活動紹介

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■地域とジェンダー

職場のジェンダー・プロジェクト
女性の経済的自立を促進するような社会構造に変える制度改革をどうすすめるべきかは、とても重要だけれど難しい課題です。職場のジェンダー・プロジェクトは、このことに、地域からどう取組んだらいいか、考えてきました。出発点は昨年度に実施した『地域とジェンダー』アンケート結果をどう読むかというところからです。以下調査のまとめを紹介しておきます。

1 前提  出発点としての『地域とジェンダー』調査結果
 この調査の独自性
男女共同参画社会基本法を知っているかどうかを聞いた他県の調査とくらべてみよう。

1998年立法化に先立って総理府が実施した有識者へのアンケートでは70.7%が知っていたと答えており、その水準とくらべたら少ないとは言える。しかし福島県の調査は新潟県、福岡県より少し遅い時期だとはいえ、男女共同参画社会基本法を知っていた率は特に女性の場合多かったといえる。無作為で選んだ人の場合でも回答を寄せてくれる人は意識がやや高いと言えるかもしれないが、この調査は学習促進事業として実施した意義を体現して、それにもまして、意識のある人々の見方を反映していると言えよう。

 意識と現実とのずれ
ただ問題は、そのような意識の高さにもかかわらず、ジェンダー差別的な構造は根強いという実態が浮き彫りになっていることであろう。
例えば次の表を見よう。
家制度を復活した方がいいと考えている少数の人たちや、男女の性別役割分担がある夫婦が望ましいと考えている人たちの場合ではない。ジェンダーフリーモデルをあるべきだと考えている場合でも、食事のしたくは男性で94%、女性で98%が実際に担当しているのは女性であると答えていた。洗濯についても担当しているのは女性、乳幼児の世話も女性であった。
頭ではジェンダーフリーな夫婦像を望ましいと考えるところに到達したとしても、現実の生活形態や生活感覚をそれに追い付かせることは、まだ至難の技であることが示されているのである。








 家事分担の実態のみならず、ジェンダーフリーモデルがあるべきとは思うけれど、他方で「のし袋の表書きは男性でよい」と考える女性が22.9%もいるし、保護者=夫は当然と考える女性が18.7%もいるのである。

勉強して「男女の固定的役割分担はいけない」と頭では理解したけれど、実生活ではなかなかそう動いてはいない女性が自分の生活スタイルをどのように変えていけるのかが課題であることを、改めて強調しておきた。

B 若い層/子育て真っ最中の人々の意識の問題
これは他府県の調査でも同様の傾向が見られたのだが、若い層に「男女共同参画社会基本法」が知られていないという事実がある。
子育て真っ最中の30代で男女とも3割程度の認知であった。子育てに実際に携わっている層が、こうした新しい社会のあり方を認識していないことは大きな問題だと言えよう。男女共同参画基本法の精神にてらすとき、子どもを育てることがジェンダーバイアスを脱却することに繋がるような情報と機会の提供は、子どもの教育という点から見て、特に重要なことであろう。子どもができても仕事をやめないですむようなさまざまなシステムづくりが基本的に大事であるが、また子育てのサークルや公園での母親のネットワークに対して、「ジェンダーフリーな社会」という価値観がどのようにかかわり合いをもてるのかの追求も、重要な課題であろう。更に学校教育におけるジェンダー差別をなくす教育が、30代の女性の比較的参加が多いPTAを主体として、広義の学校のとりくみとして実施されていくことが求められているといえよう。働いている父母が学校に積極的にかかわれるようにし、なおかつ教員自身も男女にかかわりなく自分の子育てに関わることのできる働き方を模索するには、教員がもっと必要なのではないだろうか?


C 現在の局面はジェンダーフリーに向かっているのか 
アンケートでは全体の65.5%、女性の70.0%が「男も女もそれぞれ仕事を持ち、家事も分担する、ひとりひとりが自立したうえで共同生活をする夫婦」が望ましいと回答していた。また女性の人権を守るために必要なこととして、79.6%が「女性が生涯働ける環境の整備」をあげていた。しかし、現実には男女の賃金格差が依然として大きいという現実が指摘できる。

産業分類別、男女別全労働者の1人平均月間現金給与額(常用労働者5人以上の事業所)



1998年のデータで常用労働者5人以上の事業所の数字をみると、1人平均月間給与額(ボーナス等を加えて1ヶ月平均にならしたもの)は女性は男性の57.1%にすぎない。ただし、1994年には54.9%だったのが、95年56.0%、96年58.1%、97年56.0%と上下しつつも比率は上がったので、男女の賃金格差は傾向的に縮小しつつあると言えるのかもしれない。
見られるように、サービス業では格差は随分縮小しているようであるし、特に社会保険/社会福祉の事業所では男女の格差は92.9%にまで解消している。
 



しかしながら、社会福祉関係の事業所に見られるような男女格差の解消は、むしろ例外的であると指摘せざるを得ないのが現実であろう。
非サービス部門では格差は拡大している。男性14万2千人、女性10万4千人の雇用者を要する製造業で、全体として男女格差の拡大が進んでいたのである。


特に製造業のなかではリストラクチャリングに苦しむ化学工業、製造業ではないがやはりリストラ、グローバルな経営への転換が叫ばれる金融/保険業などで格差拡大が顕著にしていることがわかる。



こうした現実の意味するところは、深刻であろう。
昨年4月に労働基準法、雇用均等法が改正された。改正労基法では「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはなりません」と定めている。また改正雇用均等法では労働省は「調停」の開始要件を緩和した。調停申請に会社の同意を不必要としたのである。だが自分の置かれている問題を男女差別と把握して政府に介入してもらおうとするのは、そう簡単なことではない。機会均等調停が利用しやすい救済制度として女性労働者に広く知られているかというと昨年の調停開始は全国で3会社27件にとどまった。福島県ではゼロであった。制度を利用するには知恵も労力も必要なのが現実である。
出前講座とともに実施した分科会の議論の過程では、不況により厳しさの増すパート現場の実情など、多くの困難な課題が提起された。
仕事をもっている人々の意識の変化にもかかわらず、現実の雇用環境の悪化に基因する多忙化傾向の進行が、必ずしもそうした人々が社会的に発言できる機会を広げ難くしている実情がある。実際に共働きで子育て中といった人々が分科会に出てきて問題を語るという例は、多くはなかったのであった。
地元の大学の教員やマスコミ関係者を見ても、意識としてはもっと地域と連携をもちたいと考えている人が増加していることは事実である。しかし仕事は一層忙しくなっており、現職にある人がボランティア活動しやすい環境が整備されてきているとは言いにくい現実もある。
 一方で男女共同参画、雇用均等法により男女の平等が推進されているのに、競争が激化し、そこがもともと男性中心に動いている場合、男女格差を拡大しているということを示している。男女平等という場合、内助の功で身の回りや子育てを引き受ける人がいる人といない人と対等に競争することの困難に目を向けなければ、決してジェンダーフリーへは近づかないだろう。

D 農業について
食糧/農業基本法が制定され、そこでは農業生産において女性が重要な役割を果たしていることへの評価が確認され、農業の経営者としての女性の地位の向上等をはかる必要が強調されている。農村女性を個として認めその能力を十分発揮できる条件整備が必要だということで、男性中心となっている制度と農村の古い因習、慣行の改善が課題と銘記されることにもなっている。
そのなかで、今回のアンケート調査結果では男性が女性に期待を寄せていることが明らかになった。女性が自分の責任作目を明確に意識して、その代金を自分の口座で管理するという動きは今後拡大して、女性農業経営者の経済的自立意識を高めることと思われる。また、「家」と「個」との関係については今後の論議が必要であろうが、現実の養子縁組みにおける男女差別の実情に目が向けられたことは、新しい展開を孕んでいるかも知れない。
 
E 主婦をどう考えるか
今回の事業を通じて、いままでジェンダーについて考えたり学んだりしたことのなかった主婦が、いろいろ考える契機となったと表明してくれたことや、公務員等をリタイアして余裕時間のできた層が活動の積極的な推進力になってくれた点は、特筆できよう。
最新の「福島県統計年鑑」によれば、1997年データで、女性の46.6%が「仕事が主」で働いており、「仕事と家事」で働いている16.7%を加えると63.3%が仕事についている。



主婦の現在の日本社会で果たす意味についてコメントすると、なかなか舌足らずにおわって、主婦バッシングなどと論評されてしまう。現在の不況のなかで経済的自立が望ましいと考えても、ひとたび職を離れた場合、再就職が困難なのが現実だからである。しかしながら、夫によかれと考える内助の功が、競争社会の労働力の質/水準を仕事に特化しなくては担えないものにしているという点に思いを致してほしいと考える。
この点で政治家=議員になって経済的にも自立をはかることは主婦の進路の一つであろう。こうしたチャレンジを、様々な形で支援/推進していきたい。またアンぺイドワークを見直す意味でも、NGOの活動にも適正な対価を払うという気風を確立することも不可欠であろう。
家事専業の女性は少なくなってきているとはいえまだまだ福島県では36.7%も存在している。男性はたった1.6%にすぎない。自分達の存在の問題を伝えるという批判的精神をぜひ持てるようになって、将来の子どもたちをジェンダーフリーの担い手に育てる教育に努力してほしいと考える。

F ふくしま女性フォーラムの目指したいところ
ふくしま女性フォーラムは男女差別構造をなくすことを目的に発会した。世界の女性の男女差別撤廃への動きに励まされて、日本の地域社会を変えたいと願ってさまざまな試みを行ってきた。
しかし、課題としてがんぱってきたエンパワーメントに何か問題はなかったのか、どうしてこんなに疲れちゃったのだろうか、という問題が出現している。
男女差別の構造を変えるなんて、そんな容易でないことは、一応わかってはいた。しかし、雇用均等法も改正され、男女共同参画社会基本法まで制定されるという社会の枠組みの変化は、本当に信じられないような大きなすばらしい変化であった。でも建て前は変わっても、現実のダブルスタンダードが打ち破れない。
競争が激化し、勝ち組とまけ組が出るのが当然という考え方が推奨される場合、家事も子育てもNGOもボランティアも打ち捨てなければ敗残者として切り捨てられるかも知れないという環境が一方で進行しているのだ。
こうした競争の激化に、旧来の男の論理によるものと質の異なる、新しいエンパワーメントされた力によって動く社会の構想を対置しなければならない。本当に男女が性別にとらわれない社会を目指そうと考える人たちに必要とされているのでは、内助の功にかわる励ましあいのネットワークではないだろうか?

2 その後の検討
 2000年の5月15日男女共同参画審議会基本問題部会は「男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的な方向に関する論点整理」で以下の点を指摘した。
1)「現在の社会制度は主として男性を長とする世帯単位の保護主義的側面があるのではないか。従来のように女性は本来扶養家族であるとする見方を改め、公正な競争条件を確保し、男女ともその能力を発揮し、性別によらない評価がなされるようにすべきではないか。それは、また、男性がこれまで過大に背負ってきた責任や負担を軽減することにもなるのではないか。」
2)「個人のライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つ税制、社会保障、配偶者手当等について、個人のライフスタイルの選択に対する中立性の観点から見直す必要があるのではないか。」
また厚生省は7月に「女性と年金検討会」を発足させ、配偶者控除など税制の見直しも視野に入れた検討を始めることとしている。
ただし、配偶者控除に関する衆議院選挙に際して実施したアンケートに答えた各政党の政策でも、保守党の「内助の功を社会的に評価するのは当然」という反応は論外だが、格差が拡大している現状のもとで、それが低所得層の生活破壊につながるおそれを危惧する意見が多く見られた。
 もっと福島の実情に肉迫して、問題を掴む必要がある。具体的な職場、仕事の場における問題点を知る必要がある。こうしたことから企業と職場の実態調査を実施しようという方向性がでた。
ただ、ふくしま女性フォーラムは資金がないので、アンケート調査費用を確保するために、今期は時間を費やすこととなった。

 

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