活動紹介

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ふくしま女性フォーラム
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福島大学 行政政策学類
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■ベトナムのくらしとまちづくり


 第5回学習会は、新春を迎えた1月11日福島市民会館で開催されました。  講義に先立ち、辻代表代行から、「女性運動を行う団体が女性問題だけを扱っているのでは視野が広がらないという考え方から、今回は世界の女性の生活などにも目を向け、新しい知識を吸収して自分たちの生活を比較検討して考える機会にしたい」と挨拶がありました。  講師は、福島市で(株)都市環境計画を経営されている上野富男氏。「福島やさしいまちづくり懇談会委員」「福島商業近代化事業推進協議会アドバイザー」など各種委員会委員や事業アドバイザーなどもしておられます。

学習会レポート

ベトナムとの関わり

 1960年代ベトナム戦争の激しい時代に茶の間のテレビを介して、情報を得ていた。1975年、最強国アメリカが貧国のベトナムに軍事的・政治的に負けたことに関心を持っていた。
 1989年に“ベトナムに医療器械を贈ろう”という市民ボランティアの話があり、その後のベトナムを知りたくて活動に参加した。
 この時、日本の医療制度上2〜3年使用した人工透析器はまだ使える状態であっても廃棄しなければならず、ゴミになってしまうことを知り、市民から 1200万円ほどの募金を集め、福島、郡山の医師の協力を得てベトナムへ中古の人工透析器を贈ることにした。しかし、ベトナムでは水、電気の安定供給に問題があり、まずはそれらを作ることから始めなければならなかった。あわせて、医療技師もいないことから、福島県医大の白岩教授の協力をいただき、ベトナム人6人を教育した。現在はその6人が中核となり、国内に透析のネットワークもでき、運動も軌道に乗っている。
 1991年、ベトナム政府から市民ボランティアの活動が認められ、厚生大臣から「透析センターがうまく稼動しているので見に来てください」と招かれ、白岩教授を団長にして訪問した。

ベトナムの歴史的成り立ち

紀元前〜10世紀
 儒教の影響の強い中国支配。

10世紀〜19世紀
 呉から阮の王朝時代。

19世紀〜1945年
 フランスの植民地となり、漢字使用からアルファベット使用になる。

1945〜1954年
 フランスからの独立をかけ、第一次インドシナ戦争。

1963〜1975年
 1954年フランスから独立。社会主義国家となることにアメリカが介入し、南北に分断されて第二次インドシナ戦争。

1976年〜
 南北統一後、カンボジア侵攻など。

1986年〜
 ドイモイ(新しく変える)政策採用。


地理・風土的成り立ち

面積:九州を除く日本の面積とほぼ同じ。
地勢:南北1600km、東西は最短で65kmの細長い国。
河川:中国とチベットに源流を発する2本の大河。
平野:メコンデルタはアジア最大の穀倉地帯。米は北側二期作、南側三期作。
気候:北部はわずかに四季のある亜熱帯気候。南部は雨季(5〜10月)と乾季(11月〜4月)。


社会経済的成り立ち

政治体制:共産党一党独裁による社会主義共和国。
人口:約7200万人(1995年)。そのうち約27%が都市部に集中。
民族:キン族/約90%、その他53民族。
宗教:仏教徒/約80%、キリスト教徒20%。
主な産業:GNP比で農業が45%、工業が32%。
GNP:年間一人当たり約270US$=約30万円。平均月収約5000円。
3つの格差:(1)南(裕福)と北、(2)貧と富、(3)都市と農村
3つの課題:(1)法体系の未整備、(2)人材不足、(3)経済的自立観念の欠如。


女性の立場

 ドイモイから5年後に訪問したが、儒教の影響が強い国で男尊女卑。表向き男性は格好よいが、経済的担い手はすべて女性。政治的担い手は建前社会のため男性。最近では中央共産党政治局員は16人中4人が女性である。これらの女性たちは戦争経験者で、戦時下では英雄であったが、国を動かす経済行政の管理能力に欠けている。
 ベトナムが貧しさを分かち合う社会主義をやめてリッチになれるものからリッチになる制度に切り替えようとしたときに、経済についてリードできるものがほとんどいなかった。若年層でボートピープルとしてアメリカ、日本などの諸外国へ渡った人たちの中から、やがてテクノクラートといわれる、西欧社会の近代経済学や行政の感覚などを身につけた優秀な人たちが戻るようになる。いま、その人たちが実質ベトナムの中枢にいる。知人のベトナム女性2人も上層部でアクティブに活躍しているが、ベトナム社会はある意味では母系社会かなと感じている。


 この後、スライドにより街の様子の説明があり、質疑応答に入った。

Q(参加者):子どもの教育は?
A(上野氏):義務教育は9年で工費負担。就学率は都市部100%、農村部では子どもが労働力となっているため、70%ぐらい。最近はもっとよくなっていると思う。教育に熱心な国で、男女とも高学歴社会である。キャリア女性の多くは語学に堪能で、公務員、実業界でも活躍している。

Q:地雷処理について
A:1991年の訪問時には地雷事故の話はなく、処理は終わったと聞いている。アメリカ軍が落した不発弾に農作業の人が触れて爆発した事故の話を聞いた。

Q:北が南を征服した形で南北統一したが、経済的には南が裕福で格差があり、感情の行き違いはどうか。
A:感情の軋轢はある。北は社会主義で建前が原則。南は資本主義の歴史があり、統一後も南はヤミ経済の二重構造で1対2の力関係にある。国策で格差是正実施中であるが、同一になるには10年くらいかかるだろう。

Q:都市と農村の女性の格差は大きいか。
A:都市と農村では中身が違うので、一概に説明しにくいが、都市は現在の日本の都市型、農村は昭和30年代の日本と同じで日の出から日没まで働いている。子育てはもちろん、農村物の販売など女性は経済の担い手である。

Q:ドイモイ政策により、資本の自由化による経済改革が進むと、将来の担い手である若者たちが共産主義をどこまで容認するか、政治にも影響すると思うが。
A:経済的貧富の格差が大になり、7200万人の国民を150万人の共産党が支配しているという現実を党は懸念している。10年くらいの間に政治の多様性を求めて民主化の動きがあると思う。

Q:キャリアウーマンの実情はどうか。
A:キャリア女性は政治家・社長などで、南に多く輩出している。

Q:資本主義導入により儒教の影響は弱まるか。男尊女卑・家父長制などに縛られている女性はそれを変えるためのフェミニズム運動を起こしているか。
A:ベトナム女性は儒教下でも自立意識が高い。夫婦別姓で子どもは男性の姓を名乗る(註:「女性は結婚しても家には入れない」という考えのため)。生活に余裕がないのでフェミニズム運動を起こすことは考えないのではないか。

Q:墓は一族なのか個人なのか。
A:墓は一人に一つである。

Q:化学兵器戦争が母体に与えた影響と工業化による環境問題について。
A:枯葉剤の影響はいまだにある。泌尿器系の病気が多く、毎年500〜600人が死んでいる。環境問題は工業化と裏腹に日本の昭和40年代と同じ。1992〜93年頃に国が環境に関する法律を作っている。

Q:今後のベトナムとの関わり方について
A:医療協力は、日本が政府の立場や企業ビジネスとして関わりつつあるので、ボランティアの分野は縮小されてきている。だが、個人的な友好関係は大切にして交流を続けていきたい。
 ボランティア、ビジネス半々に、「ギブ・アンド・テイク」の精神で、互いに得たものは返す・応えるの関係を持ち、長続きさせたい。
 今のベトナムは、金不足で公共投資ができないが、資源、食料生産、人的能力はあり、数年後経済的に豊かになる。国、企業ベースでカバーしきれないものをNGOとして出来ることをやっていきたい。

 熱意ある講義と活発な意見交換で、時間延長で盛会裡に終了した。

(文責・伊藤 重)

参加者の感想

21世紀はアジアの時代
 21世紀は「アジアの時代、共生の時代」だといわれている。新しい時代の幕開けは東洋文明、東洋的価値観の再評価から始まるのかもしれない。ベトナム人のもつ“しなやかさと柔軟さ”、これこそ正しくアジア的な特徴のひとつなのではないか。反面、ベトナムには真の解放のために、収奪・抑圧を許さない社会の建設のために命をかけて闘った名もない数多くの女が、男がいたことを忘れてははいけないだろう。歴史を学ぶこと、政治を知ること、この二点の大切さを痛感している。
(斎藤光子 会津若松市)

再生期に求められている女性像
 新しい年を迎えて、会員の皆さんの心意気が伝わる、とても質の高い時間でした。近くて遠い国ベトナム、知っているようで何も知らないベトナムを身近に感じました。戦争や、支配されて生きることの悲惨さ、たくさんの過ぎた時間は取り戻せないこと、これから新しい国を作っていく再生期には、女性が十分に必要とされていることなどを学びました。
 講師のお人柄と、栗原代表からのオックスフォード直送のクッキーで、何倍も充実したときを過ごすことができて感謝しています。いま、私に出来ることは「聞くこと」です。
(斎藤礼子 白河市)

ベトナムの学習を通して
 女性問題を考えるとき、その周りの歴史・政治・経済・宗教などの背景を考えなければならないことは当然である。
 現在、ドイモイ政策によって急成長を続けているベトナムの社会情勢について、たくさんの資料を準備し、ていねいに解説してくださった上野富男先生の講演はきわめて有意義であった。ベトナムの女性の現状と課題の学習はこれからであり、どのようなネットワークが出来るのかを考えるのもWFFの今後の課題となるであろう。
(関ウタ 福島市)

儒教の影響
 日常的にアジア諸国についてのフォーラムの機会は少ないので、とてもおもしろかった。特にベトナムは『女たちがつくるアジア』(註:松井やより著、岩波新書)にも特に表記されていないし、私にはラオスとともに未知の国でもあった。今回の学習会で特に驚いたのは、宗教の影響だった。都市や農村の様子は多かれ少なかれ想像できるが、儒教の教えが強く社会に影響していることを再認識させられた。ベトナムは夫婦別姓だと聞いて日本よりはるかに進んでいると思いきや、儒教の教えにより、女は家には入れないだけであった。根本からして日本と違う。日本では、女は家にいるものという考えなのだ。いろいろな国の女性運動は、その国の歴史を踏まえて考えていかなければならないのだと思った。
(根本亮子 白沢村)

 

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