活動紹介

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ふくしま女性フォーラム
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福島県 福島市金谷川1
福島大学 行政政策学類
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■ふくしま女性フォーラム・第2回総会記念講演会


 ふくしま女性フォーラム、1997年度定期総会の記念事業として、フリージャーナリスト・松井やよりさんによる講演会を企画いたしました。
 松井さんの長年にわたるアジアの女性たちへの関心にもとづいて、福島という日本の一地域で生活するものとしてのわたしたちとアジアの女性たちとのつながりを語っていただくことになっています。

 松井やよりさんのプロフィール:
 1961年、朝日新聞社入社。社会部記者として、福祉、公害、消費者問題、女 性問題などを取材。シンガポール支局特派員を経て、社会部編集委員。アジア と日本との関係、人権、環境、開発、南北問題などを女性の目で取材。
 退職後、アジア女性資料センター代表。
 『魂にふれるアジア』(朝日文庫)、『女たちのアジア』『女たちがつくる アジア』(共に岩波新書)など著書多数。

講演会情報

【題 名】 ふくしま女性フォーラム・1997年度定期総会記念講演会
      松井やより「アジアの経済発展と女性の人権 〜私たちとのつながりの中で〜」
【日 時】 1997年5月10日(土) 13:30〜16:00
【場 所】 ユニックスビル9F大会議室(JR福島駅東口ルミネ向かい)
【交 通】 JR福島駅東口下車徒歩1分
【参加費】 500円
【主 催】 ふくしま女性フォーラム(WFF)
【連絡先】 電子メール jce00345@nifty.ne.jp
【キーワード】 アジア 開発 援助 人権
【地 域】 福島

記念講演(要旨)

・アジアとわたし

 なぜアジアに関心を持ったのかとよく訊かれる。
 70年代、急速な経済発展の中で、最大の問題は公害問題。女性や次の世代を担う子どもたちが被害者で、女性が積極的に反対運動を展開していた。一方、企業側は公害工場をアジアに移して「公害輸出」をした。
 この時、公害問題は国境の内側だけで見てはいけない、国境を超える視点が必要だと強く考え、アジアに行き始めたことがきっかけとなった。
 もう一つは、キーセン観光反対の記事が目にとまったこと。日本人男性は韓国へセックスツアーをしに来ないでほしいという記事で、それがアジアとの関係を考え直そうと思ったきっかけ。
 この問題では、「『売春』という言葉はおかしい。『買春』ではないか。」とみんなで考え、「買春」という言葉も作った。

・アジア報道とNGO

 メディアは基本的に欧米中心。米国大統領選挙では大量の記事が出るが、アジア報道はどれだけあるのか?
 1981年、カンボジアで取材した。大量虐殺の後で、骨の山と孤児ばかりだった。
 ある女性がわたしの手をとり、「日本の人たちにわたしたちの体験を伝えて下さい。」と涙を流して訴えた。現地ではヨーロッパのNGO(非政府組織)が積極的に活動していたが、日本からは誰も援助活動にいっておらず、現地のことはほとんど知られていなかった。
 その悲惨な状況を伝えようとシンガポールに帰ってから記事を書いたが、ボツ。それがアジアの報道の実態だった。最近では、アジア経済の発展によってビジネスチャンスも増えてきているが、アジア報道はまだまだ少ない。みなさんもぜひメディアに対して、もっとアジア報道をするように働きかけてほしい。

 1995年、アジアで初めて開かれた北京女性会議では、現地特派員の男性記者たちは一人も取材に来なかった。しかし、そこでは世界史的な会議が開かれていた。

・アジア初の世界女性会議

 北京女性会議では、世界史的な「行動綱領」が採択され、女性が力をつけて状況を変えていこうということになった。
 内容は、貧困・教育・健康・暴力・武力紛争などの問題に各国政府がどう対応するべきかというもの。
 世界の10億人以上が食べ物もない状態に置かれていて、その7割を女性が占めている。「生きる」という最低条件すら保障されていない女性も多い。行動綱領では、女性に対する暴力や武力紛争、女子差別など、女性の人権があげられている。
 まず、一番には家庭の中の暴力。世界中では、毎日何万人もの女性が傷を受け、命を落としている。夫の暴力、女の子に対する性的辱め、夫婦間レイプ、叙事殺し、人身売買やセクシュアル・ハラスメント、女性の性的自己決定権の剥奪など、女性の人権に深く関わる問題になっている。

・最大の人身売買受入国・日本

 日本は、何万人という外国人女性を周辺国から連れてきて、セックス産業で働かせている人身売買受入国である。
 タイの女性は売春によって借金を返せという、「性奴隷制度」でつれてこられる。
 ノイさんは、転売された後、エイズ感染が判明。帰国後日本人ジャーナリストに取材され、顔も全て放映されるというひどい仕打ちを受けた。またある女性は、日本に売られてエイズに感染。背骨を痛めて病院へ行ったが、治療を拒否された。
 暴力から逃れようと、ボスを殺して逃げたタイ女性は、通訳もないままの裁判で、強盗殺人罪で8年の判決を受けた。
 女子高校生の援助交際問題でもそうなのだが、女性ばかりをとりあげるのではなく、男性の買春意識と行動調査をする必要がある。
 政府はアジア全域で人身売買対策をすることが必要。売買春組織を解体し、加害者をどう処罰するか、被害女性をどうサポートするかが今後の課題になるだろう。
 日比混血児(ジャパニーズ・フィリピーノ)の問題もある。
 子どもたちは父親に会うのが最大の希望なのに、日本人の父親はあるときぷっつりと消息を絶ってしまう。子どもには名前や国籍を持ち、教育を受けたり親に会う権利がある。日本人の親全てを責める気はないが、子どもの権利回復のために協力するのは当然のことである。
 エイズ問題を背景に深刻化しているのは、少年少女の強制売春。子どもポルノなどの問題もある。特に、子どもポルノ雑誌はコンビニやスーパーでも売っている。子どもの頃から女性に対する偏見をなくすためにも、早急に対処すべきではないか。

・国家による暴力

 日本では、二つの問題がある。
 一つは、沖縄の基地売春。占領下の沖縄では、米軍人が沖縄女性を手当たり次第レイプした事実がある。基地で働く女性が次々に殺された。沖縄の女性だけに犠牲を強いてきた本土の私たちの責任も考えなければならない。安全保障条約は国家のためだけではなく、民衆のためにと考えていくべきだろう。
 もう一つは、紛争下の組織的強姦性奴隷制度。日本政府は、性奴隷制度は解決済みという立場で民間基金を推進しているが、女性が求めているのは国家による保障。学校教科書に書くというのも保障の一つだった。
 それに対して、「自由主義史観」をかかげる人たちが、「強制連行はなかった。金を儲けたいから慰安婦になった。日本から金を取ろうとしている。」などと言っている。
 しかし、中国の元慰安婦が東京地方裁判所の法廷で証言した内容は、どこを殴られ、縛られたかとか、最初に強姦された様子など、当事者でなければ話せない内容ばかり。最初に強姦された場所では、相手の兵隊の靴の形も覚えているほど。その勇気ある証言は、誰にも否定できない。

 日本人としては、この歴史を徹底的に暴くことが、本当の信頼と尊敬を獲得できる手段ではないか。時刻の軍隊の戦争犯罪を追及しているドイツ人、アメリカ人の女性がいるが、もし、原爆やベトナム人女性の強姦について調べているアメリカ人がいたら、人間として尊敬する。
 右翼の言うナショナリズムではなく、国境を超えたグローバリズムが必要だ。生産より再生産を大切にする、そのような価値観の社会が作れればとも思う。

・結び 〜痛みを力に

 20年以上アジアに関わっているが、日本を一歩出れば、力強いアジアの女性に励まされる。どんなに厳しい状況にあっても、懸命にがんばる女性たちからは、「痛みを力に」することを教えられる。
 そのたびに、日本を知り、日本人のあり方、日本人の生き方の基本について、深く考えさせられる。

(文責・藍原寛子、一部編集・高橋準)

参加者の感想

講演を聴いて
 近くて遠い国々アジア諸国について、あまりにも知らなすぎました。男性と女性の情報ギャップもあります。
 松井先生には、報道されない現実について、大いに伝えていただきたい。エイズを恐れるための「子ども買春」や、自分たちさえよければいいという「公害輸出」などのさまざまな問題も、過去の事実をキチンと見つめ直すと共に考えなければならないと思います。「女性の人権」はとりもなおさず「全ての人の人権」であるということを、あらためて認識させられました。
(川崎葉子 双葉町)

方向性を見いだせた講演
 お話を聞いていて、何度も涙がこぼれました。『女たちがつくるアジア』を読んだ時にも泣いてしまい、落ち込んでしまったのですが。
 今後に向けた方向性が出ていたし、私自身女性問題で活動して行くのに整地できないでいた理論的な壁への答えももらったなあと感じています。いずれにしてもこれからです。いまできることをきっちりとしながら、力をつけていくしかありません。
(斎藤光子 会津若松市)

懇親会は夢がいっぱい
 講演会の熱気を引き連れて懇親会会場へ移動。テーブル毎に@1分の自己PR。それぞれの地域や団体、職場などでご活躍の方ばかり。パワフルな本音が伝わってくる素晴らしいコミュニケーションの場であったと思いました。
(斎藤礼子 白河市)

タイムリーな講演テーマ
 中国の慰安婦の問題に関してどうなのかと思っていたところ、郡山〜福島間の車中で読んでいた月刊誌にちょうどそのことが載っていました。私の関心事が講演のテーマであり、またとても理解しやすい講演で、細部にわたって勉強できました。質問もできましたことをありがたく思いました。
(高野功子 郡山市)

“情報のギャップ”逆もまた
 マスコミに関わる人間として講演を聴いて印象に残ったのは、「情報のギャップ」という話です。
 男性にとっては当然だったアジアの買春ツアーも女性は知らなかったと松井さんはおっしゃっていました。私は、そのような情報のギャップはあ、逆の意味でもあると感じることがあります。つまり、フェミニズムとはどういう考え方のことをいうのか、勉強したり、聞いたりしたことのない人は、全く知らなかったり、「男性排除のことをいう」と誤解している人が多いということです。今の状況をよくしていくためには、もっと多くの人がフェミニズムの視点についての情報を得ることが重要なのではないかと思いました。
(住吉美紀 福島市)

女性の視点で是正を
 従軍慰安婦の問題や現在の日本のセックス産業の反乱、青少年の性の乱れについては特に関心を寄せていましたので、松井氏の公平で心優しい視点でこれらの問題を考え、行動しておられる姿に感動し、私の考えはまちがっていなかったと、意を強くしました。
 松井氏のように、女性だからこそ気づくこと、言えることが他にもたくさんあるはずです。社会のゆがみをただし、アジアの、そして世界の平和を守るには、男性中心の考え方やしくみを変えることだ、という思いを一層強くしました。
(佐藤順子 会津坂下町)

美しく生きること
 あたりまえのようだが、「人の痛みを共有できる人は美しい」と松井さんのお話を聞いて再認識した。講演に引き続いての懇親会においても、松井さんのお人柄に暖かく包まれ、一人ひとりが自分を語り心が癒されるひとときだった。全員のスピーチのあと、松井さんが、牧師さんであるご両親について触れ、貧しくても心豊かに育てられたことを語られたが、アジアの女性たちとの交流の原点を見た思いだった。
(二瓶由美子 福島市)

第5回世界女性会議への一里塚
 「女性と話し合うことのできない男性が妻に暴力をふるう」「男性よ、鎧を脱ごう、人の話を聞こう」。松井先生の単刀直入な言葉を、多くの男性に聞かせたかった。“売春”が“買春”という交換表現には、故市川房枝先生も、天国できっと苦笑しながら納得なさっておられると思った。北京行動綱領の人権という切り口からは、実に貴重な情報を得ることが出来た。第5回世界女性会議への一里塚と感じたほどの強烈な刺激を受けた講演会であった。
(畑洋子 会津若松市)

次回はアジアの女性の活動を
 女性問題についての話を聞くのは初めてのことでした。今まで女性がどれだけ男性社会の中で人権を無視されてきたかを知ることができました。ただ、演題から想像した「アジアの女性が、女性ならではの視点・感性・立場から、先進国及び先進国に洗脳された(?)国家の開発プロジェクトの中でどんな活動をしてきたか」という話が少なかったのが残念でした。次回はこのあたりの話をじっくり聞きたいものです。
(幕田順子 福島市)

女性の人権について
 女性の差別はどこの国にもあるのだとつくづく感じ、悲しく思います。日本でも、女子学生の就職採用条件状況など、一目瞭然です。一人ひとりが差別に対して長い間の風習、惰性、硬直性を打破していかない限り、真の意味での男女平等はあり得ないと考えています。
(松本邦子 福島市)

「答えはありません」
 質疑応答の中で、松井さんが答えた言葉です。『女たちのアジア』『女たちがつくるアジア』の2冊の著書を読んだだけの私ですが、講演の中で話されたテーマの一つひとつを考えると、本当に“じゃあどうするの”と思ってしまいます。何世代もの間に構築された仕組みを解きほぐすには、きっと何世代もかかるのでしょう。アニメの世界のように、瞬間的に他者を理解できるようなニュータイプの人間が生まれてこないと、社会の差別や暴力はなくならないのでしょう。
 問題意識を持って、せいぜい声を出していきましょう。
(箭内和子 郡山市)

謎解きの旅の出発点には“痛み”
 松井やよりはアジアの女性たちのために語り続けてきたジャーナリストだ。エンパワーメント、オールタナティブ、持続可能な開発などの概念に接し、自らをエンパワーしたのは彼女の著書や講演においてである。
 今回の講演では、普段考えていることの再認識ができた。「このように感じ、思い、行動するのはなぜか」と、これまで謎解きの旅を続けてきたのだが、旅の出発点には痛みがある。私も「痛みを力に」できたらいいと思っている。
(山口晢子 福島市)


実行委員長から
 「第2回定期総会並びに松井やより講演会」の実行委員長を引き受けた。
 4月2日、体調はイマイチだったが、辻さん(代表代行)たちと総勢6人で上京。松井やより先生にお会いした。先生は大変お疲れのようだったが、「アジアの女性」についておなかのそこから絞り出すような熱意で語ってくださった。私は、その感動ですっかり元気を取り戻して帰福した。
 私は、先生の活力の源泉が知りたかったのだが、懇親会の席上、「私の親は、一人の人間として牧師だった。」と言われたのを聞いて理解ができた。宗教に裏付けられた人間愛、平等、見識などが育った家庭にあり、選んだ職業の中で増幅されたのだと。
 実行委員長の職責は全うできず、木から落っこった心境であるが、これからも地上で歩き回りたいと思っている。みなさんご協力ありがとうございました。
(企画部・渡部八重子)

 

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