活動紹介

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ふくしま女性フォーラム
〒960-1296
福島県 福島市金谷川1
福島大学 行政政策学類
栗原研究室気付(WFF事務局)

tel 024-548-8278
fax 024-548-8278

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■女性差別撤廃条約ってどんなもの?


講 師:田村 理(たむら・おさむ)
テーマ:女性差別撤廃条約ってどんなもの?
〜条約・憲法の男女平等理念と日常生活
日 時:1996年5月11日(土) 14:00〜16:20
場 所:福島市市民会館301号室
参加者:52名

司 会:渡部八重子
記 録:吉村 伸子・高橋 準

 ふくしま女性フォーラム(WFF)、第1回の学習会のテーマは、「法の下の男女平等を考える」でした。女性差別撤廃条約を題材に、「できるだけわかりやすく」ということで講師の方にもお願いしました。
 WFFの目標となる「両性の平等」を考えるための、第一歩として位置づけられています。

○講師プロフィール

1988年 明治大学法学部卒業
1993年 一橋大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得
1993年 日本学術振興会特別研究員
1995年 福島大学行政社会学部助教授

専門分野 フランス憲法史、憲法
主要論文 「フランス革命と財産権
――フランス革命期における財産権論と自然権思想――」(博士論文)
『一橋論叢』112-1(1994年7月)に要旨。

報告内容(抄録)


I 女性差別撤廃条約ってどんなもの?

1 女性差別撤廃条約概観

1979年第34回国連総会で採択、1985年日本国について発効

 前文  歴史的経緯・理念
 第一部 基本原則     :「女性に対する差別」の定義、
               締約国の義務
 第二部 政治的・市民的権利:参政権、公務就任権、国籍取得の権利
 第三部 経済的・社会的権利:教育・雇用・社会保障をめぐる権利
 第四部 民事的権利    :契約・財産管理・婚姻など
 第五部 実施措置     :女性差別撤廃委員会への報告制度
 第六部 批准・改正・留保等

2 女性差別撤廃条約の特徴

(1)固定観念に基づく性役割分担の否定
 前文、第五条(a)、第十条(c)、など
(2)生物学的性差のみを理由とする男女の区別
 男女の差異は、出産・生殖に関することがらのみ
(3)子の養育は男女及び社会全体の責任
(4)事実上の男女平等の締約国による促進
 憲法と矛盾するかもしれない。権力制限としての憲法と、積極的介入を求める条約。

3 女性差別撤廃条約と日本の対応

(1)条約草案の審議課程
 第十条(b)「同一の教育課程」に対して、「同一または均等の教育課程」という修正案(当時中学・高校の家庭科教育は女子のみであったがそれを考えた修正案)→受け入れられず
 第十一条2で、草案では有給の育児休業が盛り込まれていたが、日本の反対意見で削除。
(2)国内法の整備
 男女雇用機会均等法の制定、国籍法・労働基準法の修正

4 女性差別撤廃条約の限界

(1)「条約」の持つ限界(特に実施措置)
 条約が厳しいがゆえに、実施面ではゆるやかに
 条約遵守の監視も報告制度のみ
(2)憲法・国内法との関係


II 日本国憲法と男女平等

1 憲法第14条と第24条

(1)憲法第14条「法の下の平等」
(2)憲法第24条「家族生活における個人の尊厳・両性の平等」

2 憲法の限界(※時間の都合で報告省略)

3 憲法の持つ人間像・社会像と男女平等

(1)個人の尊重(第13条)
(2)権力への懐疑
(3)男女の平等


III 男女「差別」=「依存」社会の現状

1 毎日新聞1985年5月24日付け投書から

 雇用機会均等法をめぐる読者投稿特集の中の22歳男性の意見:
「男性と女性の分業は数千年来のもので、天と地、火と水のごとく、世界の秩序を形成しているのだから、簡単に崩すべきではない」
 商工中金での昇進差別をめぐる訴訟における会社側答弁:
「彼女が昇進に値しないのは、お茶をいれてくれと頼みにくい雰囲気があるから」

2 総理府編『平成6年版 女性の現状と施策』から

 男女の家事時間の相違、役割観の違い
 「男性の家庭への関わり方」のアンケートの中で、「ある程度積極的にかかわるべきだ」というのは、「ほとんどかかわってない」ということと同じことではないだろうか。

3 栗原るみ論文から
(※「日本社会の男型構造を支える男女役割分担意識」『行政社会論集』8-4、)

 家事分担などは、「個人の自由意志で決めるべき」「人それぞれだと思う」という意見が多数派であるが、これは結局、社会的な力をおおい隠してしまう発想ではないだろうか。


IV まとめにかえて 〜「男女差別のない社会」という理想のために〜

1 「法」というもの

 法というものは、それ自身が守ってくれるものではない。制度として定められてはいるが、法それ自身は何もしてくれない。使うのはわたしたち。

2 内なる「差別」=「依存」と向き合おう!

 差別、あるいは男女の役割分担とは、結局のところ、男女がお互いに依存しあうということにほかならない。  「個人の尊厳」として、「一人で生きていくことができる」ことが必要だし、妻と夫の関係もその上に存立するのではないだろうか。  「男女共同参画社会」というと耳に快い。しかし、必要なのは、「差別」という耳障りの悪い言葉をあえて使って、一つ一つ自分の行動や気持ちをささいなところまで点検していくことではないだろうか?

3 「男女差別のない社会」とは?

 それゆえ、「男女差別のない社会」とは、「女性も男性も依存しないで生きられる社会」である。  そんな社会の中では、たとえば、同じ料理を作っても、夫が作ったものと妻が作ったものでは味が違う。そのささやかな多様性に驚きと喜びを感じながら生きていくことができたら素晴らしいと思う。

○質疑応答と討論 (※省略)

(配布資料およびメモより作成・文責 高橋 準)


(学習会開始直前のひとコマ)

学習会報告・会報「うふふ」版

 若葉薫る5月11日、福島大学助教授田村理先生を講師にお招きして開催した、記念すべき第1回学習会の報告です。
 参加者は、会津、相双地方の会員も含めて52名で、会場となった福島市民会館の会議室は満杯となり、WFF会員をはじめ参加した皆さんの情熱と意気込みが感じられる学習会となりました。
 はじめに、会を代表して辻みどりさん(代表代行)が挨拶し、WFF発足の経緯や学習会への取り組みについての報告と、「私達の抱えている問題の本質を学び、会員の皆さんが問題解決できる知恵と力を身につけること」という学習会の目的についての説明がありました。
 つづいて、田村先生から「私の専門分野は憲法ですので、女性差別撤廃条約そのものを深く研究しているのではありませんが、憲法を学ぶものとして、また一人の市民としても女性差別問題を皆さんと共に考えていきたい」との前置きのあと、レジュメに基づいて以下のようなお話がありました。


1 この条約は1979年国連総会で採択され、日本は1980年に署名し85年に批准したが、いくつかの点で「抵抗」している。その内容については後で説明するが、条約というのは国と国とが約束し、それを守っていく(批准とはそういうことを意味することなので、条約の内容がどんなものなのか、それに対してどんな「抵抗」があったのかということをキチンと理解しないと、条約を守っていく(守らせる)ことはできない。

2 この条約の特徴は、固定観念に基づくいかなる性役割分担も否定しているという点にある。男女は、生物学的性差のみを理由とする区別以外は平等であるべきであるという考えに基づて、政治的・市民的権利(参政権、公務就任権、国籍取得権など)、経済的、社会的権利(教育、雇用、社会保障などをめぐる権 利)、民事的権利(契約、財産管理、婚姻など)、男女平等に保障し、それを実効あるものとするために実施措置(例えば女性差別撤廃委員会)を設けている。

3 日本政府が国連で抵抗した例としては、10条bがある。10条bは「男女同一の教育課程」を保障、bはそのために「同一水準の教職員、施設・設備」を保障するものだが、これだと男子に家庭科を学ばせることが必要となり、そのための設備を保障しなければならなくなる。結果としては、「同一の教育課程」を締結したので、家庭科は男子も学ぶことになった。これは家庭における今までの「役割分担」を改善し、男性も生活者としての能力を高めるきっかけとなることが期待される点で大事なことである。

4 この条約は緩やかな「約束」なので、批准したことを実行するためには、不断の努力が必要である。また、国内の憲法や習慣などと矛盾したり、対立する場合もあると考えられるが、それらを積極的に改善し実現していかなければならない。


 以上のような田村先生のお話を受けて、質問や意見が活発に出されました。その全部を載せられませんので、要約してご紹介します。

(1)アファーマティブアクション(女性雇用の保障)は、日本でも実現出来るのか。
→国内法(憲法など)との関係で、企業が積極的でない現状であり、むずかしい。
(2)男性の生活者としての自立は、どうすれば達成されるのか。
→根気よく、子供のころから訓練し、意識を養う必要がある。

(3)子供の養育が大変な問題であるが、男女のありかたはどうあるべきか。
→これからは、男性も育児休暇なども取り、共同で養育することが求められる。

(4)女性差別撤廃条約は、男性にも積極的に広めて行く必要がある。

(5)日本の男性が、他国の女性差別(例えば東南アジアへの買春ツアー)を行っている現状がある。私たち女性はこうした現状を告発し、改善する義務がある。

(6)女性は、結婚する以前は比較的自由で対等であるが、結婚すると様々な慣習(家制度など)によって、差別や苦しみを味わう。これに負けないで私たちの力を合わせて粘り強く改善していきたい。

(7)女性差別だけでなく、全ての差別を許さないという立場から、この問題も取り組む必要がある。

(8)福島でも、全ての公立高校の男女共学を実現させたい。


 こうした活発な議論の後、最後に田村先生から、

(1)憲法は道具でしかなく、それを生かすのは私たちである。
(2)何事においても、差別と感じたら諦めないで告発していく勇気と持続性が必要である。
(3)男女がもたれあうのではなく、お互いに自立していくことが大切である。
(4)この撤廃条約は、みんなが自立できるという理念に基づいて作られているが、人は「弱者」になりたがる傾向がある。また、現実には自己の努力だけでは自立できないハンディをもった人もいる。

 これらのことも全て含めて、この条約の理念を実現することが大事なことであるとまとめをいただきました。

(文責・吉村伸子)

参加者の声

第1回学習会に思う
「全ての国民は個人として尊重される」今回の学習の中で一番心に染みた言葉である。ジェンダーについて学べばいつも社会的差別になり、それは内なる差別への自覚か。WFFの学習イメージを「めだかの学校」スタイルにするのは、勉強は楽しくなければ意味がないと思っているので良いことだ。福島市は遠いが、直行バスが運行されて便利になったのでいわきからも大勢参加を望む。(鵜沼ミチ子 いわき市)

もっと男性が多くなりますように
 我らがLEEちゃんこと田村センセのお話しは、法律は何もしてくれない方がありがたいという話だったように思う。だから、私たち一人ひとりが「内なる差別心」に気づいて、それを無くすように努力していかなければならないのだ。それって結構つらい。そんなことしないで回りに流されている方が楽なんだよね。特に男性の場合はそう。何が「男女不平等」を作り出しているかについての自覚もあまりない。WFFが男女一緒に気楽に考える場になってほしいものです。(佐藤達哉 福島市)

第1回学習会をきいて
 1984年当時の田村理は、松田聖子が好きな普通の男の子でした。第1回の講師として皆さんの前に現れた田村理の姿は、彼自身が悩み、傷つき、苦しんだ末に獲得したものです。「若いから」とか「大学の先生だから」ということで、彼の実践は皆さんから敬遠されてしまうのではないかと心配していました。 けれども、私の隣にいたある女性が指を震わせながらも、彼に対する共感の言葉を語っているのを見て、本当によかったと思いました。問題を回避せず、これと正面から取り組むことによって、大きな自信と喜びが生まれることでしょう。私、佐藤真紀も(田村理の妻です)この楽しい格闘を日々続けていきたいと思っております。(佐藤真紀 福島市)

法はあなたを守ってくれない
 講師先生曰く「法自体はあなたを守ってはくれません」その言葉はかなりのインパクトがあった。少なからず聴衆は驚いたようだ。法の下に男女平等とは言え「差別撤廃条約」を読み進むと女性への差別が一層明らかになる。区別は差別につながる。男女雇用均等法はザル法といわれる。法は厳しいが、罰則は甘い。法自体は守ってくれないが、法を学び法を知って、法を味方にすることはできる。何が差別かの意識を持ち、自らがその意識変革のオンブズマンとして行動する。第1回目の学習会は男女平等社会への一登山口を示してくれた。(根本華枝 郡山市)

第1回学習会に参加して
 女性差別撤廃条約を読んだことはありましたが、その意味を分析してみたことはなかったので、今後いろいろ考えていく上で参考になりました。「平等」に扱うというのは、よく考えると結構むずかしい中身をふくんでいるものだと思います。そして「大根の値段を知っているぐらいのことは自慢にならない」とおっしゃる先生の言葉は、「台所の視点で」という女性政治家の方々の主張の中身は何なのだろうと日頃思っておりましたので、妙に納得するものがありました。(村瀬久子 福島市)

 

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