は伝統的な「紡ぐ」「織る」という作業の象徴的意味を失っています。それは、ひょっとしたら工場労働が子どもを産み、育てるということと両立しなかったことと何か関係があるのかもしれません。

投稿者 june : 07:29

1996年04月26日

家族・ジェンダー・企業社会(木本喜美子)

【 書 名 】家族・ジェンダー・企業社会 〜ジェンダー・アプローチの模索〜
【 著 者 】木本喜美子
【出 版 社】ミネルヴァ書房
【発 行 年】1995年11月20日
【 価 格 】3500円
【 ISBN 】4-623-02586-1
【KeyWords】家族、労働

【 内 容 】(目次)

 はしがき――本書の問題関心について

 第I部 「家族の危機」と家族研究

 第1章 「家族の危機」と家族社会学
  一 「家族の危機」をめぐる問題状況
  二 「家族の危機」が提起するもの

 第2章 ジェンダー・アプローチによる家族研究
  一 〈近代家族〉論の視角
  二 ジェンダー・アプローチによる挑戦

 第II部 現代家族論の諸相

 第3章 マルクス主義フェミニズムの家族論
  一 マルクス主義家族論の根本問題
  二 マルクス主義フェミニズム家族論の焦点

 第4章 「家族賃金」という観念と現代家族
  一 「家族賃金」という観念の歴史的役割
  二 「家族賃金」観念をめぐる論議の検討
  三 国家と「家族賃金」観念
  四 現代家族研究の課題

 第5章 生活変動の中の現代家族
  一 生活問題研究と家族
  二 家族の現代的変動の意味するもの
  三 〈近代家族〉と生活問題
  四 「家族の危機」と生活問題

 第6章 〈主婦の誕生〉と家事
  一 フェミニズム理論における主婦
  二 都市的生活様式の変動と女性

 補論1 家事と女と男と「愛」
  一 そして奥さまはいなくなった
  二 家事と愛情の〈結婚〉
  三 家事と愛情の〈離別〉

 第III部 家族と〈企業社会〉

 第7章 家族と〈企業社会〉という視角
  一 戦後日本の家族変動と〈企業社会〉論
  二 〈企業社会〉論へのアプローチ

 第8章 家族と〈企業社会〉の現在
  一 現代の「苦患労働」と相対的高賃金
  二 家族の対応と夫の家族認識
  三 日本型〈近代家族〉と〈企業社会〉

 補論2 家族の物質的生活基盤と企業内統合
  一 企業内人生と家族生活
  二 家計構造と家族生活
  三 三大生涯的生活課題の達成

 あとがき

【コメント】

 「労働研究」という分野で、家族をどう位置づけるかという問題は、特に女性の労働をめぐっては古くからのテーマであっただろう。ただし、その場合の「家族」概念は、これまでのところ「家族の神話」を払拭していない面が多々あるようでもあった。
 結局のところ、労働研究は、(1)家族をブラックボックスに入れて省みないか、(2)そうでない場合にも、「家族愛」などの、近年神話として批判されつつある諸概念を所与のものとしていたのである。したがって、日本の〈企業社会〉批判の中でも、「企業社会が家族を崩壊させる」という、わかりやすい反面、しっかりした実証的足場を欠いた決まり文句が繰り返されるに留まっていた。
 本書は、1970年代以来欧米を中心に社会史とフェミニスト・スタディが交錯する場で積み重ねられてきた〈近代家族〉の歴史的特殊性を浮き彫りにする研究をとりいれ、「家族の神話」からの脱却を図りつつ(第I部、第II部)、日本の〈企業社会〉を分析するための視角を作りだしていこうとする(第III部)ものである。
 本書全体のポイントは、男性労働者中心に概念が組立てられてきていた労働研究に対して、「ジェンダー」概念を導入することによって、これまで決してトータルなかたちで把握されてこなかった労働と家族の関係に関する視点を刷新することにある。〈近代家族〉イメージが支配的通念として強固に残る現代日本において、現状を的確に把握するためには、まず分析視角を批判することから始めなければいけないという筆者の強いモチベーションが伝わってくる好著である。
 そのことを確認した上で一つ注文をつけさせてもらうとすれば、現代日本の労働者(女性も、男性も)のより詳細な事例分析をもっと豊富に取り入れてほしいということだろう。これについては、筆者の今後の研究発表に期待することにしたい。

投稿者 june : 01:19

1996年04月22日

ねらった会社は逃がさない(衿野未矢)

【 書 名 】ねらった会社は逃がさない
       〜女子学生に贈る「会社の現実」から学ぶ就職活動
【 著 者 】衿野未矢
【出 版 社】時事通信社
【発 行 年】1995年12月25日
【 価 格 】1200円
【 ISBN 】4-7887-9538-8
【KeyWords】労働、就職活動、セクシャルハラスメント

【 内 容 】(目次)

 まえがき

 第1章 就職活動を始める前に
  “選ばれる”時代の到来
  時代の流れを見すえて作戦を立てよ
  長く勤め続ける可能性を視野に入れよう
  希望を持ち続けるために
  就職活動は無駄ではない
  ライバルは多くない
  今だからできることをせよ
  わけもなく不安になるのはやめよう

 第2章 自分を知ろう
  容姿は影響を与えるか
  大企業のメリット・中小企業のメリット
  ブランド企業をめざすなら
  会社見学をしてみよう
  仕事と“自己表現”を混同するな
  「自分を知る」のは何のためか
  「自分を知る」簡単な方法
  志望業種の選び方 ――あこがれと夢を分析する
  
 第3章 情報のウラを読め
  自宅外・一浪はマイナスではない
  「女子は自宅通勤に限る」の本音
  セクハラ質問のウラには
  圧迫面接

 第4章 ネットワークを作ろう
  情報収集は絶対に必要だ
  ネットワークの作り方
  就職課を活用する
  同級生とはギブ・アンド・テイクで
  頼りになるお姉さんを作れ

 第5章 これが正しいマナーだ
  スーツはこうして選ぶ
  小物は機能性を考えて
  OG訪問は二段階で
  OGの“逆面接”
  OG訪問でアポをとる
  手紙には“あなたらしさ”をプラスして
  OG訪問を受ける側の心理

 第6章 面接の準備――基礎編
  面接の準備とは
  方向性を定めよ
  柱となるテーマを定めよ
  テーマの見つけ方
  ネタを充実させる
  テーマとネタの意味を誤解するな

 第7章 面接の準備――テクニック編
  志望書、履歴書はメニューである
  面接にそなえた新聞の読み方
  「情報オタク」にはなるな
  企画を出すのは有効か
  歩き方の練習をする
  自信を持って堂々と話す
  丸暗記するな
  ノリはこう作れ
  取り扱い注意のネタがある

 第8章 作文の苦手なあなたへ
  就職試験対策としての作文上達法
  「何をどう書けばいいのかわからない」を克服しよう
  テーマは一つでいい
  「説得力がない」を脱するために
  新語、ハヤリモノには注意せよ
  数字のマジック

 落ちたときのフォロー

 あとがき

【コメント】
 これから/今、就職活動をする人/している人に、ぜひおすすめの1冊です。
 衿野さんは、雑誌編集者をしていてその後フリーライターになった女性。自身の経験と最近の取材をもとに、「ポストバブル・ポスト均等法」時代の「選ばれ方」を解説してくれます。
 詳しい内容は本書を読んでいただくとして、ポイントは、「落とされないより、選ばれる」、これでしょうか。
 171ページの著者紹介には、連絡先までついています。読んだ人には、ぜひフィードバックをいろいろとしてほしい本です。

投稿者 june : 01:06

1995年03月06日

世界システムと女性(M.ミースほか)

【 書 名 】世界システムと女性
【 著 者 】M.ミース、C.v.ヴェールホフ、V.ベンホルト=トムゼン
【出 版 社】藤原書店
【発 行 年】1995年2月25日
【 価 格 】4800円
【 ISBN 】4-89434-010-0
【KeyWords】マルクス主義フェミニズム、エコロジー、アジア、ラテンアメリカ、
      世界システム論、開発、エコ・フェミニズム

【 内 容 】

 日本語版への序                        (ミース)

 序                              (ミース)

 第I部 女性労働と資本主義

  1 農民と主婦が、資本主義世界システムの中で消滅しないのはなぜか
                             (ヴェールホフ)
  2 資本主義の発展とサブシステンス生産           (ミース)
  3 貧困層への投資              (ベンホルト=トムゼン)

 第II部 女性と自然の植民地化

  4 性別分業の社会的起源                  (ミース)
  5 「国家」と「資本」と「家父長制」の関係をめぐって (ヴェールホフ)
  6 女性労働と暴力              (ベンホルト=トムゼン)

 第III部 女性に対する政策と女性の闘い

  7 インド農村における階級闘争と女性の闘い         (ミース)
  8 なぜ第三世界においても主婦が作られ続けるのか
                         (ベンホルト=トムゼン)
  9 プロレタリアは死んだ、主婦万歳!         (ヴェールホフ)

【コメント】

 古田睦美・善本裕子による、Mies, M., et al. WOMEN : THE LAST COLONY, London, Zed Books, 1988、の訳です。ただし、一部、原著者の意向によって論文が差し替えられていて、その部分が最新の論稿になっています。また、日本語版への序文も付け加えられています。
 マリア・ミースらは1994年春に来日し、各地でシンポジウムに参加しました。
 いささか残念なのは、本書の造りで、註が簡略化されているということ、また、タイトルが原題から変更されているということ、そしてこれが最大だと思うのですが、「値段が高い」ということです(笑)。これらはどちらかというと出版社の責任でしょう。
 そのかわり、訳文は、特に古田訳の章は、正確さよりも読みやすさを心がけた文章だと言えます。(もちろん、内容はまた別。)善本さんの訳はやや硬いかもしれません。これは、彼女が担当した部分が基本的にドイツ語からのものだということもあるでしょう。
 本書の基本的な目的は、既存の社会科学の概念を、人口の大多数の部分を占める存在――女性、および、第三世界の農村人口――を分析対象にできるようにするために刷新し、それを使って分析をおこなうことにあります。
 すなわち、旧来の「労働」「プロレタリア化」「市場」などといった概念では、主婦の労働や農村におけるインフォーマルセクターでの経済関係を分析できないのだが、しかし、これらの「非資本主義セクター」が資本主義世界システムが維持され、拡大するためには必要不可欠な部分である以上、分析の外に置くことはできないのだ、ということです。彼女たちは基本的な発想を、イマニュエル・ウォーラースティンの世界システム論、また、もっとさかのぼって「資本主義システムが再生産されるには、資本主義でない部分が必要である」ことを主張してマルクスの再生産表式を批判したローザ・ルクセンブルクから引継いでいます。そして、彼女たちが新しく提起する概念が、「主婦化」と「継続的本源的蓄積」というものです。これらの概念については、文中にも、また訳者の古田さんによる「解題」にも解説がありますので、そちらにゆずりますが、きわめて斬新で、かつ説得力をもつ議論であると評価できるでしょう。
 これもまた、フェミニズムによる理論と実証分析の最先端の一つです。

投稿者 june : 01:38