ふくしま女性フォーラム・タウンウォッチング分科会

パブリックアートに関する勉強会


 公共空間にある彫刻等について、どのような視点でとらえたらよいかを考えるために、文献による勉強会を持ちました。とりあげたのは、竹田直樹『パブリック・アート入門――自治体の彫刻設置を考える』(公人の友社、地方自治ジャーナルブックレットNo.7、1993年)です。

 本書は、「第1章 美術作品としての彫刻の特性」「第2章 設置事業の目的」「第3章 作品内容決定の方法」の3章構成となっています。

 内容の概要を紹介しましょう。まず、第1章では、日本の江戸時代からの公的空間における彫刻等の変遷を見て、その性格は時代の「社会的意志」を色濃く反映するものであり、様々な禁止事項や目的意志が強く偏りがちであったこと、現代社会では民主主義・自由主義に背反しない限り、比較的自由に設置され、また美術作品として認知されるようになったけれども、逆に設置目的と内容が無関係になり、その場にそぐわない場合があることなどが指摘されています。

 第2章では、戦後の設置事業の変遷を、終戦〜昭和30年代半ばの「平和」「家族」「自由」などのテーマを持つ人物像の出現期、昭和30年代半ば〜昭和50年頃までの「景観形成」のための美術作品の設置の時期、昭和50年頃〜現代までの「地域個性の表現・文化振興」などの目的の多様化の時期という3期に分け、現代の課題は、景観形成・地域個性・文化振興という3つの多様な目的の間でどのように調整をはかるかということであると指摘しています。

 第3章では、作品内容決定のプロセスの類型を、「一般公募コンペ方式」「指名コンペ方式」「製作者指定製作依頼方式」「既製作品購入方式」「作品公開製作方式」等に分類し、それぞれの事業のフローチャートや代表例を紹介し、第2章で述べられた3つの目的の調整を計るためには、(1)製作者が設置場所を具体的に認識して作品を製作すること、(2)地域の特性を作品内容にテーマや素材として取り入れ、地域の特色を表現しうるものであること、(3)作品内容と周囲の環境が密接に関連しあいながら景観形成に貢献しうるものであること、(4)高い芸術性を確保し文化振興に貢献すること、(5)作品内容決定のプロセスに情報公開と市民参加の機会を豊富に設け、作品内容に対する大衆性を醸成すること、などに留意する必要があるとしています。

 勉強会席上の討論では、福島市の公的空間の彫刻設置状況を考えながら、「芸術作品」と名が付けばどんなものでも良いということにはならないこと、自治体の果たす役割の重要性を前提としながらも、市民参加を強力に推進する必要があること、高額の芸術作品を購入する以上、貴重な税金を効果的に使うためにも、より明確な目的に基づいた選択が必要であることなどが指摘されました。特に、第3章の後半で取り上げられているようなアメリカなど諸外国の作品の選定の仕方、モニュメント事業の事例も参考にしつつ、日本の「彫刻のあるまちづくり」を上で述べたような視点から総合的に検討し直す必要があるという結論に達しました。


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This page written by TAKAHASHI, June (Fukushima Univ., june.takahashi@nifty.ne.jp)